徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説 -183ページ目

徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

SJウォンキュ妄想垂れ流し小説ブログです。 
とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

バックドアを開けてカーサイドタープを設置する。
それだけでアウトドア感が出るのだから不思議なものだ。
中秋の名月。
まだ日が沈み切っていない山道を走って着いた場所にちょっと口笛を吹きたくなった。
ある意味絶景。
一面ススキの野原だ。
 
「まさかの月見とは思わなかったな」
 
ヒョクチェがチェアーに腰かけて空を見上げる。
その横では自分たちが乗ってきた車に同じように慣れた手つきでタープを取り付けているドンヘ。
 
「結局ドンヘヒョンと一緒なんですね」
「だってあいつ休みだって言うし、なんだかんだでアウトドア用品揃ってるし」
「まぁ、こうなっちゃったらほぼほぼキャンプみたいなものですよね」
 
大き目のクーラーバッグを降ろしながらそう言ったのはリョウクだ。
 
「リョウガも来てたんだ。何、この二人に連れられてきちゃったの?」
「はい、お邪魔します。でも後から知り合いが合流してくれることになってて。二人の世界にいつまでもお邪魔してたら馬に蹴られて何とかってやつなので」
 
もっともだと笑うヒョクチェは開けたクーラーバッグの中を覗き込む。
 
「何か作ってくれるの?」
「ええ。ギュギュのリクエストで。下ごしらえはしてあるのですぐに出来ますよ」
「楽しみー」
 
折り畳みのレジャーテーブルを広げたドンヘが「ここ使う?」と人懐っこい笑顔をリョウクに向ける。
 
「ありがとうございます。えぇと…」
「あ。俺、ドンヘっていうの。よろしく」
「よろしくお願いします。僕はリョウク。シウォンさんのお宅で派遣家政夫させてもらってます」
「…あ。前にヒョクが言ってた人だ」
「えぇ?何言われてました?」
「すっごい料理上手だって」
 
ドンヘの一言にリョウクが嬉しそうに笑う。
キュヒョンと初めて会った時の彼の自論からすればこの中には誰一人悪い人間はいなさそうだ。
陽が落ちて濃紺の空に丸い月。
日頃、人工の光では消されてしまうような明りもここでは殊更明るく感じられた。
金色のススキの穂が月明かりを更に明るく見せているのかもしれない。
金色の海原のようなススキの穂に、暖かなランタンの光。
カセットコンロにかかっている鍋からは美味しそうな匂い。
リョウクがバケットを取り出しすと、キュヒョンがそれをナイフで切っていく。
そんな様子をヒョクチェが楽しそうに傍で観察していて、それを自分とドンヘが並んでみていて。
なんだか贅沢な時間を過ごしている気分になる。
そこに一台、車が乗り込んできた。
型は古いタイプだが、大事に乗っているのが分かる。
そこから降りてきた人物はこちらをみると頭を下げた。
 
「あ。ジョンウンさんだ」
「え?」
 
リョウクの言葉に顔を上げたキュヒョンが目を丸くする。
 
「ヒョン?」
「え?キュヒョナ?」
「「何でここに居るんだよ!?」」
 
その二人を見て今度はリョウクが目を丸くした。
 
「え?知り合いなの?」
「知り合いも何も…僕がバイトしてた…探偵事務所の所長」
「探偵…?えー!? 聞いてないし!! ジョンウンさん便利屋だって…」
「まぁ、それでもほぼほぼ間違ってはないけどね…」
 
不思議な縁にリョウクとの関係を尋ねてみると、どうやら同じアパートの住人で隣同士らしかった。
以前キュヒョンが所長と刑事が警察学校の同期だったといっていたせいかドンヘとも顔見知りらしい。
 
「事務所のバイトの子が最近所長が毎晩ちゃんと自分の家に帰るんですよねって不思議がってたけど…」
 
ふぅん、と訳知り顔で笑ったドンヘに咳払いしたジョンウンは「飯食わせてくれるって言うから迎えに来たんだよ」とぶっきらぼうに答えた。
どうやら胃袋を掴まれた様子だ。
 
「はい。できましたよー」
 
皿に入っていたのはクリームシチュー。
添えられたバケットにはスモークサーモンとクリームチーズ、アスパラがソテーされたものが挟んである。
陽が落ちてからひんやりと肌寒くなったこの時間にはありがたいごちそうだ。
シチューを食べたヒョクチェが足をバタバタさせる。
 
「美味いー」
「うわ、本当だ、美味しい!」
 
ドンヘも目を丸くしている。
 
「市販のルーですよ?キュヒョナにもそう言ったんですけど」
「でも、何か違うんだよ」
 
困ったように首を傾げるリョウクは「何が違うんだろ」と呟いている。
少しトーストされたバケットサンドは齧りつくとサクっと音を立てて、クリームチーズの柔らかな酸味がサーモンの塩気とアスパラの歯ごたえと瑞々しさが絶妙だ。
ジョンウンが咀嚼しながら首を傾げる。
 
「あのさ、これジャガイモじゃないよな。めちゃくちゃ美味いけど」
「あぁ。それがギュギュのリクエストですよ。ジャガイモじゃなくて里芋でって。僕もそれまでジャガイモでしか使ったことなかったから言われてから何回か作ったんですけど。こっちの方が好きになっちゃって…」
 
スプーンで掬い上げた里芋を口に入れる。
ジャガイモのほくほくとした触感とは違ってもちっとした触感は不思議とマッチしている。
 
「なんか…懐かしい?」
 
そう言うとキュヒョンが笑った。
 
「昔、母が作ってくれたんです。月見の時の定番メニューで」
「…もしかして、俺も食べてた?…それにここって…」
「…ここで、一緒に食べましたよ」
 
それで懐かしく感じたのか、と納得する。
 
「ねぇ、どうして月見の定番メニューなの?」
 
リョウクの質問にキュヒョンが答えた。
 
「中秋の名月って月にお供えするだろ?団子とススキが多いけど、地域によっては里芋を供えるところもあってね。【芋名月】なんて呼ぶところもあるんだ」
「へぇ…。納得」
 
里芋を口に入れたリョウクが満足そうに眼を細める。
しばらくしてヒョクチェとドンヘが揃ってシチューをおかわりして、バケットを取り合い始めるのを全員で笑って。
にぎやかで楽しい時間を過ごした。
日が変わる前に帰り支度をしてそれぞれの車に乗り込む。
助手席のキュヒョンがポツリと楽しかったというのに頷いた。
 
「またやろうか」
「来年ですね」
「来年じゃなくてもいいよ。キャンプとかでも楽しそうだ」
「はい。…こんなに楽しく月見したのは初めてです」
「これからはこんな感じで出来たらいいよね」
 
今までキュヒョンしかいなかった風景に今度は自分が入り込んでいこう。
自分だけでではなくみんなで。
楽しくて明るい色で描いていければいい。
 
 
子供の頃に失くしてしまった風景は、今新しく描かれて目の前にあるのだから。