テヌータ サン グイド:サッシカイア 1983 その4 | 古きイタリアワインの魅力を読み解く

古きイタリアワインの魅力を読み解く

イタリアンワインガイド ガンベロ・ロッソ 1988-1989
イタリアワイン界に多大な影響を与えるガンベロ・ロッソ Gambero Rossoですが、この初期(1988や1989当時)のレアなイタリアワインと古酒の数々を、掘り下げて解説します。

Vini d'Italia 1988 Gambero Rosso Vol. 17

 

Tenuta San Guido-Sassicaia 1983 Vol.4

 

 持論ですが、イタリアにおけるMeの功罪は大きい(いずれ書きます)。

入れるとバランスが取りやすく、簡単・綺麗に構成が決まり、味わいはこれこそイタリアンなイメージになりますが、経年変化による落差が激しすぎる(80年代から盛んに造られたMe100とかMe入りのワインは、6年目位から下がる感覚が。近年では温暖化の影響もありMeの栽培自体難しい。さあどうするイタリア)。

 

 幸運にもSassicaiaはMeやSvの%調整などをする必要が無く、収量を調整する事も無く、ワインのキャラクターはある程度、葡萄の出来や自然の成り行きに任せます。暑さ対策と味強化の為に台木にSyを使う事や、過度なビオ処理をする事も無い(ビオを否定しませんが、その行為はストレスだと思います)。これがSassicaiaはいつもSassicaiaであり、安定した供給とワイナリー経営の基礎になっているのでしょう。

 参考までに2007年に出版されたGambero Rosso20周年記念ガイドを載せました。1988~2007の20年、どのワイナリーとワインがTreBicchieriを獲得したかの記録です。Sassicaiaは20年間中この83を含め16回獲得。この安定感。88以前にVini d'Italiaが出版されていれば、82以前も取ったでしょう(余談ですがもう一つ20年間中16回獲得で同率一位のワインがあります。なんでしょう?考えてみてください)。

 

 以前、Sassicaiaは『スーパータスカン』にあらず、と書きました。私が考える『スーパータスカン』はこんなイメージです。

 

1、78年に英国から始まった『トスカーナ最高』の時流に乗りたい、よって70年代後半以降に生産開始。

2、元来はDOCワインを一般消費者向けに生産・販売している生産者の作品。

3、自社の生産能力の極限と自社製品を広く知っていただく為のキュヴェ。

4、特殊条件で生産するので限定品。トスカーナは225Lが主流の為、5~50樽=1,500~15,000本程度。

5、限定生産なので、しばしシリアルナンバーや生産本数がエティケッタやタグ等に記載される。

6、イタリア固有品種も使用している。

7、山のワイン。

 

 Sassicaiaはほぼ当てはまりません。生産開始は40年代。DOCは生産せず。趣味で造った。85でも6万本以上。CSとCF。当時は畑も無い海の近く。Sassicaiaは『スーパータスカン』を生むきっかけなった存在と言え、後発組の『スーパータスカン』では無いという事です。

 

 誰よりも先に、誰もいない場所で、外国の先進的な考えを自分なりに昇華し、己の信じるままに造り始めた作品が、たまたまイタリアという場所だったのでイタリアの考えを踏まえた物造りになり、もてはやされたという事。誰かに似ていませんか?そう、私の好きなマルケージそっくりです。時代が後から追いついただけなのに、その存在はとかく物議の種となり。時代遅れ、世代交代、コンシューマー向けに活動しすぎ、いや功労者、原点等々。私は言いたい、彼らがいたからこそ、伊ワイン・伊料理に携わるあなた方・後進が生まれる事が出来、活躍する場所が用意され、国際的な考え方を抵抗なく取り入れられ、更に広く評価を得る事が出来るのだと。

パイオニアは尊敬こそされ、決して蔑ろにされてはならない。

だから私は断固Sassicaia肯定・擁護派です。

 

Sassicaia万歳、Marchesi万歳。

 

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