ヒートショック

 

〜身体の組成と水分量の関係から考える傾向と対策〜

 

 

  ヒートショックが起こりやすい人の特徴

 

 ヒートショックは、以下のような特徴を持つ人に起こりやすい現象です。

 

1. 高齢者

 ・サルコペニア: 加齢に伴い筋肉量や筋力、身体機能が低下している状態の人。
 ・フレイル: 加齢に伴い体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度の低下、

  身体活動量の減少などが見られる状態の人。
 ・骨粗鬆症: 骨内の水分量が減少し、全体の水分バランスが崩れている人。

 

2. 痩せ型の女性

 ・筋肉量が少なく、体内の水分量が少ないため、体温調節能力が低下しています。

  このため、急激な温度変化に適応しにくく、ヒートショックのリスクが

  高まります。

 

3. 高血圧や糖尿病、動脈硬化、心疾患を持つ人

 ・血管が硬くなっているため、温度変化による血圧の変動に対応しにくい

  傾向があります。
 ・心疾患がある場合、不整脈や心不全が発症するリスクも高まります。

 

4. 飲酒後の人

 ・飲酒により血管が拡張している状態で入浴すると、さらに血圧が低下し、

  失神のリスクが高まります。

 

5. 小児や赤ちゃん

 ・大人と比べて筋肉量が少なく、相対的に脂肪の割合が高いため、

  体内の水分含有量が低い傾向にあります。その結果、脱水状態になりやすく、

  体温調節が不十分でヒートショックが起こりやすくなります。

 

 

  ヒートショックを防ぐための対策

 

1. 環境を整える

 家全体の温度差を減らすことが、ヒートショック予防の基本です。

 特に、脱衣所や浴室、トイレの温度管理を徹底しましょう。


 浴室暖房の使用

 ・お風呂に入る15分前に浴室を暖めておくことで、寒暖差を減らせます。


 トイレ暖房器具の設置

 ・トイレが寒い場合は、暖房器具を設置するか、暖かい服装で使用しましょう。


 廊下や部屋間の暖房

 ・廊下やリビング、寝室間の温度差を少なくするために、適切な暖房を

  工夫しましょう。

 

2. 入浴方法を工夫する

 冬場の入浴はヒートショックが発生しやすい場面の一つです。

 以下のポイントを心がけましょう。


 適切な湯温

 ・お湯の温度は40℃以下を目安にしましょう。

  熱すぎるお湯は血圧を急降下させる原因となります。


 適切な湯量

 ・できるだけ半身浴を心がけましょう。


 入浴の順序

 ・いきなり湯船に浸からず、まずは手や足にお湯をかけて体を慣らしてから

  入りましょう。


 長湯を避ける

 ・入浴時間は10~15分を目安にし、体に負担をかけないようにします。

 

3. 水分補給を意識する

 冬場は汗をかきにくいため、体内の水分不足に気づきにくくなります。

 脱水状態はヒートショックのリスクを高めるため、以下を実践しましょう。


 入浴前後にコップ1杯の水

 ・血液の流れをスムーズに保つため、入浴前後の水分補給を習慣化しましょう。


 日中もこまめに飲む

 ・高齢者や子どもは喉の渇きを感じにくいので、周囲からの声掛けが大切です。

 

4. 筋肉量を維持・増加させる/骨粗鬆症対策を行う

 筋肉量を増やすことは、体内の水分量を増やし、体温調節能力を高めるために

 非常に重要です。

 特に高齢者や痩せ型の女性には、次のような運動をおすすめします。


 ウォーキング

 ・1日5,000~7,000歩以上を目安に歩くことで、筋肉と血液循環を活性化します。


 筋力トレーニング

 ・スクワットや軽いストレッチなど、太ももの筋肉を鍛える運動を

  取り入れましょう。


 日光浴

 ・体内のビタミンDは直射日光に含まれるUVBによって活性化されます。

  窓ガラス越しでは効果がないため、直射日光をある程度浴びることが重要です。

 

5. 健康管理を徹底する

 高血圧や糖尿病、心疾患を持つ方はヒートショックのリスクがさらに高まるため、以下の点に注意しましょう。


 家庭での血圧測定

 ・寒い季節は、朝晩の血圧を測定し、異常がないか確認しましょう。


 食生活の見直し

 ・塩分を控えた食事を心がけ、血圧管理を徹底します。


 飲酒後の対応

 ・お酒が身体に残っている場合は、湯船に浸からずに

  シャワーで済ませるようにしましょう。


 令和6年12月6日、女優・中山美穂さんが不慮の事故で亡くなり、ヒートショックが原因の一つと推測されています。

 

 ヒートショックとは、急激な温度変化により自律神経が過剰反応し、血圧や心拍数が急激に変動する現象です。特に冬季の入浴時や寒暖差の激しい環境で発生しやすく、脳卒中や心筋梗塞、失神、心肺停止などの重大な健康被害を引き起こす可能性があります。高齢者や痩せ型の女性、持病を持つ人、飲酒後の人、小児などが特にリスクが高いとされています。

 

 予防には、家全体の温度差を減らす環境整備や適切な入浴方法、水分補給、筋肉量の維持が重要です。


 中山美穂さん、ご家族や関係者の皆さま、

 そしてファンの皆さまに心よりお悔やみ申し上げます。