ガヤ:バルバレスコ ソリ サン ロレンツォ 1985 Vol.2 | 古きイタリアワインの魅力を読み解く

古きイタリアワインの魅力を読み解く

イタリアンワインガイド ガンベロ・ロッソ 1988-1989
イタリアワイン界に多大な影響を与えるガンベロ・ロッソ Gambero Rossoですが、この初期(1988や1989当時)のレアなイタリアワインと古酒の数々を、掘り下げて解説します。

Vini d'Italia 1989 Gambero Rosso Vol.17

Gaja-Barbaresco Sorì San Lorenzo 1985 その2

 

Sori San Lorenzoはアンジェロの父親、ジョヴァンニがAlba教会から購入した畑です。その為、Albaの守護聖人・San Lorenzoの名前がクリュについています。

購入当時は糸杉などが生えているただの耕地で、ブドウ園ではありませんでした。ジョヴァンニは当時のGajaワイナリー農地整備担当のGino Cavalloに、そこの場所を耕地からブドウ園への転換をしたいと相談しますが、実は当時そこは非常に有名なトリュフポイントで、良質なトリュフが収穫でき、更にその目印となる二本の糸杉も生えているのでブドウ園への転換はダメだと断られます。但し、後日、トリュフハンターとしても有名だったGino Cavalloの名声を妬んだライバルトリュフハンターがGinoのトリュフ犬を毒殺するという事件が起こりました。Ginoはその報復に、糸杉を切り倒し、トリュフポイントを潰し、ワイン畑に転換する事に承諾します。

今はすっかりブドウ畑の様相をしていますが、ひょっとしたら地中にはトリュフの菌糸が残っていたのかも?それが独特の薫り要素をブドウ育成と分子構成に作用している?な訳ありませんか。

 

この時のエノロゴはGuido Rivella(在職1970~2010)。Gajaにとってはこれが功を奏します。後にご紹介するPrunotto-Montestefano畑頂上に位置する、現Az.Agr Rivella Silviaの実父であり、Barbaresco造りの第一人者です。

ジョヴァンニの跡を継ぐ決意をしたアンジェロは、Alba醸造学校を卒業後、フランスのモンペリエ大学、トリノ大学を経て、ロンドン留学時(確かに彼は英国英語で話します。今気づきました。)に英国におけるイタリアワインの地位の低さと品質の悪さを痛感します。帰国後、父のやり方を急激に抜本的に変えますが、その改革に追随しつつ折り合いをつけていったのがGuido Rivellaだったという事ですね。

彼らが根っからのクラシックピエモンテ人なら、今日のGajaは無かったでしょう。例えばバリックの使用についても慎重でした。確かにGajaは1966年からバリックを導入しますが、1978年までは他の実験的なブドウ品種にしかバリックを使用しませんでした。当時はボルドーから使用済のバリックを購入し使用していましたが、1979年、DRCのセラーマスターAndré Noblet(DRC在職1946~1985)の訪問と伝授を受け、ようやく造り方を変える決心をします。まず1978~1988で20%から50%までバリックの使用率を上げ、更に1982年にBarberaを植え、元来100%Nebbioloで造っていたSori San LorenzoにBarbera15%の添加を始めます(これが後にLanghe Nebbioloを名乗る原因になります)。バリックの使用法に関しては急進的でなく、段階を踏んでの導入が非常に良かったと思います。

後に研究を進め、樽材の選定と自社における組み立て、新樽率100%化、有名な特注ロングコルクの製作、更にはロングコルク抜栓用に米からスクリュープルの輸入販売(輸入会社Gaja Distribuzione、1977~)を行います。

 

そんな順風満帆のGajaですが、私が知りえる唯一の失敗はMondaviとの合弁企業設立ならず(プロジェクト期間1989~1992)でしょうか。Mondaviワインのイタリア輸入を通じて彼らと距離を縮めたGajaですが、Mondaviという企業の大きさに尻込みし、御大アンジェロ自身が契約を前に撤回を決意します。

Gajaの世界進出は、まずAngeloの段階で輸出に留まりますが、実娘Gaiaさんの世代では何かアクションがあるのではと思っています。

 

当時のインタビューにもAngelo Gajaが米国進出に『びびった』と言葉を残しています。なんか親近感湧きますね。

Toscanaの他、Siciliaでも臆せずがんがんワインを造るのでしょう。ちょっと内弁慶で、とてもいい。いつまでもお元気で。

次回Vini d’Italia1990の解説で再々登場するまで、お身体を壊さぬよう。

 

基本、Gajaは一切の情報が非公開、HPもありません。見学もままならず、施設内での写真撮影も限られます。

貴重な写真をご紹介して、今回のGaja解説を終わりましょう。