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帰ってから思い出すこと

旅の話と本の話とロンドンの話…

クロアチアやイタリアやフランス、イギリスとヨーロッパを旅した時のことを中心に綴っています。
ロンドンで暮らしていた頃のことも書き残しておきたいな…と思いつつ。
旅の参考になれば幸いです。

さっきの続き。


ふたつめは、半ば自分に課した義務のようなもの。

もともと言葉を書くことは好きだけど、

横着な私はブログなんて書くガラじゃない。

そんな私がこんなふうに書くに至った

ふたつめの理由はちょっと長い。





日本に戻って、自分にできることが何かわからなくて、

ひたすらにロンドンに帰ろうと思っていた。

ただ、楽しかった生活に戻りたい一心だった。


でも、楽しいだけじゃ何も進まない。

ロンドンに帰れば生活は楽しいけれど、

私ができることは限られてしまう。

生きるために頭数の必要な仕事をする日々。

個性もスキルも必要ない。


そしてまた、いつかは東京に帰る日がやってくる。

いつかは「現実」と対峙する日がやって来る。

いつまでもそれを先延ばしにすることはできない。





日本の社会は好きじゃないけれど、

どこまで遠くに行こうとも
世界にパーフェクト・ワールドは存在しない。
だから、私は日本に残ることにした。





その代わり、今度こそ自分のやりたいことをしたい、

と思った。

「嫌でも頭を下げて、自分のやりたいことを手に入れようよ」

とは、あるコンサルタントの言った言葉。

海外に行った人間の就職を専門に

コンサルトしている彼の言葉を頼りに、

私はやりたいことが内側にいるドアを探し始めた。


最初のドアの門番は手強かったけど、

ひとつのドアを開けると新しい人とドアが出てきて、

そんな人のつながりに支えられて、

とあるドアに辿り着いた。

そして、うっすらと開けてくれたそのドアに

迷いもせずに滑り込んだ。


こうして

帰国してから長い時間を経て、編集者になりました。





こんな経緯があって、

ここからがふたつめの理由の本題。





「タイトルがあって、リードがあって本文がある。

読者はまず、タイトルを見て面白そうだな、

と思ったらリードを読む。

リードを読んでもっと知りたいと思って

初めて本文を読む。

というわけでどんなに本文が良くてもダメなわけ」

と言ったのはうちの編集長。

とても納得のいく言葉だけど、実践することは難しい。



さらに遡ると、


「タイトルを見る前に読者はページ全体をみるから、

一番初めにページのデザインで読みたいと

思わせることができなければ、

どんなに面白い情報が書かれていても

そこに並んでいる文字すら読んでもらえない」

と言ったのは

誌面を見栄え良く仕上げるデザイナーさん。





アドバイスを実践するためには

どうしたらいいんだろう?



と考えているうちに、

こうしてブログに書き留めてみるのは

どうだろう、と思い至った。

本当は内容も仕事よりの方が

いいのかもしれないけど、

もっと自分の自由のきくことから

書き始める方がやりやすいので。


こうやってつらつら書き連ねる言葉や

内容に合わせて写真を選ぶ行為が、

後々の自分の仕事に少しでも役に立つといいな、

と思って始めてみた。


だから、これは独白という形をとった私の練習の場。

手元のノートではわからない自分のアイデアを、

書いた言葉を客観的に見る場。

そして、自分が生きた昨日を忘れないためのアルバム。

人間ってもう少し記憶の引き出しが多くて、

きちんとオーガナイズドされていればいいのに。




バックでかけていたKanyeのアルバムが

いつの間にかScriptに変わっていた。












































どうして書き始めることにしたのか。

前回書ききれなかったので、

その理由をもう少し書いてみようと思う。

理由はふたつ。



ロンドンにいる間に書き残すことのできなかったことが

まだまだいっぱいある。

その時は、その時を生きることに精いっぱいで、

振り返る余裕なんてなかなかなかった。


ものごとは、後から思い出すことの方がよっぽど多い。

後から思い出すことは

だんだん散漫になって歪んで薄れていく。

もとの形とは少しずつ異なっていくピースを

少しでも原形を留めて残しておきたくて。

というのがひとつめ。



タイトルの「帰ってから思い出すこと」は

そんなことを思っていたら出て来た。

なぜか、この言葉を読むたびに

トルーマン・カポーティの「おじいさんの思い出」を思い出す。

言葉の持つ語感や哀愁感が似ているような気がして。







ふと気がつくと、今日でロンドンから戻って半年と一ヵ月。


思い出は自分の一番近くにあって

決して手の届かないところにあるもの。


自分の現在には満足しているけれど、

時間の経過とともに

どこかに消えていってしまう

ロンドンでの毎日のことを

どこかにつなぎ止めておくために

書き始めることにしてみました。


だからと言って、過去に浸るわけではなく

前に進むための原動力の一つとして。