「女の子の気分って……
モヨンちゃんは女の子でしょ?」





僕がそう言うと彼女は






「そういうこと
意識しないで生活してきたので」


と答えた。










素顔を隠して生きてきた訳だし
自分の興味とか願望を
かなり封じて生きてきたのだろう。







「これからは
したいようにすればいいよ。
誰もモヨンちゃんを
攻撃したりしないから。
俺も姉も
モヨンちゃんを裏切ったりしないよ?
味方だから」





そう話すと彼女は




「ありがとうございます。
ホソクさんにお話して良かったって
今本当に思ってます。
心が軽くなりました。
お2人はなんて良い人なんでしょう…
今まで出会ったことがないです。
こんな優しい方たちに……」




彼女は拾ったトマトを見つめながら
そう呟いた。


















「カラオケで男たちに襲われたことは
通報したりしたの?」




僕は気になっていたことを聞いてみる。





「してないです。
未遂ですから……。
未遂では何もできませんよ、この世の中」








同意なくして
しかも複数の男が女の子を襲ったりしたら
それは犯罪だ。



犯罪を未然に防ぐだなんて
大口叩いている人もいるけど
世の中こういうことが消えないのは
彼女の言う通り
未遂では何も出来ないからだ。

 

守れるのは周りの人間だけ。

でも彼女には
周りに守ってくれる人間がいなかった。









「モヨンちゃんには
みんながそんな人だって
思って欲しくないし
これからはしたいこと、して欲しい。
笑っていて欲しい。
僕が笑わせるから」




彼女の話を聞いて
僕が思ったことを伝えた。
 










「ホソクさんは面白すぎですよ。
よく動画見て笑わせてもらってます」   


彼女はそう言って
クスクスっと笑った。



 



僕は彼女の
この可愛らしい笑顔を守りたいと
心から思った。



















「ところでモヨンちゃんって
いつからBTS好きなの?」




動画を見ているという
彼女の言葉でふと思った。




「いつからでしょう……
いつの間にかですかね…。
学校に行けなくなった時期に
家でよく動画を見ていて……
それで知って、ハマりました!」


「そっか。
その時って俺だって分かってた?」


「もちろん。
夢叶えたんだって感動して
何か勇気もらいました。

ホソクさんがきっかけで
私、また頑張れたんです」


「俺がきっかけ?」


「はい。
家で勉強をして
先生にも特別対応をしてもらって
高校を卒業しました。
そして大学にも…」

 
「頑張って少しずつ外に出たんだね。
偉いよ。それに君は強い。
あんな辛いことがあったのに
自分でちゃんと立ち上がったんだから」


「これも
ホソクさんのおかげなんですよ?」






彼女は僕へ顔を向けて微笑んだ。







「俺じゃなくてジョンゴギでしょ?」


僕が笑ってそう言うと



「ジョングクさんもですけど
ホソクさんの存在が大きいです!
私が知ってる方ですから」


「またまた~
嘘言っちゃって~」







僕が彼女の肩をちょこっとどつくと

意外にも彼女もどつき返してきて

僕は思わず笑った。







「お~~やるな~」








彼女との時間は

僕の束の間の
気分転換の時間となっていた。