「ごめん、こんな時間に。
どっかで時間潰せた?」

「はい…近くのファミレスで………。
お、お疲れ様でした…」






なんとなく
最近の彼女の感じと違って
かなり控え目な気がした。







「疲れた?なんか大人しくない?」


「え……?いや……あの……その…………」







僕が彼女の隣に座って
彼女の顔を覗き込むと


彼女は一瞬だけ僕を見て
すぐに目を反らした。


どうしたんだろうと疑問に思っていると






「今日……は……
いつものホソクさんじゃない感じがして……
き……緊張しています………」







彼女が手をぎゅっと握って
そう言ったので

僕は拍子抜けしてハハハと笑った。



  




「化粧してるからね。
でも俺はいつもと中身は
何も変わんないよ~?」


おどけた顔をして見せると

彼女は笑ってくれた。











「ところでさ、それ……」






僕が彼女の荷物からはみ出している
僕の写真付のうちわを指差すと

彼女は恥ずかしそうに隠した。






「きょ、今日は……
ホソクさんを応援しに来たので………」





顔を赤くして話す彼女が可愛くて






「や~~~嬉しいわ~~~」

と叫ぶと





 

彼女は慌てて

「しーーー!」

とうるさい僕を注意した。








そして2人でクスクス笑う。










やっとのことで
いつもの雰囲気になった。















「今日は驚きました。
ホソクさんが
目の前にいらっしゃったので……」


「え~?おかしいなぁ~
いつも目の前にいるはずなんだけどなぁ~」






僕がふざけてそう言うと






彼女がしらっと僕を見たから


「あ、違うか」


とさっと引いた。










「言ってよ、近い席なら」

「会場行ってみないと
よく分かんなくて…」

「あそっか……」

「近くてビックリしました!」

「俺も。
モヨンちゃん眼鏡掛けてないし
うちわが俺だったから
驚いてラップ間違えそうになったよ」





ふざけてそう言うと







「人のせいにしないでください」


彼女は軽く睨んでそう言った。








こういうやりとりが楽しくて
僕は笑った。








「ごめんごめん冗談。
モヨンちゃんは何も悪くない」



そう言うと
彼女の口元が笑った。














「ラップ……すごくカッコ良かったです…」


彼女はまっすぐ前を見たままそう言った。








「ありがとう。
君はダントツ可愛かったよ」




そう言うと
彼女は驚いた顔で僕を見た。





「やっぱり君は綺麗だった。
ステージから見ても……」



彼女は顔を赤くした。










「でも俺は
そんなモヨンちゃんの外見だけじゃなくて
中身も素敵だと思ってるんだよ」







僕の言葉に
彼女は動揺しているのが分かった。


なぜなら
彼女の目が泳いでいたから……










「最初はただ単に
本当にドジな子だなと思ってたよ。
2回も俺の前で転ぶんだから…。

でも段々仲良くなっていくうちに
面白い子だなって知って。

そのドジっぽさと
どこかドーンと構えている所
そのギャップが好き。
 

モヨンちゃんと話してるとさ
なんか俺和むんだ。

色々と悩むことも俺だってある。

そんな時
俺はモヨンちゃんに会いたくなるんだ」







彼女は無言で一点を見つめていた。









「モヨンちゃんは過去に酷い目に遭って
沢山傷ついてきたでしょ?
だからこれからは
俺と楽しい思い出を作って
その傷を少しでも
癒していって欲しいと思ってる。



俺が君を笑顔にするから……















俺と付き合って欲しい……」