茶色道化師の見世物小屋

茶色道化師の見世物小屋

茶音煉樂の同人小説置き場です。
主にV系(P缶盤)を扱わせていただいてます。

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                  P.S.Story
                 -青と白の物語-
                01★境界線のむこう

 -あの空を忘れないで。

 忙しい緑の季節が風のように通り過ぎ、私は初めての夏を迎えた。昨年の秋採用で入ってきた自分にとってはまるで境界線の向こうの世界。お仕事が大好きだから夏休みなんて少し淋しいけれど、ゆっくりできるのかと思うと肩の荷が軽くなった。
 そんなある日の午後のこと。

 「茶音さん、」と私を引き止める神々しい声。先輩の山西さんだった。彼女は28歳中堅の管理職員で、私の憧れの先輩。入ったばかりの私にとって、そんな凄い方が私に話しかけている、という何とも目を疑う光景なんだけど。誰しも全世界共通、よほどの能天気でなければ答えに不安を想定するもの。昨年の3月にも似たようなことがあり、その時も切られてしまうのでは、と心配をしたのだった。嵐の前の静けさというから、今度こそあぶないのかな。おそるおそる近づいて、言われる言葉を待つ。

 「茶音さん、ちょっといいかな?」
 彼女は小声で、私に耳打ちをするようにそっとささやいた。どうやら悪い話ではなさそうだ。彼女の目が笑っているもの。
 「あのさ、ホント急で悪いし驚くと思うんだけど・・・アタシ今夏もオーストラリアの冬を楽しみに行こうと思ってるんだ。そこでさ、事務所空けるわけに行かないじゃない?黒田統括部長も忙しいから毎日はここにいないしさ。そこで、モノは相談なんだけど・・・」
 なんだけど・・・?
 なぜそこで黙る(笑)続きはCMの後ですかっ!ここで恒例の茶音劇場が脳内で繰り広げられる。

 ①「アタシと一緒に来てくれないかな?ほら、茶音さん初めての夏じゃない?ってことで、ジャジャーン!海外旅行!」みたいな。
 ないか・・・笑
 ②「夏休みの間だけアタシのお仕事しといてくれないかな?帰ってきたら10月の記念祭で好きなことやらせてあげるから」これはいいな。でも恐らくありえないし、私に山西さんの代わりのお仕事なんて重すぎるもの。残念ながら、ないな!
 ③「委託先の別事務所に派遣されてくれない?」ちょっとこれは悲しいかな、うん、ないない!ないぞ!いや、あってはならない(焦)

 結局本当のところはなんだったのかと言いますと。

 「アタシが昨年まで担当していた、ViViDのマネジャーしてくれないかな?アタシは海外旅行が好きで有名だから2年前とかも新人さんにお願いしていたのよ。でもミンナ辞めちゃったり、それこそ委託先別事務所に派遣されたり、才能が凄くて自分が表方に立っちゃった社員さんもいたりして結局今お願いできるのは茶音さんしかいないの。ね、やってくれないかな?カレとの結婚4年祝いもしてきたいから今夏は絶対に行きたいのよね~」

 な ん で す と !?
 私が、わ、私が、専属マネジャー?バンドさんに付いてお仕事を?
 ・・・・・ないないないないない。これは夢だ。ほら、頬を叩けばきっとあの怒り声が起こしに・・・来てくれないんだった!どっちにしても私もう一人暮らししてるじゃん!って何言ってるんだろう?ってかViViDさんって?エライの?確かメジャー行きを果たした・・・んだっけ?あぁもう私働いているのに知識がなさすぎるよー!

 「茶音さん?笑」
 動揺して声が止まる私をずっと彼女は見ていたらしい。恥ずかしいというか、情けないというか。でも、裏を返せば・・・?これってさっきの二つ目の妄想に繋がりかねない?くない?お仕事を任されているんだよ、それはつまり山西さんにとって今一番信頼をおける後輩が私であって・・・休暇後に力量が評価されれば、10月の記念祭でやりたいあの“願い”を叶えられるかも・・・?そう、これは全て繋がった偶然であり必然なのよ!私は小さく深呼吸をして彼女に答えた。
 「・・・わ、私で良ければ喜んでお引き受けいたします!てっきり、切られてしまうのかと!」
 どう見ても彼女は笑っている。そんなわけないでしょう、という思いを浮かべた含み笑いで肩をポンと叩く。と途端に「そういうわけだから」と咄嗟に部屋を出てしまった。漫画だったら星でも飛び出しそうなウインク一つ残して。

 「ちょっと!あの・・・詳しい説明は・・・・
 私の言葉は彼女の走る明るい靴音に消えた。説明もなしに行っちゃうんだもん。でも、山西さんらしいかぁ。って優しい気持ちになってる暇ないよ!どうしよう。明日から・・・ViViDさんにはこのお話は行きわたっているのかな?いきなり挨拶して入っていく勇気なんてない。そもそも、バンド別の棟に足一つ踏み入れたことのない私にとっては砦に入っていく勇者のような仕事なのである。とりあえず、内線じゃ申し訳ないし、明日から来ます程度の挨拶はしておいたほうがいいだろう。って、あそこ監視カメラは・・・なかった、よね?休暇割引でまた修理にでも出されていれば良いのだけれど。そんなことを考えながら無意識で歩いていたら、目の前はあの大きな扉。そうか、メジャーとそうでないバンドさんとではゴデ●バとコンビニのチョコレートくらいの差が施されているんだったっけ。こんな焦り時になってまで脳内にスイーツが出てくるのもいかがなものか。もう行かなきゃ。


-「茶音煉樂です!」



私はもう扉の向こうだ。