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人間関係にとっていたわりの心は非常に大切なのですが、このいたわりの心の表現は結構むずかしいのです。
以前、読売新聞に、向井万起男さんのエッセイが載っていたのですが、向井さんは会う人ごとに「お寂しくないですか」と言われるそうです。なにしろ向井さんの奥さんは向井千秋さんという宇宙飛行士でNASAに住んでらして、向井さんとは離ればなれの生活ですから。

向井さんはそう言われる度に適当な返事をしているけど、内心では「さみしくないわけないじゃろが」とムッとするそうです。つまり、みんなは向井さんにいたわりの言葉をかけたつもりで、反対に向井さんの心をチクリチクリと傷めているわけです。


また、ある身障者のお子さんを毎日車椅子で学校へ送り迎えしているお母さんに、出会う人たちが「大変ですね」と声をかけるそうです。声をかける人はいたわりの心のつもりでしょうが、そのお母さんは、自分は大変とも思ってないのに、その言葉で子どもが「自分は母に大変な負担をかけているんだ」と思うようになるのがとても心配だと言われているのを耳にしたことがあります。


このように人間関係にとっていたわりの言葉は、その使い方で人を傷つけることがあります。簡単な「頑張ってください」とか「大丈夫ですか」という言葉でも、言われたほうでは腹が立つこともあります。なぜ同じ言葉で勇気づけられたり、腹が立ったりするのでしょうか。


それは心にあるのではないでしょうか。言う人の心の位置です。
自分は満たされている側、相手は不足の側、自分は健康な側、相手はつらい側というように自分を相手より優位な側において、いたわりの言葉を使うことに問題があります。ひょっとしたら相手をいたわることで、自分に優越感を感じていたりすることがあるやも知れません。
人間関係の機微はここにあります。人はあわれみや見下しを受けることを最も嫌います。差別を敏感に感じ取ります。
人間関係にとって大切なのは、いたわる側もいたわられる側もなく、頑張って生きている人を賛嘆することにあるのではないでしょうか。


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