ライブ最終日。
連日のライブの疲れが出ている中
彼女が来ることで
頭がいっぱいだった僕は
変にテンションが高くなっていた。
「ヒョン元気っすね~~」
いつものように
本番前にメンバーを元気付けていると
お疲れモードのジョングクがだるそうに
そう呟いた。
「や~~今日は~
ジョンゴギに負けられないからさ」
僕の中では意味ある発言だったんだけど
ジョングクが知るわけもなく
「なんですかその勝ち負けの話は。
テンションは僕の負けで~す」
と まためんどくさそうに返していた。
本番が始まる直前には
集中力を高めてJ-HOPEへ切り替えた。
今日の公演も大成功になりますように………。
本番がスタートし
中盤に差し掛かるあたり
曲の中のラップソロを歌いながら
アリーナセンターステージに向かって
延びる道を歩いている時のこと
僕の目は彼女の姿を捉えた。
彼女は僕の歩く道のすぐ近くに居て
眼鏡をしていなかった。
それだけで驚きなのに
もっと驚くものが目に入る。
それは僕のうちわだった。
彼女はジョングクではなく
僕のうちわを持って
僕のことを見ていた。
僕はドキドキ感が高まって
一気にテンションが上がって
彼女の目の前に行った。
そしてしゃがんで
彼女をじっと見つめながらラップをする。
一瞬
僕と彼女だけの世界になったような
そんな感覚だった。
ライブが無事に成功に終わると
すぐに撤収が始まった。
片付けの合間に彼女にLINEを送り
時間と場所を指定した。
メンバーに
何故僕だけが残るのか聞かれて
何れメンバーには
話さなければいけない
と思っていたことだし
嘘つくこともなく
後で絶対話すと約束して
彼らを見送った。
指定した場所は
会場裏の人気の少ない場所。
報道陣やファンは
他のメンバーの乗った車を
追いかけて行ったので
人に見られる心配はなかった。
そこに行くと
既に彼女は来ていた。