しばらく
そんな懐かしい感じの話をして
そこそこ時間が経っていたので
家に向かって再び歩き出した。
「ねぇモヨンちゃん。
うち寄ってかない?
もう少しお話したいなぁって
思うんだけど…」
姉が彼女を誘っていて
僕も良い提案だと思った。
「いや………私……
何も手土産とか持ってきてないですし…
恐れ多いです……」
彼女は遠慮していたけど
姉は彼女を気に入ったようで
引き下がらなかった。
「少しだけでいいから。
手土産なんて要らないからほらほら」
彼女は姉に流されて
僕らの実家へ連れて行かれた。
「お………お邪魔します………」
彼女は緊張した面持ちで
中に入って行った。
母は僕らと彼女の突然の訪問に
たいそう驚いていたけど
嬉しそうだった。
「は………初めまして…………。
イム・モヨンと申します……
急にお邪魔してすみません………」
「あらいいのよ~~
来てくれてありがとね~~」
「モヨンちゃんはホソクの後輩なの」
「あらそうなの~
ホソクと仲良くしてやってね」
「は………はい………」
彼女はずっと緊張していて
僕は面白くなって一人で笑ってしまった。
最初は4人でのんびりと
話をしていたけれど
姉が急に
「ねぇモヨンちゃん
ちょっと借りていい?」
と言い出した。
「あらダウォン
よっぽどモヨンちゃんのこと
気に入ったのね~
いってらっしゃい」
姉は彼女を部屋に連れて行ったようで
僕はちょっと複雑な気分になった。
取り残された僕は
母に彼女のことを色々と聞かれた。
「さっきBTSのファンの中から
モヨンちゃんを見つけ出したって
言ってたけど
彼女に一目惚れだったとか?」
母はだいぶ話を作り変えていた。
「ファンの中から見つけ出したとは
言ってないけど…。
ちょっと話作り替えてるよ、かぁさん…」
「あれ?違うの?
同じでしょ~?
ねぇ、一目惚れなの?」
母はニコニコして僕を見てくるから
居心地が悪い。
「そんなんじゃないよ」
「でも気になるんでしょ」
「ん~
なんか面白い子だなって……。
だって俺の前で2回も転ぶ人なんて
初めてだし」
母は相変わらずニコニコしている。
「きっと運命なんでしょうね~
あんたがなんとなく
彼女のことを覚えていたのも
きっと運命だよ。
モヨンちゃん大人しくて
あなたとは大違いだけど
意外と合うんじゃないかしら…」
「え~?
俺は明るくて元気な子が好きなんだけど」
「それはタイプの人を
考えた時に思い付くだけでしょ?
実際はフィーリングだよ。
あーもう…
あんたが2人いるなんて
煩くて仕方なくなるから
正直ごめんだわ」
母はそう言って笑っている。
「それとも他に気になる子でもいるの?
芸能界なら可愛い子
沢山いるだろうけどさ」
「ん~…」
僕はあまり他のグループの人と
関わらないタイプではあるし
アイドルの子たちで
気になる子は特にいなかった。
「ま、オンマとしては
あんたが本当に好きな子なら
何でもいいけどね」
母はそういう人だから
僕は不安はあまりなかった。
いつか僕も結婚することになったら
母と仲良くなれる人だといいな……
僕はただそう思っていた。