平成22年1月 日本教育学術新聞 第2385号(1月1日)

■大学を取り巻く国際交流の潮流

  JAFSA

中小規模大学と国際戦略/特定非営利活動法人JAFSA JFKプログラム・ディレクター 塩川雅美

JFKという活動

 現在、私は、JFKというプロジェクト・チームにおいてプログラム・ディレクターを務めている。JFKは、大阪、神戸、京都の主に中小規模大学の有志によるチームによって進められている。プロジェクト誕生は、JAFSA40周年を記念する一連の事業が2008年度に展開されるという計画が話題になった2007年に遡る。

 JAFSAは、今や、日本の国公私立大学の約三分の一が所属し、日本における国際教育交流についての最大にして最も歴史ある団体へと成長した。しかし、組織の拡大に伴って、当初の会員相互の「顔の見える」情報交換や、自発的な「手弁当の勉強会」に代わり、理事会や委員会で計画された「全国の会員対象」の研修や講演会が、主な活動となりつつあった。

 そんな中、2007年夏、関西学院大学を会場に、JAFSAの年間事業のメインに位置づけられている全国の会員を参加対象としたサマーセミナーが開催された。同セミナーの準備や実施に関わった関西圏のメンバーの中から、自主的に関西でもJAFSA初期の「参加者相互の顔の見える研修」を実施しようと声が挙がった。その結果、神戸市を開催地にした研修「JAFSA Forum in KOBE(略称:JFK)」を実施するための会員有志によるプロジェクト・チームが関西圏の中小規模私立大学の会員と、国立大学の若手職員をメンバーとして2007年12月に発足した。

 プロジェクト・チームは、本務を抱えながらも精力的に準備を進め、2008年7月に全国から約100名が集い、JAFSA Forum in KOBE(JFK)が開催された。この研修実施に向けて、メールや休日の「顔を合わせた」打ち合わせ会議で、研修内容の検討や、準備のための意見交換を重ねるうちに、メンバー間に強い連帯意識が生まれたことは言うまでもない。その連帯意識は、研修の準備や実施のために「業務に協働であたる」というプラクティカルな意識の共有にとどまらなかった。

 研修の分科会テーマ等を議論する過程で交わされた「中小規模大学の国際化とは?」、「国際交流部署の適正な人員配置とは?」といった課題は、中小規模大学の国際交流担当部署に所属する者として、メンバーが日ごろ抱える問題意識であったことから、「JFKが目指す研修は、中小規模大学の国際交流担当者が参加したい研修にしよう」という共通認識へと発展した。その時期は、「留学生30万人計画」や「国際化拠点整備事業(グローバル30)」が発表され、話題となった時期でもあった。

 そのような状況の中、JFK研修のテーマは、「どないやねん!? 国際化~Why Internationalization?~」と設定された。この関西弁の「どないやねん!?」には、「(国際化が)どうなっているのか?」と状況を尋ねるニュアンスと、「(国際化について、本音のところでは)どう思っているのか?」と真意を糺すニュアンスが含まれている。「グローバル30」に、手を挙げることのできる大手(大規模)大学と、「グローバル30」どころか、日々「国際化って、本当に本学に必要なのだろうか」と悩む中小規模大学があるという現実を踏まえて設定されたテーマである。それは、「国際化は、果たして全ての大学に必要なのか」、「留学生の受け入れ拡大は、果たして全ての大学が、取り組むべきなのか」といったテーマ設定におけるメンバーの熱い議論の中で出てきたものだった。

中小規模大学の「国際化」とは

 「個性輝く大学づくりの推進」といいながら、大学の規模や歴史、立地条件などの異なる要素を考慮せず、「今や大学にとって『国際化』は、避けて通れない課題である」ということ自体が、問題ではないのか。

 そもそも、各大学で異なるはずの「国際化」の在り様や、到達度合を確認するための指標の設定がなされないまま、「国際化しなければ」という強迫概念のようなものが独り歩きしてはいないか。中小規模大学であっても、個々の大学が目指す「国際化」は、本来、それぞれの大学で異なるはずであるし、そうあるべきである。

 必ずしも、「英語で受講できる科目を開設する」ことや、「外国籍の教職員を雇用する」ことや、「海外の交流協定校の数を増やす」ことのみが「国際化」ではない。

 中小規模大学が「国際戦略」について考える際、まず取り組まねばならないことは、「果たして本学には、国際化は必要か」という土台の十分な議論である。その土台が必要であるとなれば、「では、本学において、どういうところを“国際化したい”のか」を明確にし、「どの状態になれば、“国際化した”といえるのか」という目標の達成度を測るための指標の設定が必要である。

 例えば、「留学生の受け入れ数を現在の倍にし、その留学生の出身国数も現在の倍にし、多様な文化背景を持つ学生が共に学ぶキャンパスにする」というように、具体的に「国際化」が達成された時のイメージを教職員が共有できるようにする。このような具体的な目標を立てれば、自ずと、その目標を達成するために必要な手段が描け、その手段を実行するために必要となる人員、予算などが見えてくる。

 しかし、目標を設定しても、予算や人員を増やすことが容易でない場合が多々あるだろう。その場合に、中小規模大学“だからこそ”できることを洗い出すことを提案したい。一例を挙げれば、大きなキャンパスで、何処へ行けば、自分の困っていることが解決されるかわからない環境よりも、小さなキャンパスであっても、教職員の顔がよく見え、すぐに自分の困っていることの解決への助言や支援を受けることができる環境のほうが、留学生にはありがたい。そのようなキャンパスを実現するために、教職員が一丸となって、各自が学内の手続きなどについて熟知し、在籍留学生に自らが「ワン・ストップ・サービス」の担い手となって接することで、新たに予算や人員を投入して「ワン・ストップ・サービス」を設置しなくても、同様なサービスの提供が実現できる。このような取り組みは、在籍留学生の口コミという強力な留学生獲得のための広報につながる(在籍している日本人学生にとっても「面倒見の良いキャンパス」と評価されることにもつながっていく)。

 留学生の出身国数を増やすために、海外に出かける予算がないならば、日本語学校や、在日外国公館を訪問したり、在外日本公館に大学資料を小まめに送付することもできるだろう。中小規模大学“だからこそ”できることを洗い出し、できることから始めることは重要である。

 受入れ留学生数を増やすためには、宿舎の整備が必要であるとしても、自前では宿舎の建築などできないというのが現実であろう。その場合には、学生向けの宿舎を提供している不動産業者なども学生数の減少により、入居者確保が困難になりつつあるという悩みを抱えているのだから、業者と大学が契約を結び、「留学生の入居契約に際し、連帯保証人を要求しない」というような措置を講じるように働きかけ、留学生を悩ます「保証人問題」を解決し、宿舎を建設しなくとも、留学生が入居しやすい宿舎を増やしていくことができる。

 あるいは、留学生対象の「日本語教育」を自大学だけでは整備し得ない場合には、近隣の日本語学校や、地域の日本語ボランティアとの連携を検討してみてはどうか。中小規模大学の多くは、地域に根付いた成り立ちがある場合が多いので、地域の「資源」を活用した取り組みは地域にも歓迎されることが多いと思える。

 留学生の受入ればかりではなく、「日本人学生を海外に送り出したいが、海外との交渉を行える人員がいない」場合もあるだろう。幸いにも在日公館等の文化・広報担当セクションは、日本人留学生の確保に前向きなので、同セクションに「送り出し」プログラム開発への支援を相談することも検討するに値する。

 このように、「小さい」がゆえに「小回りがきく」という特徴を生かし、「顔の見える」交渉で、学外の組織や機関、地域を巻き込んでいくことができるはずである。

 ただし、複雑な決裁段階を経ないと意思決定ができないというような場合には、「国際戦略」の手始めに「迅速な意思決定」や「(交渉担当者への)権限の移譲」に取り組むべきである。海外協定校との交渉をうまく運ぶために、意思決定が迅速であることの重要性は、国際的な交渉の場で「与党内の見解の相違」という国際的に通用しない理由を挙げ、国際交渉に支障をきたしている新政権を見ても明らかである。

JFKの活動の進展

 ここで、再びJFKの活動について触れておきたい。

 2008年のJFKの研修は、「中小規模大学からの参加者」を想定して企画が進められ、多くの参加者が実際に中小規模大学から参加されたこともあり、参加者の多くから「顔の見える」ネットワークの重要性を再認識したと感想が寄せられた。また、JFKプロジェクト・チームのメンバー自身も「大学を越えて事業を成し得た」達成感を強く感じ、「自分の所属大学の後進にも類似の体験を経験させたい」と思うようになっていた。

 その結果、2009年度も引き続き、関西における自主的な研修の企画、実施プロジェクトとして、JFKの活動が継続されることとなった。人事異動もあり、メンバーの入れ替わりも若干あったが、同チームは中小規模大学の職員を中心に構成され、「中小規模大学の参加者のための研修」の企画という方針は継承された。変化したものは、研修実施に協働(連携)して取り組むというJFK誕生の契機から、「お互いの後進を協働で育てる」という新たな目標が加わったことと、プロジェクトの略称はJFKのままであるが、フルネームをJAFSA Forum in KOBEからJAFSA Forum in KANSAIへと変更したことである。

 したがって、JAFSAが、「国際教育交流担当者が必要とする知識等の修得を目的とした研修」を実施しているのに対し、JFKでは、「国際教育交流担当者ではない方でも聴いてみたい講演」などを実施すると年間計画のコンセプトが立てられた。なぜなら、必ずしも、研修を受講した参加者が「国際教育交流担当者であり続ける」保証もないのが現実であり、むしろ、大学に勤務する者として、たまたま現在のポジションが国際教育交流関連であるがゆえに、JFKの研修を受講するとしたら、研修で見聞きされたことが、部署を異動しても役立つものであるような研修にしたいと、メンバーの意見が一致したからだった。

 こうして、09年4月は「英文E‐Mailの書き方」、6月は「イギリスの大学職員事情」、7月は「勇気を持ってSpeak Out!」(日本人の英語が、英語を母語としない人の英語の中で、最も通じるという研究の講演会)、9月は「関西外国語大学の国際戦略」などの研修を平日の夜に実施した。

 宿泊を伴う研修としては、8月に「(国際交流担当の)初任者研修」を1泊2日で、12月には2泊3日で「国際化を越えて」というテーマのもと、俯瞰的に日常業務を見直し、「国際交流担当者」としての行動指針のヒントをつかんでいただくような研修を実施した。これら一連のJFKの研修への参加回数の多い若手職員から、所属大学内であっても滅多に顔を合わせない同僚よりも、研修参加者同士のほうが顔を合わせる機会が多くなり、「国際交流担当者」としての共通の日常業務に関する情報交換から、徐々に「協力して、勉強を続けよう」という機運が生じてきているという嬉しい報告をいただいた。中小規模大学の場合、特定部署の研鑽のためだけに外部講師を招いたりすることは予算的にも実現しにくいが、いくつかの大学が協力して講師を招き、研修を実施することもできるということを、研修参加の若手の方々が発見してくれたことは、大きな成果であった。

 中小規模大学が、「国際戦略」を練る場合、自大学のみの資源で実現できないことも、他大学との連携やチームを創ることで実現できる可能性があることを再度、確認いただきたい。仮に、学生募集の側面では競合する大学間であっても、「国際化」の側面では、補い合うこともあってもよいのではないか。チームを組むことや連携することは、必ずしも「仲良しグループ」になることと同じではない。目的達成のためにお互いが、足りないものを補うために連携をしているということを認識し、それぞれの目的を達成し、成果を出すことが重要である。

目指せ! ダイヤモンド

 「留学生30万人計画」を受けて、多くの大学では、どのように取り組んでいこうかと検討されていることと拝察している。

 今更ながら恐縮であるが、「ダイヤモンド」は小さくても手に入れたい宝石である。昨今の「安売り」現象がはなはだしい小売業界などを見ても、大手メーカーがプライベート・ブランドの製造を請け負って品質の保証をしたり、デザインを有名アーティストに依頼するなどのオリジナリティを付加しないと、単に価格が「安い」だけでは、商品は売れていない。

 留学生数を増やすために、限られた財源から授業料の減免などを行っても、「留学して良かった」と留学生が思える教育内容や、受入れ環境(資金を投じるハード面だけではない)の整備がないと、本来の留学目的ではない留学生を呼び込んでしまう。「英語での授業」も授業内容を日本語に翻訳すると大学で教授するレベルではない内容の授業であるならば、「学問の質」に疑問符がつくこととなる。

 「留学生30万人計画」も、現在、目の前にいる留学生をきちんとケアし、満足度を上げることによって少しずつではあろうが、数は伸びてくる。仮に、大手大学のみで、大量の留学生受入れをし、「30万人」という数字を達成しても、日本の高等教育機関の9割を占める中小規模大学の「顔(存在)」が世界に認識されないということを、「国際戦略」を考える機会に思い起こしていただき、「小さくても手に入れたいダイヤモンド」となる戦略を練っていただきたい。

 

平成22年2月 第2389号(2月3日)

大学を取り巻く国際交流の潮流  2

  JAFSA

 国際教育交流のローカル戦略 中小規模校は地域コンソーシアムで対応せよ

広島経済大学教授兼国際交流室長 ジョージ・R・ハラダ

 日本の国際教育交流への挑戦

 

 2008年に発表された「留学生30万人計画」は、優秀な留学生を戦略的に獲得することで2020年までに30万人の留学生を受入れることを計画している。また、従来に引き続き、アジアをはじめとする諸外国に対する知的国際貢献等にも努めていくことになっている。

 これまでと異なるのは、留学生へのリクルーティングにはじまり、大学卒業・修了後の社会への受入れ推進等を含むグランド・デザインを提示していることである。そのため、文部科学省の他、外務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省といった各省庁が連携してこの計画を推進していくことになっている。

 このような「グローバル戦略」は、ヨーロッパのボローニア・プロセスによる高等教育の国際戦略(広域内での高等教育統一基準、単位互換システムの設置、学生の流動化への推進等)、オーストラリア、シンガポール、中国、韓国などの国際教育交流への積極的な取り組みに影響されている。また、中国やインドからの留学希望者増加(OECDの統計によると2008年には300万人以上の留学希望者があった)というマーケットの需要拡大の動き、国内の少子化問題による大学に入学する18歳人口の減少や団塊世代の大量退職による人材不足を補充するといった国内事情から国際教育交流の「グローバル戦略」を考えるようになったともいわれている。いずれにしても、国を挙げての動きであるため、関係者である大学等は真剣に考えなければならない。

 

 中小規模大学と国際戦略

 

 世界のどの町に住んでいても、学業やキャリア形成のための準備に加えて、国際知識を身に付けること、多文化環境に適応し働く姿勢やそれに見合うスキルを身に付けることはますます重要になっている。欧米ではこれを重視し、大学カリキュラムの国際化、国際交流プログラムの充実化、そして大学プログラムの国際化を計るための指標を確立して人材育成のために活用しようとしている。

 国際化が急速に進行する中、日本の大学とりわけ中小規模大学はどう国際教育交流を進めていくべきなのか。個々の大学には「国際化を目指すのか否か」という問題もあるが、ここでは、既に国際化の必要性のある大学、または具体的に留学生受入れに着手している大学に向けていくつかのポイントを提示したい。

 (1)国際教育交流は大学全体で進めていくことが望ましい 

 中小規模大学に限らず、学生を姉妹校に派遣することや多数の留学生を受入れることだけでは、大学での国際教育交流の効果を生かし様々な方面でその利点を波及させることができない。国際教育交流は、大学のミッションに直結し、大学の目指す目標に貢献するのが理想的である。

 (2)質の高い国際教育交流は単独では困難である

 中小規模大学が単独で「質の高い」国際教育交流のプログラムを開始し、その後の維持・発展させていくには、多くの資金及び人間、機関・団体の協力によって初めて可能になると考える。まず、留学生受入れに関しては、大学周辺地域の理解が必要であろう。大学独自の宿舎がなければ、民間のアパート等を借りなければならない。公営宿舎の空き部屋を利用するには、地元自治体の協力を仰ぐことになる。

 また、留学生がアルバイトをできるだけ控え、勉学に集中するためには、奨学金の獲得は欠かせない。そうすると自治体の国際センター等からの留学生用の奨学金、企業からのスポンサーシップ、奨学金支援を仰ぐことになる。留学生が地元企業に就職を希望するのであれば、企業の理解が必要になる。要するに、コミュニティー全体の協力は必要不可欠であり、大学と一緒に国際化を目指していくことになる。

 次に、キーパーソン及び国際交流に携わる良いスタッフの存在が重要になる。「質の高い」国際教育交流を遂行・維持していくためには、ある程度の専門知識が必要である。豊富な海外経験、語学力と国際交流全般の知識を備え、大学のレベルそしてミッションに合わせて国際教育交流活動を発案し統括できるキーパーソンが必要となる。また、海外留学を進めるスタッフ自身に留学経験がない場合、残念ながら留学生に対し適切なアドバイスを期待することは難しい。また、業務のモチベーションも留学経験の有無で随分異なる。留学経験者は自らの経験を踏まえ、受入れている留学生の立場に立ち適切な判断ができる。しかし、このような専門知識を有するスタッフが国際交流関連部署に配置されても大抵は数年間で別の部署に異動になってしまう。このようなキーパーソンや良いスタッフがいれば、できるだけ専門性を尊重し残すべきである。

 (3)ローカル戦略から国際戦略に発展させていくこと

 国際教育交流を遂行・維持していくためには、前述のような要素が必要になると考える。しかし、中小規模大学は単独でカリキュラムの国際化を進め、国際交流のプログラムの充実化を図るような余裕は現状から考えてほとんどない。そこで、一つの提案は、ローカル戦略である。広島の実施例を挙げてみたい。一九九八年に創設された広島地域留学生団体育成支援協議会というコンソーシアム型の組織は、地元大学、自治体組織、留学生の代表等で構成している。各大学の代表は学長ではなく、実際に留学生の窓口業務に携わっている担当者である。

 この組織の当初の目的は、留学生が広島県下のどの大学に入学しても同様の情報・サービスを受けられ、できるだけ満足して勉学に集中できる環境を作ることであった。この目的を達成するため、広島県全体の国際教育交流の認識及び留学生受入れインフラ・システムの向上を図り、国際教育交流を始めようと考えていた大学に対して、実績のある大学からノウハウを提供してもらい協力関係を作り上げた。

 そして、留学生のリクルーティングのための留学フェアを実施し、留学生問題情報や解決策を交換してきた。このコンソーシアムの最大の事業は毎年、県下の大学の留学生を一同に集めて「広島地域留学生会」の総会を開催し、スポーツ大会を実施することである。このように、地域全体で「質」の高い国際教育交流を目指してローカル戦略を行うことで、単独でできないことを他大学や他団体の協力を得ながら実現する方法もある。

 次の過程として、段階的に国際教育交流に関する地域内での重複活動を削減し、一元化していくことである。さらに進んで、コンソーシアムを通じて「国際戦略」を策定し、海外にある他のコンソーシアムと国際協定を締結すれば、協定パートナーを増やすことができ、様々なバリエーションの国際交流を実施できるようになる。重要なことは、互いに協力し合いながら、個々の大学は常に大学自身のミッションや教育目標に沿って発展していくことである。

 

平成22年2月 第2391号(2月17日)

大学を取り巻く国際交流の潮流  3
JAFSA
国際化に決まった形はない JFKの取組をふり返る

大阪工業大学国際交流センター課長/摂南大学総務課国際交流担当課長/
常翔学園総務部国際交流担当課長 余田勝彦

 現在、私は「大阪工業大学国際交流センター課長」以外に、摂南大学、そしてそれらを設置している(学)常翔学園総務部の国際交流担当の肩書きを持っている。三種類の名刺を出すと、妙な誤解をされる人もいるが、現時点ではそれぞれの業務がそれほど密度を持たないことを意味するだけで、「偉いんですね」などと言われると、苦笑いを浮かべるしかない。私の属する大学は、国際交流の分野では、全体としてまだまだ後発に属している。
 さらに言えば、約三年前、法人本部に新設された国際部門への異動が発表されたとき、私自身が「これは一体何をする部署ですか?」と当時の上司に尋ねたほど、この種の事業の認知度は低かった。そんな私にとって、「教育学術新聞」の新春号「中小規模大学の国際戦略」で、塩川雅美氏が述べているJFK(JAFSA Forum in Kansai)のメンバーとして関西の有志と国際交流担当者のための研修企画活動を伴にさせて頂いたことは、この上ない幸運だった。JFKの活動、そのメンバーたちから得たものは単に情報のレベルに留まらず、そのインパクトを私自身の所属機関の現状にぶつけることで、様々な可能性を検討し、方向性を模索することに終始したと言ってよい。
 塩川氏の記事を補足するわけではないが、JFKは時間の経過とともに方向性が収斂されていったのであって、当初からビジョンが一貫していたとは思わない。塩川氏がキーワードとして挙げていた「中小規模大学」にしても、その萌芽は認められたものの、活動の深化とともに明確になったものだ。
 JFKは高邁な理想に支えられていたわけではなく、それぞれ思惑も立場も違うメンバーのインタラクションをエンジンにした活動であった。メンバー間の関係はある種ルースで、同時に濃密であった。私自身、日本あるいは関西の国際教育交流の発展を純粋に願っていたわけではなく、まずは給料を出してくれている組織に何を持って帰れるか、ということを第一命題に置いていた。JFKは、そう公言することを憚る必要がない「本音」の活動であった。真剣に利に聡くあろうとすることと、周りから利己的には思えない行動を取ることは、相容れないものではない。むしろ打算をベースにして行動している人間は軸があまりブレない、そこを代表の塩川氏が上手にコーディネートして活動を主導していったと考えている。逆に、そのような「本音」の活動であったがゆえに、その存在が固着化し、インパクトが薄れそうになった時点で、あっさりと解散することになった。
 あくまで私見だが、JFKの活動を通して何かメッセージがあったとすれば、「『国際化』に決まった形があるわけではない、そこにどのような意味を込めるかはそれぞれの大学が、おかれた環境やミッションから当然に導き出される必要性に応じて考えればいい」という当たり前のことである。戦略的に「中小規模大学」というコンセプトを打ち出していたが、規模の大小はそれほど重要なことではない。旗艦大学や先鋭的な取り組みをしている大学に規範を求めても、日本のほとんどの大学には意味がない。「うちの大学は立ち遅れていて」と申し訳なさそうに言う担当者には、「『やらない』ということも立派な選択肢ですよ。きちっと筋を通していれば、それはそれでカッコいい」と勇気付けたかっただけである。
 最後の研修テーマ「『国際化』を超えて」は、「すべての大学を押し並べて、国際交流とか国際化とか統一的に語れるものなんてない」というJFKの基本スタンスを繰り返したものと、私は理解している。
 結局、自ら考えるしかないのである。
 話を現在の職場に移し、サウジアラビア王国(KSAKingdom of Saudi Arabia)に関連して感じたことを述べてみたい。
 大阪工業大学の国際交流センターは、昨春に開設されたばかりで、時を同じくして、KSAからの正規留学生10人が入学したことは、私たちにとって幸運なことであった。アブドーラ国王奨学金の受給生である彼らは、経済的には恵まれている。しかし大学生活の第一歩は、軟着陸とは言い難いものだった。お祈りの場所、食物の禁忌への配慮、リメディアル教育など、考えられる範囲で準備はしていたものの、学業面では想定を超えるインパクトがあった。サウジアラビア王国大使館などの協力も得ながら、徐々に体制を固めていく中で、新設の国際交流センターは随分鍛えてもらった。
 このような縁もあって、先日リヤドで行なわれた高等教育国際展示会に視察に行く機会を得た。国を挙げての一大イベントには世界各国の大学等機関のブースが350ほど立ち並び、高校からバスを出しているのか、サウジの若者が団体で来場し、リヤド国際展示センターは熱気で満ちていた。
 大阪工業大学はブースを構えてはいなかったが、KSAの大学を中心にブースを回って情報交換を行なったほか、サウジアラビア国営ラジオ局の生放送のインタビューを受けるなど瑣末なエピソードも含めて、大変刺激的な経験をすることができた。ここで、一つの経験を伝えたい。
 展示会では、米英には及ばないまでも、日本のブースはそれなりの賑わいを見せていた。KSAの若者の動きにどのような志向性があるのか観察する中で、少なくとも「日本」という閉域で私たちが見聞きして、当然のごとく受け止めているコンテキストを彼らは共有していないという当たり前の事実を確認した。「無関心である」と言ってもよいかもしれない。
 ブランド大学が苦戦をしていたという意味ではなく、むしろその逆なのだが、単純に集客を高めるためにしっかり工夫をしている結果だということである。日本国内での大学のランキングや序列は、彼らには意味を持たない。言ってみれば、別のシステムが働いている。それだけのことである。
 私には、日本の見慣れた風景を引き摺るような国際交流や国際化にそれほど興味はない。そのような景色の綻びから、荒涼たる砂漠の影を見たい。そのための手段として、「国際」という外部性を活用したいと考えている。
 例えば、本来国内学生を対象として構築された教育プログラム本体に極力手を加えず、様々な工夫によって外国人留学生の「異質性」を消去することを一つの留学生受入の手法としたとき、それは不可避的に外国人留学生を「準日本人」として同化していくことではないか。逆に、その「異質性」を消去することを回避し、そのインパクトを維持することはできないか。最近流行りの英語でのコースとは違う観点から、留学生受入の在り方の可能性を今はぼんやりと感じている。
 日本の大学をある種の閉塞感が覆っているとしたら、「国際」はそれを破る契機に成りえるのでは、そんな予感がある。
 そんなわけで、私は今の仕事が楽しくてしかたないのである。
 

平成22年2月 第2392号(2月24日)

■大学を取り巻く国際交流の潮流  終

  JAFSA

 効果的な広報活動を 海外ネットワークの活用

NPO法人JAFSA(国際教育交流協議会)事務局長 高田幸詩朗

 JAFSAは大学の「国際部門」のネットワーク組織としては日本最大で、200以上の日本の大学と韓国三大学、約30の教育関連団体・約300名の個人により構成されている(会長=白井克彦早稲田大学総長)。活動内容を「国際」に特化することで1968年以来40年を越えて活動が継続されているのは、2010年の現在においても、大学で「国際」がインターナショナルからグローバルに言い方が変わろうとも、常に古くて新しい問題として認識されている証拠であろう。

 大学規模の大小や学部の種類により、海外大学との交流協定や、外国人留学生の受け入れや日本人留学生の海外派遣などのさまざまなテーマについて、一大学のみで解決できないこともままある。その場合に情報交換の主たる手段として、JAFSAのようなネットワークが役に立つ場合が多い。そうなると日本の中でネットワークが重要なのは言うまでもないが、まして海外とのネットワークを求めるのであれば、その機会を利用しない手はない。海外にはいくつかの大きなネットワークが存在するが、ここでは主な二つ(NAFSA・EAIE)を紹介しつつ活用方法を考える(JAFSAウェブも参照www.jafsa.org)。

 JAFSAはNAFSA等の大会にできるだけ多くの大学の参加を期待している。そのメリットは以下NAFSAの紹介の中で述べるが、海外の協定校を回る出張費や手数、期間などを考えると、NAFSAやEAIEの年次大会開催期間である一週間は密度が濃い。また参加している世界中の担当者と一同に会える機会は滅多にない。一方、大学の経営側の立場にたっても「人材育成の宝庫」とも言うべき機会なのである。

 

 一、NAFSA(Association of International Educators)

 

 NAFSA(ナフサ)は米国を拠点とし、国際教育交流を推進する目的で1948年に設立された非営利団体で、JAFSAは同種団体のパートナーとして、長年NAFSAと協力関係にある。 NAFSAは会員制度により運営され、世界150か国、3500以上の教育機関や団体、政府機関、民間企業などに所属する約1万人の教員や職員、専門家などにより構成されている。主な活動として、国際教育に携わる人の専門性の向上や能力開発、会員同士の情報交換やネットワーク、留学生交流の推進や政策への提言、海外留学アドバイザー向けの助成金の授与などを行っている。また、国際教育や留学に関連した五つのコミュニティがあり、それぞれの分野で知識の交換や研修などが行われている。

 NAFSAの大きな特徴は毎年一度、5月末から6月初旬に一週間開催される年次大会である。会議や研修、展示、ネットワーキングのためのさまざまなイベントが催され、世界各地から7~8000名に上る参加者が集まる。特に2008年米国ワシントンDCで開催された60周年記念大会の参加者は、世界100か国以上から8000人を超え、他に例を見ない大規模な国際教育交流大会となった。今年はミズーリ州カンザスシティで開催される。

 (一)NAFSA年次大会参加のメリット―ネットワーキングと人材育成

 大会自体の参加費はNAFSA非会員の場合、日本円にして7万円近くかかる。しかし、その費用に見合う数多くイベント、たとえば講演会やセッション、ネットワークのための会議、レセプションなどに参加する機会が提供されている。ワークショップのように、別途費用がかかるものもあるが、かなり幅広い情報収集が可能である。また、世界中の大学から担当者が集まっている場合が多く、複数の協定校担当者との打合せも大会期間中に実施できる。

 もう一つの側面は人材育成である。参加した大学担当者は世界からの国際教育交流担当者と直接接することにより、コミュニケーション能力・説明能力・交渉能力がつく。しかも、内容が業務に直結するものばかりなので、担当者は専門知識や自校の状況を的確に把握しておかねばならない。

 (二)NAFSA展示ブース出展のメリット―その広報効果

 NAFSAはかなり巨大な展示ブースのスペースが用意されている。出展にはNAFSAに直接申し込む方法もあるが、JAFSAおよび(独)日本学生支援機構(JASSO)が日本の大学に対して取りまとめブースを運営しており、各大学に募集をかけている。参加経費負担、申込時期、特徴は各々違うが、各大学の実情に合った出展をすると効果的である。一参加者としてNAFSA大会に参加する方法もあるが、展示ブースを持つことにより大会参加者から連絡が入る可能性が高くなり、大きなメリットとなる。8000名近い大勢の参加者の中で、こちらが会いたいと思っている参加者を探すのは容易ではない。その時にもブースの役割は大きく、また広報効果も高い。

 (三)NAFSAでの「自校」効果的広報の仕方

 展示ブース会場において、日本の大学が独立してNAFSAに申し込んでも、またJAFSAやJASSOに申し込んでも、だいたい位置的に「日本村」が形成されるように固まったところにある。参加者はまず「世界的にどのエリアか、どの国か」とブースを訪問する方向性を定め、出展している各大学へ訪ねて行く。日本に興味がある大学関係者は「日本村」に立ち寄る可能性は高い。その中で参加者が何を求め、どういう学生を送り出したいのか、どういうカリキュラムに興味があるのかに対し、自分の大学の特徴を明確に伝えれば、効果的な広報ができる。

 (四)JAFSAセッション・Japan SIG(Special InterestGroup)の活用

 JAFSAでは毎年会員から応募者を募り、NAFSA年次大会のテーマに沿ったセッションを大会時に設けている。話題のテーマの議論を通じ、世界の参加者がそれについてどう考えているのか理解できる場である。また、Japan SIGはNAFSAが設けている分科会で、日本や日本の大学に興味がある世界の担当者が集っている。会期中のセッションへの参加も価値がある。

 セッションでの発表や、参加して意見を交換することも「研修」と位置付ければ、大会の美味しさは何度でも味わえ、また参加させる側としても満足できるコストパフォーマンスとなる。

 

 二、EAIE(European Association for International Education)

 

 EAIEは1988年に設立された欧州の国際教育交流団体で、欧州の会員が中心である。年次大会は毎年各国持ち回りで行われている。今年はフランスのナントで九月に開催される。EAIEはNAFSAほどではないが、それでも3000人規模の参加者が集まる。すでに、欧州に協定校がある大学も、これから探す大学もEAIEはよい機会になる。活用方法はNAFSAとほぼ同様である。

 両大会を例に挙げたが、大会において必ずしもセッションに出る必要はない。分担し、協定校との打合せにのみ時間を取っている大学関係者もいる。「国際交流団体の国際連合体」の大会の機会を活用すれば、中小規模の大学で予算をなかなか取れなくても、コストパフォーマンスは極めて高い。インターネットが発達しているからこそ、敢えて対面で関係を作っておけば、その後のコミュニケーションは格段にうまくいくだろう。JAFSAはそのコミュニケーションをより促進したいと考えている。

 

 JAFSA(会長=白井克彦早稲田大学総長)は、主に学生の国際教育交流に関する情報交換や研修等の活動を行っているこの分野唯一のネットワーク組織で、2008年に設立40周年を迎えた。会員(正会員・団体)数は、国公私立大学を中心に、232大学・団体(2009年12月16日現在)に上る。http://www.jafsa.org/

 

 

不適合ブロック塀、2498校で確認 撤去や補修に向けてコストが課題に

大阪府北部を震源とする地震から2日で2週間を迎える。小学校のブロック塀が倒れて女児が死亡した事故を機に、全国の学校でブロック塀の安全点検が進んでいる。建築基準法施行令の基準に合わない疑いがあるブロック塀は少なくとも2498校で確認され、今後さらに増える見込みだ。学校の耐震化では校舎などが優先され、塀の危険が見過ごされてきた形だ。撤去や補修に向け、コストが課題になる。
これだけではないはず。行政任せにせず地域やPTAの目も活かしてこれだけはしっかりと点検して欲しい。 子どもの安全が第一です。 校舎や他の通学路の安全点検も抜かりなく。