ブラジル発 セクシー&キュートな洋服屋の生活裏話 (格安ネットショップもオープン ダンスファッション サルサ ナイトクラブに!) -11ページ目

賃貸牧場

わたし達がまだサンフランシスコに住んでいる頃、牧場にはわずか40頭ほどの乳牛がいただけで、バカンスで雨季のブラジルを訪問した際に牧場に遊びに行くと、牛の放牧地は、人の背丈ほども牧草で覆われていてびっくりしたものである。

ところが、ブラジルに完全に帰って来てから、うちの人と弟とそれぞれ80頭ずつ合計160頭の牛を放牧し、1年も経つと牧場は以前の豊かな緑が一変して、すっかり荒れ果ててしまった。雨季になっても芝生に毛が生えた程度の牧草しかなかったから、わたしにも状況が手に取るように分かった。というのも、放牧地に対して牛を入れ過ぎてしまったからだった。牧場経営初心者の彼らだったから当時の放牧地の広さに対する牛の数を割り出すことができなかった。

牧場自体は48エーカー(1エーカー=1,200坪)と小さな村ひとつ位の広さがあるのだが、ほとんどの部分はジャングル状態で放牧のためのスペースはたいしてないのだ。放牧地を作るためにはブラジルの森林伐採をコントロールする政府の機関にその旨申請して許可を得なければならない。この申請には、ブラジルの役所仕事の常でやたらと時間がかかる。結局、許可が下りるのに半年以上かかった。

さて、荒地と化してしまった牧場を救うための方法は一つしかなかった。許容範囲を超えている牛を牧場から取り除くこと。現状では80頭の牛で手いっぱいという感じだった。この問題が持ち上がったのは、ちょうど弟が未亡人の彼女と悪態を付いていた頃だった。牧場を2分割するか売り払おうという話しも出たが、たまたま条件のいい賃貸牧場の話しが近所の知り合いから入って来た。

うちの人の妹の一人がこのご近所さんの親戚と結婚しているということもあり、以前から行き来のあるお宅のご主人ラウダイヤー。ラウダイヤーは、地元警察の幹部として働いていたから、トラックが盗まれた際にはいろいろと面倒を見てくれた。また、自分の息子達が牧場経営に全く興味を示さないこともあり、牧場経営についていろいろと質問をしてくるうちの人を結構可愛がってくれていた。

ラウダイヤーが勧めてくれた賃貸牧場は、うちの牧場への途中にあり、過去4年間ラウダイヤー自身が賃貸していた牧場だった。ラウダイヤーの所有する牧場とは全く方向違いにあったため、たまにわたし達がうちの牧場を訪問する際に、通り道という事でよく頼まれ物を持って行ったこともあり牧場自体はよく知っていた。

ゴイアニア市からわずか1時間ほどというこの牧場一帯は、うちの牧場のようなジャングル部分が少なく、すっかり放牧地となっており、ゴイアニア近郊では最高値をつけている牧場ばかりが並んでいた。この賃貸牧場もその一つで、50エーカーの広さに250頭の牛を放牧できることからも伺えた。

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カーニバル中です

今年のカーニバルの休日は2月8日の火曜日です。

といっても、カーニバルはその前後の1週間くらい大々的に催し物があるし、地域によっては1ヵ月間働かずに踊り続けてる所もあるとか。

さて、わたしの住むゴイアニアという町にはカーニバルのイベントが皆無なので、カーニバル前後はうちのお店は閑古鳥が鳴いています。だいたい、余裕のある人達はどこかにバカンスに出掛けて、通りには人っ子一人いません。

ところで、ブラジルといえばカーニバルが代名詞になっているけれど、カーニバルが嫌いなブラジル人が意外とたくさんいるのをご存知でしょうか?うちの旦那さんもその一人。わたしは華やかなカーニバルのパレードが見たいから普段は見ないテレビでカーニバルのパレードを見るけれど、彼は一瞥もしません。「バカみたい」とか言ってます。他にもカーニバルが嫌いな人がよく言うのは「昔のパレードは良かったけど、今は観光化され過ぎて身近に感じない」そうな。

ブラジルのカーニバルといえば「リオのカーニバル」が有名だけど、実際はサンパウロとサルバドールでも大々的なパレードがある。テレビ中継を考慮してか、この3都市でのパレードの日程は重ならない用に配慮されているようです。パレードは、専用のスタジアムでチケットを購入してまるで野球観戦のような感じで観覧する。これが地元ブラジル人にとっては気に食わないらしい。というのも、一昔前はパレードは大通りを練り歩き、観覧はもちろん無料で見る側も一緒になって踊って参加できたようだ。

現在、リオのカーニバルのチケットは発売と同時に旅行会社に押さえられて、ほとんど完売。なかなか手に入りづらい代物となってしまいました。やっと購入できても、海外からの旅行客がほとんどだからその中に混じってお行儀良く観覧しなければならない。リオのカーニバルにわざわざ出掛けた人達の話を聞くとたいていみんな「2度と行かなくていい」といってます。

逆にリオの市長は、いかに外国人旅行者を集めるかに必死です。リオに流れてくる外貨は相当なものだからです。だから、アメリカがテロ後に導入した旅行客への指紋摂取に激怒してブラジル側がアメリカ人旅行客のみ指紋摂取をした時などは、リオの空港ではアメリカ人旅行客を対象にサンバレディがプレゼントを配るという反ブラジル人行為をしてました。

どっちがいいのかは分かりませんが、ブラジルが豊かになってくれるのを願うわたしです。

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ブラジルのお会計

お店をオープンしてから最も気を付けた事は「商品、備品の管理」である。まぁ、これは日本でも普通のことである。違いは、万引き等の外部からの盗難ではなく、内部の人間の盗難である。

ブラジル人の全てがそうではないが、日本人に比べると総じて手癖が悪い。それは、従業員が1人しかいないような小さなパン屋でさえも特別にカイシャ(会計)を設けていることにも伺える。そして、特別大きなチェーン店でもない限り、カイシャに家族以外の人間が入ることは許されない。販売員は、お客様からお金を受け取ってお客様の代わりにカイシャにお金を持っていくこともない。恐らく、お金には一切触れてはいけないという決まりがあるのだと思う。

こういうシステムだから、ちょっとした物を急いで買いたい時でも、ちょっと大きなお店に行くとやたらと時間がかかって面倒である。たった百円くらいの品物でも販売員が金額を書いた店内用のレシートを作り、それを持ってカイシャで支払いを済ませた後、受け取りはまた受け取り専門の場所でお金を払った証明のレシートを持っていくと、そこで、品物をチェックしてやっと渡してもらえる。。。

また、泥棒も多いブラジルだから、カイシャは完全に個室になっていて、カウンターの上部分ガラス貼りでお金を渡せる程度の穴が開いてるだけの所も多い。そして、ブラジルのお店には防犯カメラも必需品である。パソコンを置いているようなお店だとほとんど防犯カメラを設置している。これはもちろん防犯のためだが、従業員のチェックにも活用されていると思う。

こういうお国柄だけに、当初、うちの従業員達にも手癖が悪くないか神経を尖らせて観察していたものである。

洋服の販売員の女の子は、その辺は信用できるようであった。ただ、サロンがオープンしてからは、美容師に頼んでサロンのヘアケア用品をいろいろとこっそりお試ししていたが、もともと在庫がたいしてないサロンであるから、そんなことはすぐにわたし達に発覚していた。。。

ところが、ある日のことうちの人が激怒する事件が起きた。

当店では、洋服をオリジナルで製作していた。細かい流れは後日また記したいと思うが、オリジナルで洋服を製作する場合、もっとも重要なポイントとなるのが上手い縫製人を探すことである。わたし達も、なかなか良い縫製人を見つけることができず、1年以上探しに探しやっと見つけた縫製人だった。他にも数人の縫製人を持っていたが、うちの人は彼女らの電話番号を従業員の誰にも教えていなかった。というのも、ブラジルでは、縫製人を通してデザインを盗んだりすることは日常茶飯事の出来事だったからだ。コピーライトが存在しないのがブラジルである。

わたしは、その辺に疎く、あまり注意していなかったが、以前から販売員の女の子の行動に注意を払っていた彼が「彼女が縫製人の電話番号を探っている」というのを全然気にしなかった。けれど、それが事実となった。我が家に程近い縫製人によく洋服の修正をお願いしていたのだが、当時、うちの人のサウンドと照明レンタルの手伝いをしていた若い従兄弟に修正の洋服を縫製人に持っていくのをお願いしていた。彼女はその男の子に頼んで縫製人の電話番号を聞いてくれるように頼んだのだ。たまたまお店に居合わせた彼が、従兄弟が名刺を彼女に上げるのを目撃してしまった。彼の従兄弟は悪いことをしているという意識がなかったから、彼のいる前で、名刺を渡したのだが、販売員の女の子は後ろめたさがあったから、隠すように急いでそれを受け取った。これが不自然に見えて彼が問いただして判明。その後、縫製人もその事実をわたし達が知ったと気づき、うちの仕事を受けなくなってしまった。

最初、うちの人の危機感が理解できなかったが、縫製人がうちの仕事をしなくなったのが彼女がわたし達にとって後ろめたい感情があるからだと分かり、ブラジルの洋服産業の掟のようなものを学んだ。

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サロンの魔術

サロン部分をオープンしてから困ったことが起き始めた。以前、書いた売り子の女の子が「サロンの魔術」に捕りつかれてしまったのだ。

サロンをオープンするまでは、コミッションを稼ぐために洋服を売ることに夢中だったから、毎日のように何かしら陳列に手を加えたりしてその効果もあり、売り上げはなかなか伸びていた。

ところが、サロンをオープンして、美容師のフランクが時間がある時に彼女に「エスコーバ(髪セット)」をしてあげるようになって、どんどんそれがエスカレートして来た。「カラーの試供品がある」ことをフランクから聞いた彼女は、それを自分の髪に試して欲しいとわたしにお願いするから、「お客様のいない時ならいいよ。」というと、嬉々としてある日の朝、初めてのカラーを入れてもらっていた。けれど、そういうときに限ってお客様は来店するものだ。傍で彼女のお客様への対応を見ていると、自分の髪の毛に夢中で、早く買うか買えるかして欲しいのが見え見えで「これは、マズイことになってきたなぁ」と思い始めた。

彼女は20歳そこそこで、自分の稼ぎでは間違ってもサロンでカラーなんてできるわけはない。恐らく、「エスコーバ」さえもお金を払ってしてもらったことはなかったと思う。そんなシンプルな彼女に好感を持って採用したのだから。

カラーを入れてから数日立って、今度は髪の毛が痛んだと大騒ぎを始めて、まるでフランクのせいだとばかりに色々なトリートメントを暇さえあればやってもらうようになった。これには、わたし達も黙っておれず、彼女の行動にストップをかけるべく、「今後、全てのサービスに定価の一部の額をチャージする」ことを言い渡し、フランクにも、彼女が何か頼んできたら、まずはわたし達に確認をするように言うことを義務付けた。

サロンがオープンして一月ほど過ぎると、毎日のようにプロの美容師に何かしらヘアの手入れをしてもらった彼女はサナギからかえった蝶のように美しく変身できた。しかし、それは、外見だけに留まらず内面的な部分にも変化をきたしてきた。それまでは、謙虚な彼女だったが、美しくなったことで周りの男性たちにチヤホヤされることで、態度が横柄になってきたのだ。以前は、人に気軽に微笑みかける彼女だったが、やさしい微笑みはどこかに消えてしまった。

洋服の販売員は、月給というものがあるから、販売に対するコミッションはわずか5%に過ぎない。けれど、たいていの洋服屋ではコミッションは払っていない。売っても売らなくても同じ給料である。彼女はこれに反感を持って前の洋服屋も辞めたようだったから、うちでコミッションをもらえることをうれしく思い、日々販売に余念がなかった。ところが、サロンで働く美容師は、サービスによるが売り上げの35~50%のコミッションが手に入る。それを知った彼女は、5%のコミッションのために洋服を販売する気も失せたようであった。

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皆様へのお礼と挨拶

(牧場の管理人家族と)

いつもご訪問頂いている皆様、数あるブログの中からわたしのブログにアクセス頂きありがとうございます。

全然、気づきませんでしたが、昨日のジャンルランキングが10位ではないですか!(今日は下がってしまいましたが。笑)ほんと、びっくりしました。

ここ数日、妙にアクセスが多いし、読者登録も多いなぁって不思議に思っていたところです。

これから、ますますブログ人口は増えると思いますが、やっぱり長くコツコツ続けることがランキング上位になる秘訣ではないかなぁと思ったりします。

わたしの登録しているジャンルは、「キャリア・ビジネス」。このジャンルで書いている人達は何かしら仕事に有効なファクターのひとつとして「ブログ」を活用している方も多いと思います。わたしもゆくゆくは、自分のネットショップへ誘導するための主力ファクターとすることを狙い、このブログを始めました。なので、見出しもいろいろなネット検索用のワードが並んでいます。また、サイトを巡回しているロボットもブログには敏感に反応してマメに巡回してくれますので、このブログ、開始当初からいくつかの検索ワードでヤフー検索トップに躍り出ました。恐るべきブログパワー。

もしも、わたしのブログをご訪問の皆様で、商用、宣伝をお考えの方には検索ワード重要なポイントですよ!

これからは、このブログ経由でわたしのネットショップを訪問して下さる方のために、品物の方を充実しなければと思っています。また、このブログを通して、デザインの公募やアンケート等もとっていければと思う次第です。その際は、ご協力をよろしくお願い致します。今後も共、どうぞよろしくお願い致します。

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サロン部分オープン

洋服屋部分は先にオープンしていたが、それから約1ヶ月遅れでサロン部分もオープンにこぎつけた。

ブラジルのサロンはシンプルである。必要な什器といったらシャンプー台1つ、チェア2脚、トレー、待合用のソファくらいなもの。値段もピンきりでチェアなんか新品でも6千円くらいからある。けれど、安物は使いづらいしすぐ壊れるので、当店用にはほどほどのものをオーダーした。

他に必要なものといえば美容材料だが、特別にメーカーに来てもらって選んだのは「カラー」と「トリートメント」用の材料だけ。日本人のわたしとしては「パーマ剤は???」と思ったが、美容師のフランク曰く。「そういうのは、注文が入ってから買いに行けばいいんだよ。」その時は、「さすがブラジル。のんびりしたもんだ。」と、ある意味感心したが、後日その意味が分かった。

クルクルヘアーの人が恐らく50%は占めるブラジル人で、わざわざクルクルパーマをかける人なんかいないのであった。

しかも、ちょっと変わったサービスをオーダーする人は、必ず事前に相談に来て、価格交渉をして予約を入れるから薬剤を買いに行く時間が十分にある。

余計な材料を在庫する必要がないのは、懐具合の厳しいわたし達にとってはうれしい限りだった。そして迎えたオープン当日、お客様はないだろうと思っていたが、長いことサロンの看板を上げて工事していたのが功を奏してか、数人の髪セットのお客様があった。

日本人のわたしとしては驚きだったが、ブラジル人は髪セットをサロンでしてもらう習慣があるのだ。日本人がサロンで髪セットをしてもらうのは、結婚式の披露宴出席だとか、特別なパーティに出席する時くらいで、年に数えるくらいしかないと思うが、ブラジル人は、夜の外食や週末のお出掛けと、人前に出る時には余裕さえあれば必ず「escovaエスコーバ」という髪セットをしてもらう。それもあってか値段も平均R$10(約4百円)くらいと格安である。

どうして、この髪セットのサービスのことを「escovaエスコーバ」というか?「escovaエスコーバ」とは、もともとブラシのことをいう。クルクルヘアに生まれた女の子にとって、風になびく日本人のようなサラサラヘアは憧れで、年頃になるとブラシで毎日毎日髪をとかして少しでも真っ直ぐな髪の毛にしようと努力する。これに由来しているのではないかと思う。なので、通常の髪セットは、シャンプーした後にドライヤーとクルクルブラシを使ってのまさに「髪伸ばし」作業である。

サロンに来る時にはたいていみんな梳かした形跡のない髪の毛を後ろに一まとめにしたり、塗れたままの状態でやって来るのだが、美容師フランクの手にかかると、どんなクリンクリンのヘアでもあっという間に風になびくサラサラヘアになるから不思議である。そして、髪の毛をサラサラにしただけで同じ服でもいきなりお洒落に見えてくる。これが癖になるからそんなに余裕のない若い女の子でもR$10を握りしめて週末にはサロンへと足を運ぶ。

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ブラジル社会2(さよならトラック)

トラックを所有するというのは、ブラジル人男性だったら一度は必ず夢見ることだ。うちの人も例外に当たらず、アメリカにいる時からずっと願い続けていた。けれど、銃を突きつけられてトラックを盗まれたことで、トラックを所有することの危険性も十分理解できた。できることならずっと所有し続けたいトラックだったが、機会があったら売ることも否めないと自分に言い聞かせていたようだった。

しかし、普通にディーラーを通してこのトラックを売ろうと思ったら、間違いなく値崩れしている。トラックを盗まれた後できる限りのパーツは元に戻したが、運転に支障がない箇所で多少元に戻っていない箇所があった。

けれどいつも神様は彼の味方をしてくれる。損をすることなくトラックを売れる機会がやって来た。

正確に言うと、ブラジルでは今も尚健在の「物々交換」である。

我が家の牧場は、肉牛の繁殖を主にやっていたが、月々の牧場管理人のお給料を捻出するために「乳牛」を入れて、牛乳を売りたいと思い始めていた。これは、牧場管理人からの助言だった。未だ、牧場経営初心者のうちの人だから牧場管理人に教わることの方が多い。けれど、乳牛を買えるまとまったお金はなかった。そうこうしているところに運良く、トラックと乳牛を交換したいという話が飛び込んできたのだ。

これはまたとないいい話だと、わたし達はさっそく乳牛の下見に出掛けていった。売り手は、質のいい牛を購入して太らせた後、より高額に転売する業者だった。彼らの牧場には、それは立派な牛ばかりがゆったりと草を食んでいた。

彼らが交換したいという乳牛は、近所の賃貸牧場3箇所に点在していたから次々と案内されるままに牛の下見をして回る。もちろん、未熟者の彼には細かいところは分からないから、いつも牛を売買する時に価格交渉をしてくれる、牧場近くの町では知らない人は居ないバーの店主ルイーズが中間に入っている。彼は、バーを経営しながら牛の売買の仲介に立って紹介料をもらうことを副業にしていた。彼がどうやって知識をつけたのか知らないが、家畜のことをよく知っている。乳搾りに至っては、普通の人の2倍の速さでジャージャー見ていて気持ちいいくらいに搾り取る。わたしが絞ると、ノミのおしっこくらいしか搾り取れないから改めて感心する。ルイーズは、牧場経営初心者のうちの人が労働者と一緒になって汗水流して働くのに好感を持ち、いろいろと助言をくれたり面倒を見てくれていた。

乳牛を集めてもらって、乳房の付き具合をチェックして、欠陥のある牛をはずしてもらう。向こうは50頭こっちは60頭でネゴが始まった。

うちの人もわたしも、今日は取り敢えずの下見で、ゆっくりとネゴシエーションしていくのだろうと思っていたが、こちらが60頭と要望を出すと、「55頭でどうか?」とさっそく返事が戻って来た。全ては、仲介のルイーズが伝書鳩のようにあっちとこっちを行ったり来たりして直接話さない。「55頭」は、もともとも希望の数だったから、わたし達の心の中では「ラッキー!パン、パーン!」といった感じだったが、ここで喜びを出しては値切られるから、「まぁ、しょうがないな」といった表情を作り、「牛の移動はいつにするか」などの詳細を決めるために、ここで初めて彼らと顔をつき合わせて話を始めた。

ところが、驚いたことに、「今日中に引き取って欲しい」とのこと。
後から分かったのだが、乳牛を転売するために買ったはいいが、あまりの食欲に餌が追いつかず、賃貸牧場をした上に余分な食料を買い与えなくてはいかず、ほとほと困っていたらしいのだ。ということで、今日中にも牛達から開放されたいと言っていた。確かに特別の訳がなかったら、こんなに簡単に取引ができるわけがないからわたし達も納得していた。

早朝から出掛けて、話が付いたのは昼過ぎ。それから急遽牛の運搬のトラックを手配して全ての乳牛をうちの牧場に移し終わった時は夜の9時を過ぎていた。相手側の好意でゴイアニアへのバスが出ている町の停留所まで交換したトラックで送ってもらい、なんとか最終バスに間に合った。バスは意外に乗り心地がよく、一眠りするとゴイアニアの入り口に到着。そこからタクシーを拾って家にたどり着いた時には夜中の12時も回っていた。

通常のブラジルペースだと1ヶ月くらいかかることを一日で終わらせて、お荷物だったトラックが立派な乳牛55頭に変わったのは、わたし達には幸運な出来事だった。しかも、全ての乳牛が妊娠中であった。

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ブラジル社会1

盗まれたトラックを修理した後は、新たな盗難防止用の装置をつけて、牧場以外のお出掛けは74年ものフォルクスワーゲンビートル号が活躍していた。それでも、彼はできればトラックを運転したそうだった。男の人の車に対する思い入れは、車に興味のない女のわたしには理解できかねる。

ブラジルという国は、安全とソーシャルのために微妙なバランスを保たないと生活し難い。日本人には理解し難いのがこの「ソーシャル」。ブラジルはポルトガル王国の植民地であったために、一部のお金持ちの間では今も尚「上流社会」が存在している。一般庶民の成り上がり者は、この上流社会の仲間入りがしたくて上流社会に昔からあるしきたりのようなイベントを取り入れたがる。例えば、女の子の15歳の誕生パーティーがこの最も代表的なものだと思う。女の子は15歳で大人の社会の仲間入りが認められる。中流以上の家庭では、この日のために、大金をはたいて親類縁者だけでなく、両親の知り合いのお金持ちを招待して、娘が上流階級の男性に見初められるように大掛かりな誕生パーティを開く。

話がそれたが、国の機関の一部やちょっと洒落たレストランでは、半ズボンは不可だとか、洋服で人を判断するのがこの国の文化である。みすぼらしい格好をしていると舐められて軽い扱いをされるから、中流以上の人間は、ラフなTシャツとジーンズでもぴっしりアイロンをかけたものを着用する。派手な格好をしていればしているほど扱いが良くなるから、身分よりも派手な格好をしている人が多いのではないかと個人的には思ったりする。

ところが、貧乏人が人口の80%くらい占めている国なのだから、窃盗団からすると、「派手な格好をした人」=「金持ち」である。格好の「カモ」だ。たったR$10のために人殺しだってできる。守るべきものがないのだ。

そんなだから、わたしみたいにただでさえオリエンタルな容姿で目立ってる者には、それ以上に目立つような行動や過度のお洒落は危険であると思う。日系人は人口のたった1%にも満たないのである。しかも、ブラジルでは「日系人は日本への出稼ぎでお金を持っている」という定説が定着している。

これが、いつもうちの人とぶつかる問題だ。彼はわたしに人目を引くようなお洒落をしてほしい。一方わたしは、人目を引くと危険が伴うからほどほどのお洒落で押さえたい。お洒落してトラックに乗るなんて最も避けたい。ビートル君で出掛けると多少お洒落してても誰も気に留めないから気が楽なのだ。

まぁ、この問題もひょんなところから解決するのだが。(つづく)

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ブラジルの銀行口座

洋服屋をオープンして、わたし達はブラジルでの本当の生活を始めたような気がした。ブラジルに移って約1年半、ブラジルでの収入はゼロだったからだ。そうはいっても、洋服の支払いはたいてい、チェックで、しかも30日後払い。ちょっとまとまった金額の場合は分割払いになる。まぁ、R$10の品物でも分割払いがOKの国なのだから仕方がない。

売り子の女の子は、ショッピングセンターの洋服屋でも働いたことがあると言っていたので、接客は得意そうだったし、顧客リストを作るのにも積極的だった。毎日、飾り付けを工夫しては売り上げ向上に余念がなかった。

前にも書いたが、彼女はとっても純朴そうな感じで余裕のある生活をしていないであろう事は、彼女の洋服を見れば分かった。そして、うちの洋服を彼女には30%引きで販売できるというと、さっそく何枚かまとめ買いして、うれしそうに着て来た。

ブラジルの銀行は、きちんとした給料明細書を持っていないと口座開設できないとかで、彼女も最初の給料明細をうれしそうに持ち帰って、さっそく銀行口座を開いたようで、次の月には、姉や母親の洋服だと言って、分割払いのチェックを切った。

彼女が買ってくれるのはうれしいのだが、彼女のお給料を知っているわたしとしては、洋服だけにこんなに遣っても大丈夫だろうかと余計な心配をして尋ねたが、本人が大丈夫と言う限り売れないともいえず、密かに心配していた。

けれど、彼女はうちでの給料以外でも、知り合いの下着メーカーから安価に仕入れてはそれを知人などに売って小銭を稼いでいるようだったし、毎日接するにつれて、意外にしっかりもので若い頃からあれこれできる限りの小銭稼ぎをしてきたように見受けられた。

彼女の両親は離婚していて、彼女は、父親と他の兄弟と住んでいると言っていた。

アメリカにしろブラジルにしろ銀行口座は日本のような通帳はなく、口座は、インターネットバンクで履歴を見るか、ATMマシーンで履歴を印刷して見る。うちはインターネットバンクで履歴を見ていたから、ATMマシーンで履歴を印刷したことはなかったが、先月インターネットが使えなかった時にATMから履歴を取り出して、それにもチャージされたのにびっくりした。

また、日本では個人がチェックを持つことはめったにないが、ブラジルでは銀行口座を開設するとチェックを渡される。これが曲者で、チェックがあると分割払いなどができるようになるために、小額だからと油断して次から次にチェックを切って払えなくなる人が山ほどいる。2回支払いができないと口座は抑えられるが、支払いできなかったチェックを銀行が保障してくれるわけではないから、こういうチェックを受け取ると店は大損害を受けることになるのだ。

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美容師が決まる

洋服屋をオープンして、そろそろサロンの方の準備にかかり始めた頃、うちのお店の税金や雇用等を管理してくれている、日本で言えば税理士事務所と社会保険事務所が一緒になったようなところの社長から、大型サロンのオーナーを紹介してもらった。このサロンは、最近売上が落ち込んだために美容師を大幅カットしているということで、その中の一人で腕に定評があるという男性美容師を紹介してくれた。

さっそく彼に連絡を取って面接する事になった。当日現れたのは、これ以上ピアスするところはないだろうというくらい耳、鼻、口にピアスした小柄で細身の青年(?)だった。どうして?がついているかというと、一見して「ゲイ」だと分かったからだ。彼の名前はフランク。「ゲイ」独特のソフトな話し方で嫌味はなかった。というよりも、わたし達はできれば「ゲイ」の美容師を希望していたから、会うなり採用を前提の話しを始めていた。

なぜ「ゲイ」の美容師を希望していたかと言うと、ブラジル人は世界一嫉妬心の強い国民だとなんかの調査で聞いたことがあるが、イケメンの若い普通の男性美容師のいるようなサロンに男性は恋人や妻を通わせたがらない。日本だったら、恋人や妻の通っているサロンにイケメンの美容師がいるかなんて到底分からないが、ブラジルでは、恋人同伴でサロンに来たり、送り迎えは普通である。というか、サロンの雰囲気をチェックしに来ているようにも思える。

それに、アメリカの美容学校に通っている時に感じたが、「ゲイ」の美容師は自分自信が女性の心を持っているから、とってもきめ細やかなサービスができるのだ。

そして、前回もしたわたしの唯一の質問、「自分で使う道具とかハサミを持っているか?」は、もちろん「YES」であった。彼は、わたしが求めていた以上にほとんど全て必要とされるであろう道具は持っていたからサロンオープンも予定以上に早くできることとなった。

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