「くまモン」です。

 

「くまもとサプライズ」のロゴ依頼を受けたデザイナーの水野学氏が、キャラクターもあった方がPRしやすいということでつくったそうです。

 「アンパンマンやぴかちゅう、ドラえもんなど日本の人気キャラクターには顔に赤い丸がある」、その法則を適用しました。

「キャラクターはぼくにとって生き物です。生き物に対する愛着が強いのは、小さい頃、犬を飼っていたことが影響しているのかな?」

「クマもんが人気があるのは、性格がいいからなんです。熊本県の人達・・・育ての親が、良い環境で育ててくれたからなんでしょう」

ちなみに水野氏の元には第二のクマもんをねらって、依頼が殺到したそうですが、安易にキャラクターは作らないとのことです。

水野学氏の著作から「デザインとは何か?」を学んでみたいと思います。

・アイデアの接着剤

・センスは知識からはじまる。

・「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義

Good design company

以下内容にふれます。 

■水野学の現場 デザインの仕事場

水野氏はデザイン事務所を持って、デザインを生業(なりわい)としています。

「職種でいえば、ビジュアルを管理するという意味ではアートディレクターだし、デザイン視点という意味ではデザイナーでもある。だけど、それらをひっくるめてクリエイティブ全般を判断することを考えれば、クリエティブディレクターでしょうか」

デザインとは漠然としているので、言葉でつかみきれないところがありますが、一番大事な三大要素は、「人・デザイン・金」であり、優先順位もこの並びだそうです。 

特に人については、「人とかかわることが、いかなるプロジェクトにおいても一番大切であり、人をおろそかにしては、どんな優れたプランも花開くことはありません」と言います。 

「デザインという商品は、いわば無形のものです。絶対に正解というデザインはなかなかありません。だからこそ、デザインという「答えがわからない商品」を売る側の人間は、相手に信頼してもらわけくてはなりません。「この人に任せれば、大丈夫」と信じてもらわなければ、仕事が成立しないということです。相手が「ああ、この人を信頼して任せてよかった」と安心するような、結果を出す。このゴールまで到着したとき、ようやく約束を守ったことになるのです」

人とかかわるには、礼儀正しくあることも必要だと言います。

時には「ばかやろう」と怒鳴りつけることも、礼儀。

先輩に「つまんないこと言わないでください!」と反論するのも、礼儀。

どんな場でも大切なのは「自分に与えられた役割を、正確に理解して、しっかりと演じきる事」だから、安易に業者に見積もりを取りますなんてスタッフが言うと、「印刷屋さん、製紙会社さん、バイク便の方だろう!『業者』なんて絶対に呼ぶな」って怒鳴って注意するそうです。 

■商品の差別化 デザインのジレンマ 

ありそうでなかったものをつくり出す時、しばしば「差別化」という言葉がつかわれます。これは本来、「ほんの少しの差」を指すのではないかと水野氏は解釈しています。しかし、単に「ほんの少し違う」だけでは駄目で、その先に求められるのが「精度」だと水野氏は言います。 

「ブランドをつくることが大切なんです。腕時計、時間がわかるという基本的な機能は、100円ショップで売っている商品でも備えています。でも、だからといって、ロレックスが売れないわけじゃない」 

「なぜかというと、ブランド力があるからです。ブランド力が、そのコスト差をはるかに超えた価値を生み出しています。ある商品を見た時、「あの企業らしいな」と思ったりすることがあります」

「ニューヨークや銀座にあるアップルストアの建物もかっこいいし、ウェッブサイトもかっこいい。商品の梱包の仕方もかっこいい。すべてがかっこういいから、新しい商品が出るときにも、まだ見ないうちから「かっこういいものが発売されるに決まっている」とまで思ってしまう。見え方をきちんとコントロールできているおかげで、「美意識の高さ」や「クリエイティブへのこだわり」というアップルイメージが、消費者にちゃんと伝わってるのです」

椅子の差別化をはからなくちゃいけないからといって、座れない椅子をつくっても意味がないでしょう。差別化を考えはじめると、それに近いことをやってしまうんですよ。本当はもっと小さな差をつくるだけでいいんです。 

イノベーションとは「新しいもの」を生み出すことではなく、「今あるもの」と「今あるもの」を組み合わせて、「新しいもの」に変えることだと水野氏はいいます。そこに、「精度」が必要になり、「らしさ」をデザインすることになります。 

■水野学の法則 「らしさ」をデザインする 

売れものには必ず、「シズル」が存在します。「肉がジュージュー焼けるさま」を表す英語。転じて広告業界では、おいしそうにみせる演出を指します。水野氏は更に広く捉えて「そのものらしさ」を表現しています。 

「日本で一番売れている服」はデータを取ればある程度数値化できますが、それをきればセンスがよくなるわけではありません。センスがいい商品をつくるには、「普通」という感覚が大切です。普通こそ、「センスのいい/悪い」を測ることができる唯一の道具なのです。

手始めに「誰でも見たことのあるもの」という知識を蓄えることが大切。

従来の考え方を遠ざけ、独創性ばかりにこだわりすぎると、文字通り「独りよがりのクリエイティブ」になってしまいます。ものをつくる人間は、新しさを追い求めながら、過去へのリスペクトも忘れないことが大切なのではないでしょうか。 

最大の敵は思い込みであり、主観性です。思い込みと主観による情報をいくら集めても、センスはよくならないです。しかし僕たちはなかなか主観性の枠から自由になれません。自由になれないからこそ、意識して思い込みを外すべきたと僕は感じます。思い込みを捨てて客観情報を集めることこそ、センスをよくする大切な方法です。

例えば、「王道もの」と言うのがあります。「定番のもの」「一番いいとされているもの」「ロングセラーになっているもの」と言い換えることもできるかもしれません。

「王道のもの」はすでに「最適化されている」と言えます。「王道」を見つめたときのプロセスは、「なぜ別のBという商品を王道と認定しなかったのか」についても語れるようになります。「王道」を見つけることが重要と位置づけます。

次に重要なものは、「今、流行しているもの」を知ることだといいます。

20代の女性がたーげっとなら、まずに重大の女性に人気のドラマ、雑誌、1.2か月、すべてチェックしてみる。そこから仮設を導き出して、友達の妹でも上司の娘でも、だれでもいいからたくさん、じかに接して見る」

そして、それを踏まえて「共通項や一定のルールがないかを考えてみる」だそうです。

王道の店や流行ってる店めぐることで、共通項が見えてきます。入りやすい店に共通するルール、「床が暗い色」「入口が高すぎない」「雑貨店の場合は、他のお客さんとの距離が近く少しごちゃごちゃしているくらいの方が来客が多い」、それをまたなぜかと考えてみて、日本人は靴を脱ぐ文化なので、床があかるいと汚してしまう心理が働くのではないか、ごちゃごちゃしていると面白いものを「見つける楽しみ」があるではないか。

■技術と美意識 デザインの歴史 

高度経済成長期の後半から、水の品質や安全性が求められるようになりました。質そのものを追求した結果、さまざまな技術が発達していきます。精製度が高い水、清潔な水、アルカリ電解質の水などが誕生しました。つまり、「量より質」「技術による質の向上」という時代です。ところが技術の向上は、やがて頭打ちになります。どの会社もどの国の技術力をとことん高めた結果「質のいい水」が 技術力だに頼ってきた結果、ものづくりにあまりに重きを置き過ぎた日本は、まったく売れなくなった「質のよい水」を抱えて、困ってる状態です。 

世界はどこも同じような状況ですが、「アップル」が売れる理由は、美意識とセンスを取り入れて形にしました 

歴史にもあるように、技術がある程度高まると、美しいものを求める傾向があるそうです。

イギリスの産業革命の後に出で来た「もう一度手仕事にもどろう」、アーツ・アンド・クラフト運動やイタリアの古代ローマやギリシャのセンスを取り戻そうとする、ルネッサンス運動。また安土桃山時代の銃や刀の進歩と茶の湯の確立は洋の東西を問わず技術と美意識のせめぎ合いだと思いました。 

■水野学の作品 最適化されたデザイン    

それでは上記の提言を踏まえて、水野氏の作品を見て行きましょう。 

『中川政七商店』

リ・ブランディング=すでにあるものを改めてブランディングする。

1716年創業の老舗、中川政七商店の大義は「日本の伝統工芸を元気にしたい」でした。そこでコンセプト「温故知新」です。

    

社内外のブランディングを徹底することにもなりました。商品につけるタグをはじめ、社用の封筒や配送用の段ボール箱まで新しくデザインしました。段ボールはお店と本社の倉庫をつなぐ流通でしか使わないので、無地でもいいのてはないか。ふとした瞬間に、お店などでバックヤードに置いてあるのがお客さんに見えたときに、イメージがいいから。人柄といっしょで、ちょっと垣間見えた横顔のようなものに、じつは印象は左右されますようね。それはお店でも企業でもおなじ。もうひとつは社員のモチベーションに影響します。

『ママチャリ』

保育園や幼稚園への送り迎えは、小さな子供をもつ親にとっては生活の一部。そこに不満があるということは、毎日、いやな思いをしつづけることになりかねないわけです。

そこで、ママたちの求める「ママチャリ」のイメージを徹底的にリサーチしました。

その結果は、スタイリッシュな海外ブランドの自転車やマウンテンバイクに、子供用のシートがついたようなイメージの子ども乗せ自転車を求めているとういこと。

ただ、デザインに落とし込むときには、そういう心理や実際的な事情はもちろん、安全性などの課題もふまえながら、見た目で満足できて、かつ実現が可能なものに最適化しなければなりません。

そして出た答えが「ハンサムバイク」というコンセプトです。

 

『フランダースリネンプレミアム』

キャベジンコーワなどが有名な医薬品メーカー興和株式会社は、120年の歴史がありますが、創業時は綿布問屋だったとのこと。繊維部門に力をいれたいという社の思いがありました。

フランスやオランダなど周辺産地の亜麻も使ったリネンをつくりたいという申し出がありました。すでに確立している「コルトレイクリネン」というブランドはその地で採れたものでしか名称が使えません。しかし、品質は変わらないとのことです。

周辺地域は「フランダース地方」といいます。フランダースという名は日本ではプラスであると感じました。「フランダースの犬」という物語は、アニメ化によって日本では非常に親しまれている。「すごくやさしい素朴な物語である」と感じている人が大多数。このイメージはリネンという布と相性がいい。またリネンが好きな人は素材にこだわる人であり、高価なリネンの服は若い子が買えるものではなく、そしてその世代はちょうどフランダースの犬をアニメを知っている世代なのではないか。こうして新しい名称が生まれました。

 

『宇多田ヒカルCDジャケット』

「セルフブランディング」=その最もたるものが、タレントやアーティストでしょう。

次のアルバムをだしたら活動を休止するという箸を聞いて、それまでの宇多田ヒカル像を単純にひきつぐんじゃなくて、これから活動休止に入っていこうとする彼女の心、彼女の「らしさ」を、そのまま映し出すことはできないだろうかと考えたとこと。 

それで、ふだんの彼女のままを撮影することにしたとのこと。使う衣装は、ぜんぶ彼女の私物です。

こういうことを、ぼくは手紙に書いて宇多田さんに提案しました。といっても、便箋に描いたわけじゃないのですが、手紙のような企画書を書いたんです。手紙はだいたい、「お元気ですか?」と相手を気づかうところからはじめて、最後まで相手のことを思い浮かべながら書きます。 

宇多田ヒカルさんへの企画書の最初に書いたのは、「星を見に行きましょう」という言葉でした。宇多田の「宇」は、宇宙の「宇」だし、「ヒカル」は「光」。宇宙の光、原始的な光とはなにかといえば、それは「星の光」なんじゃないか。

提案というよりは対話ですね。プレゼンは発表の場じゃなくて「手紙を相手に手わたす場」だと思えば、ぼくのやり方にも納得がいくんじゃないでしょうか。

■水野学という男 デザインの美学

ここで、アメリカで史上最低な監督と呼ばれているエド・ウッド監督に触れたいと思います。

「彼は映画に対するありあまる情熱を持っていた、人に負けないほとばしる情熱を持っていた。しかし、彼にはないものがあった、それは才能だった」

これを水野氏の言葉に借りて言えば、才能=センス、センスを最適化する能力に欠けていたと言えるのかもしれません。

例えば、水野氏の言う、キャラクターの力を借りてみて、ハローキティは幅広い層に人気がある。しかし、「朝日新聞を読もう!」というCMに力を発揮できるものなのか?

仮に朝日新聞を「歴史小説が好きな区役所勤務の男性」と擬人化するとしたら、彼とキティちゃんの取り合わせは、意外性を通り越して違和感しか抱かせません。多くの女性は、「キティちゃんは好きだし、朝日新聞は読んでみてもいいけど、一緒に来られても困る」こういうことなのかもしれません。

「センスとは、集積した知識をもとに最適化する能力である」

とは言いながらも、クライアントにすごく喜んでもらえることも多いいっぽうで、気まずい思いをしたことも、残念な思いをしたことも多々あるそうです。

しかし水野氏は「仕事は裏切りません。「正しいこと」をきちんとやっていると、見てくれている人はかならずいます」と言います。 

「「正しい」は、ひとりよがりや、思いつきではなく、純粋にクライアントの願いを叶えるものでなくてはいけない。クライアントのためにあらゆる可能性を徹底的に検証し、クライアントがまちがっていると思う時には、きちんと指摘しなければならない!

ここで、あえて水野氏の敬称をはぶかせていただくことを許してください。

熱いぞ、水野学 !