「また明日~」
俺は帰宅部なので部活動の友達を見送り、一人寂しく帰路につく。
もう慣れたけど。
今の家は、学校からさほど遠くない。ただ母さんがいる家は、電車を何回も乗り継がなくてはいけないぐらい遠い。つまり一人暮らしだ。
なんでこんなことになっているかというと、母さんいわく、
「あれ!この高校、授業料とか全部無料だって!ラッキー!あんたここ行きなさいよ。ていうか、行くでしょ。行くしかないよね!」
という感じらしい。俺も特に行きたい高校があったわけではないが、この決め方はどうかと思う。
流れで押し切られてしまったけど、母さんは息子の俺に何やらせたいんだよ…。
ちなみに父さんは放浪癖があり、しばらく家に帰ってきてない。兄弟というか妹はいるが、それはまたおいおい。
とりあえず、俺の家族はみんなとんでもないやつらなんだ。
学校を出て五分ほど歩いて、自動販売機で飲み物でも買おうと思ったとき、ふいに名前を呼ばれた。
「朱南高校一年、藤島拓人君……だよね」
おどろいて後ろを振り返る。そこには、見知らぬ女の子が立っていた。ショートカットで、栗毛色の髪の毛をした、いかにもスポーツやってますって感じの子だった。見た目もとても可愛らしい感じだ。
「そうですけど…。俺になんか用ですか?」
少しいぶかしげに尋ねると、
「うん、ちょっとね。君ってさ…スキル所持者だよね」
なっっ!?何で知ってる!?
動揺を隠しきれない俺は、
「な…何の話でしょうか…?」
とりあえずそう答えた。後になって考えるとしどろもどろしすぎて、嘘だってすぐわかったと思う。
「けど、拓人君…さっき鉄棒、前の人と全く同じフォームでやってたよね。似てるなんてものじゃなくて、全く同じだった」
「い…いや、たぶん似てただけだよ」
焦って返す。しかし、
「違う。寸分違わず同じだった」
強気で即答された。
「きみは何かしらの理由でスキルを持ってることを隠してる。けどダメだよ。ちゃんと、私たちのクラスに来なきゃ。ちなみにわたしは、クラスⅠだよ」
一般のクラスはAからFクラスに分けられる。スキル持ちのクラスは、クラスⅠからⅢにわけられる。だから今この女の子が言っていることを考えると、
この娘、スキル所持者!?
ますますやばいことになってきた。こうなりゃ、どうにか黙っててもらうしかないな。けどさっき校庭に、こんな娘いたっけ?そう思った俺は、
「さっき実践訓練していた中にはいなかったと思うけど、どうやってスキルのこと知ったんだ」
とっさに聞いてみた。
「そのとーり。よく気が付いたね。私はさっき校庭にはいなかったよ」
「…っていうことはやっぱり…、スキルか何か?」
中場あきらめながら一応聞く。
「いいね!話が通じるよ。その通り、私はスキルで君のスキルを知った。私のスキルは紙であれば何でも、触っただけで好きな形に折れる。そしてそれが動物なら自由に動かせるの。あと、その動物が見た映像は、リアルタイムで私も見れるんだよ。ほら、体育の時間、拓人君茂みで鶴みつけたでしょ。折り紙の」
─あ、そういえばいたな。なんか動物かな?わーいとか思って探してたけど、まさかあの折鶴だったのか…
「あれで拓人君のこと見つけたんだよ。まあ、あかりも気付いてたみたいだけど…」
「えっ!?他にも気付いてる人いたのか!?」
俺は驚いて聞き返す。
「うん、同じクラスメイトの友達だよ」
スキル所持者か、それならまだいい。まずは、この娘をどうにかしないと。
「それじゃ…えーと…」
「そういえば、自己紹介してなかったね。私は、朱南高校一年クラスⅠ、折絵唯華(おりえゆいか)です。唯華でいいよ」