北区の西が丘に、ナショナルトレーニングセンターが開設された2008年。日本オリンピック委員会は、JOCスポーツアカデミー事業をスタートさせた。
その中の1つである「JOCキャリアアカデミー」は、「トップ選手が現役続行するための就職支援、様々なライフスキルを身につけるための教育研修、引退時のキャリア支援を行う」事業。
2008年1月から、私はその事業に、キャリアカウンセラー、アシスタントデイレクターとして従事することとなった。以来、8年3か月の間、オリンピック強化指定選手や、ジュニアの有望選手たち向けの教育研修を、年に50講義ほど実施し、また様々な競技のトップレベルで活躍した現役選手、引退選手のキャリアカウンセリングを、のべ883人担当してきた。
その過程で、日本におけるトップアスリートのキャリアの課題を目の当たりにし、彼らが自発的に自身のキャリアを考え、選択し、道を拓いていくためには、どんな研修やカウンセリングが有効なのか。また、どんな機会が必要なのかを検討し、現場のコーチらとも話しをしながら、様々なことを行ってきたことで、見えてきたことが多々あった。
この経験をもっと広く、活かすことができないだろうか。
あるときから、稀有で貴重な経験は、私個人の記憶にのみ留めおくことなく、公のものとして社会に還元していくべきではないかと、考えるようになった。もちろん、個人情報や守秘義務は遵守する前提である。
働きながら大学院に通い、論文としてそれをまとめていくことも考えたが、それよりもJOCキャリアアカデミーの職を辞して、時間をつくり、アスリートの直面するキャリアの課題について考察し、解決策を自身が現場で実践してみたいという思いが強くなった。
自らを新たなキャリア構築のただなかに置き、過去とこれからのキャリアを、様々なキャリア理論に基づきながら振り返り、設計図を書いてみる。それをすることで、アスリートのキャリア考察に生かせるリアルなヒントが得られるのではないかと、考えるにいたったのである。
今、現役選手たちが何を不安に思い、どんな準備を結果的に怠ってしまっているのか。
一般的には「安定している」ように見える、引退後の受け皿がある実業団選手は、引退後、しばらく勤めるとなぜ、辞めてしまうのか。アスリートのセカンドキャリアの問題とはいったいなんなのか。
自身の新たなキャリア構築活動をここに報告しつつ、アスリートキャリアカウンセラーとして、できること、やりたいこと、アスリートの役に立つことを実行に移し、発信していきたい。
このブログはその発信の場のひとつとして、運営していく。

