「俺はな、学問つうもんがないから、
上手い事は言えねえけれども、
博がいつか俺にこう言ってくれたぞ、
自分を醜いと知った人間は、
決してもう、醜くねえって・・・」
(第42作「ぼくの伯父さん」)
若いころの寅さんは、
「おう、労働者諸君!」
とか言って威勢がよかったんですが、
歳くった寅さんは、妙にものわかりがよくなって、
甥っ子・満男の恋の指南役をするまでになったのが、
第42作「ぼくの伯父さん」である。
泣かせる台詞がある。
「私のようなできそこないが、
こんなことを言うと笑われるかもしれませんが、
私は甥の満男は間違ったことをしてないと思います。
慣れない土地へ来て、
寂しい思いをしているお嬢さんを慰めようと、
両親にも内緒ではるばるオートバイでやってきた満男を、
私はむしろよくやったと褒めてやりたいと思います」
満男の一途な恋に、
寅さんは自分自身をダブらせていたのかもしれない。
そして。
この作品では、
徳永英明の楽曲が効果的に挿入されていた。
それまで、正直、
徳永英明という歌い手をよく知らなかったけど、
この挿入歌を聴いて、ファンになった。
満男の魂の彷徨の場面にこの曲がよくマッチングしていて、
山田洋次監督のセンスに脱帽したことを覚えている。
徳永英明の挿入歌は、『Myself~風になりたい~』です。