それから何ヵ月か経って
再びライブをした
その帰りでのこと。
出待ちのファンに出くわし
SPに守ってもらっていたら
ファンがドミノ倒しになり
辺りは騒然となった。
僕は近くに居たファンに
手を貸したりして
辺りを鎮めようとする。
そこで助けた子がなんと
いつかのライブ会場近くで転んでいた
あの地味子ちゃんだった。
ドジな上に地味で
ちょっと残念なヤツ……
と最低ながらも思っていると
パッといつかの風景が脳裏に
フラッシュバックしてきた。
この子…………
たぶん同じ中学の後輩だ。
そこでやっと分かったけれど
話したこともないし
たぶん性格が合わないだろう……
そう思いながらも
気づいたら彼女に話掛けていた。
「君……この前も転んでたよね。
日谷中(イルゴグチュン)だったでしょ?」
周囲に人がいるということもあって
地面辺りで小さい声で話をした。
彼女は驚いた顔をして
「なんで………分かるんですか……?
話したことも……ないのに………」
彼女はか細い声でそう答えた。
どうやら僕の記憶は正しかったようだ。
「君は色んな意味で目立ってたから。
図書委員長として」
そう
彼女は僕の1つ下の学年で
僕が3年生の卒業間近の時期に
図書委員長になっていた。
どうして話したこともない
彼女を知ってるのかと言うと
彼女に言った通り
色んな意味で目立ってたからだった。
言葉は悪いけれど
瓶底みたいなダサい眼鏡に
膝下の長いスカート
前髪が長くて
見るからに根暗で
本に対する情熱だけが
際立っていたので
僕の友達は彼女の事を
''본미진''(ボンミッチン)
(本のキチガイ)
と呼んでいた。
今の目の前に居る彼女は
あの頃と差程変わらない雰囲気だったので
間違いないと思った。
「そ……そうですか……。
すみませんでした………。
失礼します……」
彼女は小さい声でそう言うと
膝についた砂を払って
お辞儀をした。
彼女は膝を擦りむいていて
血が出ていたので
「あ…」
と声を出したけど
彼女は風のように去って行った。
不運なのかドジなのか分からない
その地味子ちゃんの
本当の姿は全然違ったなんて
この時の僕は思っても見なかった。