いや、好かれているだけならば問題はなかったのだろう。
それに付随するさまざまなものがこんなにも心に重くのしかかる。
例えば、拘束。時間であったり食事であったり人付き合いであったり。様々なことが自由ではなくなる。抑制されるというよりも、ただ見られているという感覚が苦しいのだ。
例えば、罪悪感。自分も相手のことを好きにならなければいけないのではないか、と考えてしまうほどに相手からの施しが多い。代わりに何を返してあげられるだろうか。それは見合うものなのだろうか。代わりなどそもそもないのではないか。
例えば、嫌悪感。必要以上に近付いてきたり触れてきたり、自分の空間を脅かされるのは大変な苦痛だ。友達よりも近く、家族に近い関係になったからこそ、疎ましく思う。取り繕う必要がなくなり、遠慮がなくなり、気持ち悪いとさえ思う。
これらが混在するがために、心が疲弊する。
嫌いになれない。好きにもなれない。
なら、どうすればいいのか。
気付けば他に好きな人が出来ていた。
恋に落ちたわけではない。逃げたのだと思う。
相手も私を好きだと言う。その言葉を信じているわけではない。まだ一度も会ったことがないためだ。
多忙な上に遠距離。会うのは困難だろう。
けれど、会えないからこそお互いに「好き」だなんて言えるのかもしれない。
それが虚構であると知りながら。
お互いに脳内で補完しながら。
それでも、心は晴れるのだ。
呪縛から逃れた気になれるのだ。
けれど、現実は何も変わらない。
景色が色付いたりなんてしないのだ。
私の世界は灰色のまま。
いつか色で溢れてくれたら。