カーゼ バッセ:ブルネッロ ディ モンタルチーノ 1983 その4 | 古きイタリアワインの魅力を読み解く

古きイタリアワインの魅力を読み解く

イタリアンワインガイド ガンベロ・ロッソ 1988-1989
イタリアワイン界に多大な影響を与えるガンベロ・ロッソ Gambero Rossoですが、この初期(1988や1989当時)のレアなイタリアワインと古酒の数々を、掘り下げて解説します。

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol.38

Case Basse-Brunello di Montalcino 1983 その4

 

Gianfranco Soldera。

彼は科学を信じず、全ての工程を彼独特の直感で造っているのでしょうか?実は、当初、私はそう思っていました。しかし、彼のワインを味わう度に、そのスタイルの一貫性と収穫年に影響されない味のブレの無さ、安定感、エキセントリックではない酒質に惹かれ、実は様々な要素が彼の感性に加わって出来上がっているのだと思うようになりました。

そうですね、彼の奥様は自然を尊びながらも著名な学者である事、各大学の研究室とも協力している事、彼自身がミラノ出身の保険外交員であり、先祖代々の教条を守る義務に囚われる事の多いワイン農家出身ではない、という事を考えると、彼の言動は、全て科学的な根拠があり、それを信用しているからこその立ち振る舞いだという事が良く解ります。

 

現在唯一の生産品Toscana 100% Sangiovese Soldera IGT/IGPの2013ヴィンテージのテクニカルシートを掲載しました。折角なので英文と伊文両方を掲載しましたが、まあ、見事です。確かに冒頭は彼が開発したワイン瓶詰用ボトルの説明、2P文末はワインの保存法について書かれていますが、他の箇所にはびっしりと分析結果が書かれています。黙っていても売れると分かっている彼のワインであるのに、有名生産者の中にはHPすら公開しない者もあるというのに、これだけの情報を集め、分析し、公開するとは素晴らしい。その行為は、彼の自信へも繋がるのでしょう。

但し、彼のワインの出来不出来が彼の個人技による影響が大きい事も心配しています。その優れた個人技の持ち主が抜けた後が怖いのです。イタリアワイン界の偉人は、皆そういう年齢になりつつあり、悲しいかな、代替わりは難しい世の中になりつつあるのです。

 

最後に2018年6月29日付、英国のファイナンシャルタイムスに掲載されたジャンシス・ロビンソンとGianfrancoの記事を抜粋しました。解りやすい和訳も見つかったので下記に掲載します。

https://www.ft.com/content/ada5f862-7998-11e8-bc55-50daf11b720d(英)

http://vinicuest.com/wine_articles/2018/07/30-jun-2018.html(和)

曰く

・米国と欧州の厳しい経済状況を鑑みて、今後はアジアでのセールスを35%から60%まで引き上げたい。

・(私はPCを使わないが)将来のワインの売り上げはオンラインとなり、ワインショップは過去の産物となると予想している。

 

~成程、ここまでは良かったのですが。

 

・フランスワイン生産者による私のカンティーナ見学は断る。フランスワイン生産者は過去30年に亘り『毒』を生産したからな。

・ボルドーとボルゲリの様な湿地では偉大なワインなど出来るものか。ブドウは水を求め8~10m下に潜る根が必要だから。

 

Gianfrancoの口から発せられた後者の二項目には、さすがのジャンシスもあっけにとられたそうで。彼女は『しかしながら、テイスティングさせてもらった彼のワインはどれもまったくもって独創的で自信にあふれており、少なくとも彼は自分のしていることが明確に見えているのだということは私にもはっきりとわかった。』と結んでいます。

 

Gianfranco。天国でも元気にしてますか?

実は、貴方と全く同じ年・同じ日の2019年2月16日、私の父も天へ召されたのです。

そちらで父に会ったら、自慢の一杯を振る舞っておいて下さいね。

こちらでは、父の一周忌と共に、貴方の事も忘れずにお祈りしておきます。

 

この項 了。