おかえりなさい
7回目は、イギリス博士チームによるポップミュージックに関する研究発表をもとにスクラップしていきたいと思います。
実は、以前に読んだこの記事がずっと気になっていたからなのです。
引用元の研究論文 (英語)
1:研究者はどんな博士たちか?
2:何を目的にどんな分析をしたのか?
3:どのように利用できるのか?
の順にスクラップしていきたいと思います。
私は、ブリティッシュ音楽とUKサブカルチャーが好きすぎるので、ブリテン君と呼ばれています。
どうぞしばらくおつきあいくださいませ。
1:研究者はどんな博士たちか?
まずはこの論文の著書である4人の英国研究者の名前と所属大学部で検索をしてみます。
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(当時Last.FM/現AppleUKリサーチマネージャー)
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どうやらビートルズマニアらしい
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60分番組:この研究に遺伝子工学的な立場から参画していたリロイ博士が更に研究を進めた後、 Sir.トレヴァー・ホーン CBE (バグルス /ZTTレコーズ /イエス ) のスタジオを訪ね、ある若手女性シンガーの新曲バラードのアレンジを、ヒットデータが示すようヒップホップ調にしてラップを入れるべきだとプロのミキサー2人にアドバイスをしたりしています。 VIDEO
2:何を目的にどんな分析をしたのか?
ざっくりと、論文と映像をみてみると、彼らのアルゴリズムは、過去50年間(1960-2010)のヒット17,500曲を対象に、以下のような基準で、 遺伝子解析のように数値化、分類、体系化することに成功したようです。
ジャンル
コード
音階(スケール)
ビート(リズムパターン)
速さ(ピッチ/BPM)
音色(楽器の音色など)
曲調(展開と転調)
激しさ(ギターのひずみなど)
癒し成分(バラードなど)
(おそらくアーティストのスタイルや、メンバーの移動、影響されたバンド、カバー原曲、レーベル、プロデューサー、エンジニア、使用楽器、歌詞の内容までもAPIなどと連携しているはずです)
※アルゴリズムの詳細は追って論文を精読していきます。
そもそも、
この4人の研究は、イギリス発祥の音楽SNS元祖である Last.FM (2002年構想/2003年サービス開始)との共同研究であったということから、彼らのレコメンドエンジンのベースとなる以下のミュージックグラフ 強化を目的としていたことが容易に想像できます。(Mark Levy 博士の前職がLast.FMですから!)
この大学のホームページでは研究成果として、iTunesで自分好みのプレイリストを自動作成できるPC用無償アプリSoundBite の紹介までしている程、この分野の研究に注力しているようです。
音楽ダウンロード販売や定額制音楽サービスの核となる先端技術領域ですね。
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ビートルズファン のリロイ 博士 は 、更にオックスフォード大の計量経済学 研究者らとともに商用化研究を重ね、売れ線サウンドのアレンジや、ラジオ曲編成などに研究成果を熱心に売り込んでいます。(以下は計量経済学ガイダンス)
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印象に残った分析結果
ポップミュージックの大きな変化
アメリカ:1964、1983 、1991
イギリス:1964、1979 、1991
音楽雑誌の特集によくある以下の史実が、膨大なデータ分析による数値化により科学的に証明されたわけです。
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VIDEO 面白いなと思った映像は
1点目
楽曲に使用される音階(ギタースケール)の経年変化
「60年代はブルース調で70年代後半がファンク調」
「80年代後半になるにつれて解析不能(ラップ化)」 2点目
大変化の起点となった革命的なサウンドアレンジ
1964年 キンクス(パワーコード)
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1977年 セックス・ピストルズ(デストロ〜イ) VIDEO
1977年 ジョルジオ・モロダー(ピコピコ)
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「ピストルズのようなパンクは、ポップヒットに結びつかず、モロダー風の エレポップ ( シンセポップ )が80年代に台頭し、ファンキーなディスコサウンドに変わって、その後のダンスミュージックシーンにおけるハウスやEDM人気の起点となった。」
「イギリスの2回目の大変化が1979年になっているのは、 ナイル・ロジャース ( シック )の影響による ビージーズ の サタデー・ナイト・フィーバー のような ファンキー・ディスコ サウンドが大流行したため」
との研究成果発表。(BBC Four番組映像より)
補足:
その二つの音楽スタイル革新の結果、イギリスでは黒人たちや一部エリアの労働者階級の溜まり場であったディスコへ、ロックコンサートに行くような大衆までもが行くようになりました。
1982年になると、ロンドンソーホー地区の老舗ライヴハウス Whisky A Go Go (1963開店)が、服装チェックをパスしないと入店できない The WAG Club へと業態変更し(イギリスにおけるクラブ・カルチャーの先駆け)、最先端の ニュー・ウェイヴ・ファッション でキメて踊る、 ダンサブルな シンセポップ がUKチャートの上位を占めるようになりました。
ビフォー:Whisky A Go Go 時代(この店) VIDEO
アフター:The WAG Club 時代(この店)
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The WAGの常連だったレッツダンスな若手有望ミュージシャンたちは、MTV時代の波にのって七つの海を渡り、ワムや、ヴィサージ、ウルトラ・ボックス、アダム・アント、デュラン・デュラン、カルチャー・クラブ、ヒューマン・リーグ、ユーリズミックス、スパンダー・バレー、ハワード・ジョーンズ、トンプソン・ツインズなどのヴィジュアル系ブリティッシュ・アーティスト( ニュー・ロマンティック ) が、お茶の間キッズたちから絶大な支持を受け、上記研究結果が示す1983年のUSAポップ・ミュージック界に構造変化をもたらし、 小林克哉さんの司会 により日本のナウなヤングたちやマハラジャ族にも大人気になりました。
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なお、3回目の大変化となった、ヒップホップやハウスなど、打ち込み&サンプリングによるエレクトロ・ダンスミュージックの隆盛は、私のスクラップテーマとなるUK産 では無いUSAサブカルチャー起源 であるため、割愛します。
3:どのように利用できるのか?
アルゴリズムで伝説プロにコンサルするリロイ博士
博士はビートルズマニアなのに、専門外分野の
「ヒップホップ調にするべきだ」
とSir.トレヴァー・ホーンCBEに力説し、
「この曲はバラードなんだよキミ」
と苦笑されてしまうのでしたが、、、
あなたにオススメのアルバム
とは、
「どこのどいつが、どういう根拠で、このオレサマにもの申しておるんじゃぁ!」
というのは、スマホからネットを通じてコンテンツの視聴や試聴をする現代人すべてにとっての素朴な疑問でしょう。
今回最もタメになったことは、それら自動的なオススメ表示 の理論や作業手順を、研究者がギターで自演しながら説明する姿を拝見できたことでした。
たったひとりの極東アジア人音楽ファンとして、彼らの偉業に最大限の敬意をはらいたいと思います
実をいうと、
私自身はそのむかし、過去の膨大なデータアーカイブを分析するプロジェクトに何回か携わったことがあるのですが、いざクライアントのお偉方にその成果を発表してみると、、、
「はぁ?そんなのは我が社ではみんな常識だよキミ」
と、一喝されてしまった苦いトラウマがあります。
音楽フェチで超優秀な英国博士諸氏による学術研究論文発表の映像は、広く一般向けなので、長年の洋楽マニア各位は、かつてのお偉方と同じように 「拍子抜けする音楽史の通説」 に感じてしまうでしょう。
が、しかし!
リロイ博士のYouTube映像(BBC番組では最後)の行動には、とてつもない可能性を感じました。
彼は無名のインディーバンドの楽曲を、多数自らのアルゴリズムで解析し、その中のハイスコアを出したバンド(Marmalade)のライヴを実際に観に行き確かめたのちに、BBCラジオ音楽番組の編成局長に直談判で彼らをレコメンドしたのです!
※YouTubeに以下コメントあり
要するに、楽曲データを専門アーカイブやSNS経由でSoundCloudなどから、ビッココインをマイニングするように集め、豪速システムをブン回しつづけ、科学的に成功確率が高い有望新人をノミネートし、ビートルズファンの生物学博士(53歳)自らが、夜な夜な発掘しにイケてるUKサブカルチャーなクラブへ出かけているのです!
BestOfBritishUnsigned.com
センミツ (千のコンテンツのうち三つ当たればいい方)と呼ばれつづけてきた、エンターテインメント・コンテンツ業界は、ヒットを生み出すために、このような手法でAIを利活用する時代なんだなぁ。
と思いつつも、、、
それは、私が大好きなUKサブカルチャーの真逆となる、
初期衝動を感じニクい、似たりよったりの売れないコンテンツが、ずっとずっとコピペ量産されつづけている現状 において、アーティスト本人たちはこの英国博士チーム研究のように
専門特化した超優秀なAI を、
敏腕なマルコム・マクラーレン ロボ として利活用していくことが最重要なのだろう。
などと、勝手に思いました。
ブリティッシュ音楽とUKサブカルチャーファンの立場では、このようなAPIを無償アプリで提供してもらい、
前回までのスクラップのような 、ブリテンの地理的、民族的、文化的な歴史や風土と時代の雰囲気とをかけ合わせて、
ごくごく個人的にエツにどっぷり浸る老後の生活 が今から楽しみです。
いずれにせよ、
Spotifyの優秀なレコメン君 は、いつでも私に素晴らしいディスカバリーを提供してくれるので、ありがたく恩恵を享受する毎朝毎晩でございます。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。
以上、ブリテンでした。
ではでは
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