数日前まで雪がたくさん降り積もって、
ツムギたちもこんな寒いところに来るんじゃなかったと
少し後悔したことだろう。
だけども今日あたりは気温が随分上昇して
3月中旬程度になった。
では明日シベリアに帰ることにしよう、
と,そうならないところはツムギたちが持っている
季節を推し量る精密な時計によるものだ。
年という単位も月と言う値。
1日という時間はもちろんのこと、
分単位も綿密に刻んでいる。
それは毎日観察していると
深く実感することなのだ。
何百キロ何千キロという道のりを
間違えることなく捉えることができる
コンパスにもただ驚嘆するだけだが、
このように時間を感じ取ることができる能力にも
ただ驚かされるばかりだ。
それ故、別れが迫っていることは
また変更のない筋書きでもある。
あとしばらくの間この地を楽しみ
車にはねられたりすることなく
みんな揃って、
帰るべき所に辿り着くことを願ってやまない。
追記
3月3日現在 ツムギの数は約半分になった。
別の場所に移動したとも考えられるが
おそらくは半数程度がまず帰路についたのでは
ないかと思っている。
全員が同時に飛び立つと悪天候や予期せぬ出来事に
遭遇した場合、全滅することになる。
それを避けるために2度か3度にわけて
出発日を変えているのだと推測する。
子供を無事送り届けなければならない親鳥たち。
体力がまだ心もとないツムギはもう少しいようなど
聞こえはしないが、色々な会話がかわされたことであろう。
3月26日
生ぬるい4月上旬の風が吹く。
場所によっては25メートル吹くという
台風並みの強さだ。
昨日の暖かさにつられて、また快晴の天気にだまされ
もしやツムギは海に向かうかもしれない。
そうも思われた、今日もし海を渡っていたら全滅だったろう。
(引き返すことが出来るなら助かる可能性はある)
この強風や向かい風で数百キロの海を越えることは不可能だ。
冬の間せっかくため込んだ体力も使い果たしてしまうことだろう。
だがツムギはそんな運命はたどらず、気圧の変化を読んだり
荒れた天気を予想したように思える。
2時半現在残った半数は一羽のこらずこの地にいるようだ。
昨日の2時半には一羽もいなかったので海辺まで飛び
待機したかとも思われたが、まだいた。
おそらくはここを離れる時期を決める「会議中」であったのだろう。
そしてそこで得られた結論は彼ら、あるいは彼女らの
命を守ることになった。
追加
3月31日現在
昨日は5月中旬の気温。半袖でもという陽気。
今日は一転して寒い。また雨だ。
ツムギは昨日の気温でもう大丈夫、
明日こそ旅立とうと決意をしたかと思われた。
日中はほとんど見かけず海辺へ向かったかと
思われた。
だがまだ見かける。
大きな杉の木にある葉の中で様子をうかがっているのが
見える。鳴き声も聞こえてくる。
スズメの「チュンチュン」という鳴き方とははっきり
違いを聞き分けることが出来る。
上等な笛を吹いたような良く通る「ピーィ ピーィ」という
声を発する。それは別の場所で聞いたとしても
たちどころに判別することが出来る、ツグだけがもつ鳴き声だ。
この鳴き声を聞こえてきたらツグミ達が季節の
移ろいを確かに感じ取ったいうことだ。
もしかしたらそれは人類がとてもではないが
こしらえることなど叶わぬ、精密な計器かもしれない。
4月4日
数は更に半分ぐらいになった。
時々1羽しかみかけないことがある。
晴れた日は特にいないことが多い。
小さくて細いツグミがやはり多い。
4月9日
朝方一羽見かけた。
このあたりが移動日を決める
最終日程になったのではないだろうか。
単なる推測ではあるが
海辺か、その近くまでまず飛んで
休むのではないかと思っている。
今度海辺に住む人に訊いてみようと思っている。
