密猟者の狙いはサイの角を採取してそれを高値で密売することです。サイの角はワシントン条約で取引が禁止されているのですが、一部のアジアの新興国でサイの角の粉末が病気に効果を持つというスーパースティション(迷信)があるのです。このため、中国や東南アジアでサイの角に対する需要が拡大しています。
高値で密売されたサイの角はアジアで漢方薬の原料として使われます。非常に貴重なので、角1本が日本円にして600万円近くで取引されることもあります。
南アフリカ国立公園の発表によると、密猟で殺されたサイは2010年の1年間で333頭に上ったということです。この数字は、統計を取り始めてから現在までの間で最悪の被害数です。ちなみに、07年に密猟によって殺されたサイは13頭、08年は83頭、09年は122頭となっており、年々増加していることがわかります。
そして、直近2011年1~6月までの半年間では、193頭のサイが密猟によって殺害されています。
このペースでいけば、2011年の年間の密猟被害数は過去最悪だった2010年の333頭を上回るかもしれません。
南アの政策当局は監視を徹底するなど密猟対策を強化していますが、密猟者は夜間にハイテク機器を使って組織的に密猟するため現場を押えることは容易ではありません。また、南アの当局が規制を強化しても南ア以外の地域でサイの密猟が横行する可能性もあります。
密猟の根本的な解決策は、サイの角に対する需要を消滅させることで、アジアに広がる誤った迷信を払拭しなければなりません。
BRICs経済研究所 代表 門倉貴史