顔はチンピラにいそうなヘビかキツネようなキツい顔だったが肌の白くてどちらかといえば男前だった。
お金が借りたいと言う。
申し込み用紙に必要事項を書いてもらった時にその男性客の異様さに気付いた。
手の甲を舌の先でペロペロ舐めながら申し込み用紙を書いているのだ。
まるでキツネのようだった。
少し書く度にペロペロ、少し書く度にペロペロ。
指も舐めていた。
私は自分にもヨダレが付くんじゃないか内心嫌々対応した。
そして、あまり借り入れはなかったので貸してその男性客についてはすっかり忘れていた。
しばらくして、またその男性客が来た。
増額して欲しいと言う。
顔を見てびっくりした。
青紫のよく漫画で見るような痣が目の周りにできていて頬も赤くなっていたからだ。
恐らくかなり殴られたのだろうなと思った。
誰からか金をせびられ、一度は断ったけれど殴られて来たのだろうか。
男性客の顔は半笑いだったけれど目が死んでいるような遠くを見ているような生きてる感じがしない、そんな感じだったのが今でも忘れられない。
ただ怪我をしただけなのかもしれないけれど、あの男性客は、なんだか人生を諦めてしまっているように見えた。
もう10年くらい昔の話なのに、私はあの手をペロペロ舐める仕草が気になってしまって調べてみたら、大人でもストレスを抱えている時に出たりするらしい。
こどもの指しゃぶりは寂しいくてするとかいうのと一緒だろうか。
あの男性客には誰もいないのだろうか。
自分の人生一度きり。
悔いのないように生きたいなぁと思った。