夕食後。
なるべく人と顔を合わせないように気を付けて地下へ向かう階段を下りる。
教えてもらった通り途中の壁のレンガを一つ抜くと中に収められているレバーを引いた。
なるべく人と顔を合わせないように気を付けて地下へ向かう階段を下りる。
教えてもらった通り途中の壁のレンガを一つ抜くと中に収められているレバーを引いた。
「本当に出られるのか?」
「そう言われたけど」
「嘘だったらどうする?」
「そう言われたけど」
「嘘だったらどうする?」
ふわりと笑うジョンスの笑顔を思い出してキュヒョンは心の中で謝った。
「嘘じゃないと思うよ」
「信用してるんだな」
「あの人が嘘ついてるとは思えないってのもあるけどさ。きっとこの城にいくつかあるうちのたった一つだと思うし」
「信用してるんだな」
「あの人が嘘ついてるとは思えないってのもあるけどさ。きっとこの城にいくつかあるうちのたった一つだと思うし」
自国の城だって同じだ。
そのうちの一つ。
万一知られても都合が悪くなったら潰してしまえばいいだけの話だ。
しかし、まさかこんな早くにここを使うことになるとは。
ランタンを掲げたチャンミンが先を歩く。
地下通路になっているため明りはない。
たった一つのランタンが頼りだ。
そのうちの一つ。
万一知られても都合が悪くなったら潰してしまえばいいだけの話だ。
しかし、まさかこんな早くにここを使うことになるとは。
ランタンを掲げたチャンミンが先を歩く。
地下通路になっているため明りはない。
たった一つのランタンが頼りだ。
「しっかり造られてる」
チャンミンが歩きながら周りを観察してそう言った。
「もしかして一番しっかりした通路を教えてくれたのかな…」
「…とんでもない国だな」
「だよね。俺…っていうかレイナに対してだけど。結婚するのがどうしても嫌ならここから逃げろって言われた」
「…寛大なのか?」
「さあ?謎だらけではあるけど」
「…とんでもない国だな」
「だよね。俺…っていうかレイナに対してだけど。結婚するのがどうしても嫌ならここから逃げろって言われた」
「…寛大なのか?」
「さあ?謎だらけではあるけど」
まるで最初からここから出ていくことを想定しているように言われた言葉。
レイナが見つからなければ勿論そうするつもりだ。
けれど逃げる前に婚約破棄すればいいだけの話なのではないだろうか。
勿論一国の王子が婚約破棄なんて大ニュースではあるだろうけど、そんなに批判されることでもない気がするのだ。
ほとんど顔も知らない相手との結婚なんて。
彼女さえ見つかってくれればどうにかなりそうな気はするのに。
はぁ、と大きく息を吐くとチャンミンが「あそこか」と呟いた。
突き当りに石段がある。
チャンミンはキュヒョンにランタンを持たせると石段を上がって塞がれている天板をコツコツと叩いた。
反応はないものの警戒したままの様子でその天板をそろりと押し上げる。
そうして息を吐いたチャンミンはキュヒョンに頷いてみせた。
小さな窓から入る月明かりと掲げたランタンで照らされた部屋は誰かが住んでいる様子はないが明らかに手入れされている場所だ。
キュヒョンは抱えてきた包みから出した服に着替えるとひとつ伸びをした。
レイナが見つからなければ勿論そうするつもりだ。
けれど逃げる前に婚約破棄すればいいだけの話なのではないだろうか。
勿論一国の王子が婚約破棄なんて大ニュースではあるだろうけど、そんなに批判されることでもない気がするのだ。
ほとんど顔も知らない相手との結婚なんて。
彼女さえ見つかってくれればどうにかなりそうな気はするのに。
はぁ、と大きく息を吐くとチャンミンが「あそこか」と呟いた。
突き当りに石段がある。
チャンミンはキュヒョンにランタンを持たせると石段を上がって塞がれている天板をコツコツと叩いた。
反応はないものの警戒したままの様子でその天板をそろりと押し上げる。
そうして息を吐いたチャンミンはキュヒョンに頷いてみせた。
小さな窓から入る月明かりと掲げたランタンで照らされた部屋は誰かが住んでいる様子はないが明らかに手入れされている場所だ。
キュヒョンは抱えてきた包みから出した服に着替えるとひとつ伸びをした。
「あぁ、なんだか自由を感じる」
「まぁ、そうだろうな」
「まぁ、そうだろうな」
苦笑いしたチャンミンはドアを開ける。
やはり小さな庭には色とりどりの花や薬草らしき植物。
腰の高さほどしかない板塀の向こうの道沿いには右にいくとぽつりぽつりと民家があり、左に少し歩けば賑やかな街の明かりが見える。
やはり小さな庭には色とりどりの花や薬草らしき植物。
腰の高さほどしかない板塀の向こうの道沿いには右にいくとぽつりぽつりと民家があり、左に少し歩けば賑やかな街の明かりが見える。
「とりあえずエール!」
「だよな!」
「だよな!」
二人は顔を見合わせると足早に街の方に歩き出した。
夜になってもにぎやかな街はやはりこの国が安定している証拠なのだろう。
最初に見つけたバーに入るとカウンターから「いらっしゃい」と声を掛けられる。
商人や衛兵、誰もが仕事を終えて満足そうに酒を煽っていた。
夜になってもにぎやかな街はやはりこの国が安定している証拠なのだろう。
最初に見つけたバーに入るとカウンターから「いらっしゃい」と声を掛けられる。
商人や衛兵、誰もが仕事を終えて満足そうに酒を煽っていた。
「初めて見る顔だね。傭兵?」
チャンミンの腰の剣を差してそう尋ねるバーテンダーは人懐っこい笑顔で軽く尋ねる。
「まぁ、そんなところかな」
「今はどこも平和だからなかなか雇い手ないだろ?まぁ、こちらとしては平和な方がありがたいんだけど」
「けど無くなるわけでもない」
「そうだね。うちの国は優秀な兵士が多いから腕に自信がないと無理だよ」
「そこそこだとは思うけど」
「今はどこも平和だからなかなか雇い手ないだろ?まぁ、こちらとしては平和な方がありがたいんだけど」
「けど無くなるわけでもない」
「そうだね。うちの国は優秀な兵士が多いから腕に自信がないと無理だよ」
「そこそこだとは思うけど」
チャンミンが肩を竦めるとバーテンダーは笑った。
「で?何にする?」
「「エールで!!」」
「「エールで!!」」
二人で揃って注文をすると楽しそうに「了解」と受けてそのまま隣の男性に注文を通す。
エールを注いだグラスを別のそのバーテンダーが運んできた。
エールを注いだグラスを別のそのバーテンダーが運んできた。
「はい。エール二つね」
置かれたグラスの中身は自国のものとは色味が違う。
二人で顔を見合わせるとそれを一気に喉に流し込んだ。
二人で顔を見合わせるとそれを一気に喉に流し込んだ。
「…うまっ」
「…最高」
「うちの国とは違うけど…これはこれで美味い」
「…最高」
「うちの国とは違うけど…これはこれで美味い」
くくっと笑ったバーテンダーはサラサラの前髪を掻き上げた。
「お客さん、どこの国の人?」
「あー…隣の」
「あぁ、神の住む国の人?」
「神ねぇ…」
「だってそうでしょ?」
「あー…隣の」
「あぁ、神の住む国の人?」
「神ねぇ…」
「だってそうでしょ?」
あんなこと神でもなきゃ出来る事じゃない。
そう言って笑う。
そう。
そうなのだ。
神に許された血筋。
自分は落ちこぼれだけど。
キュヒョンの溜息にチャンミンがグラスを置く。
そう言って笑う。
そう。
そうなのだ。
神に許された血筋。
自分は落ちこぼれだけど。
キュヒョンの溜息にチャンミンがグラスを置く。
「このエール美味い」
「ありがと。大概エールはスタウトだろうから。ここはねベルジャンホワイトなんだ」
「へぇ。なんだか華やかだよね」
「でしょ。お兄さんすっきりしたの好みならラガーもあるけど」
「マジ!? それ飲みたい」
「OK。そっちのお兄さんは?」
「あー。俺も。あと適当に食べるもの見繕って」
「まーかせて」
「ありがと。大概エールはスタウトだろうから。ここはねベルジャンホワイトなんだ」
「へぇ。なんだか華やかだよね」
「でしょ。お兄さんすっきりしたの好みならラガーもあるけど」
「マジ!? それ飲みたい」
「OK。そっちのお兄さんは?」
「あー。俺も。あと適当に食べるもの見繕って」
「まーかせて」
こっちのバーテンダーはまるで猫のようにしなやかにカウンターの中を歩いていく。
二人とも人目を惹くタイプだ。
どうやら厨房らしき場所からひょこっと顔を出した可愛らしい男が「苦手な物ない?」と尋ねてくるのに特にないと答えると満足そうに厨房に消えた。
ラガーを口にしながら、店内を眺めているとそれだけで楽しい気分になってくる。
雑踏の音が音楽のようで心地よいのはほんのりと効き始めたアルコールのせいなのか。
二人とも人目を惹くタイプだ。
どうやら厨房らしき場所からひょこっと顔を出した可愛らしい男が「苦手な物ない?」と尋ねてくるのに特にないと答えると満足そうに厨房に消えた。
ラガーを口にしながら、店内を眺めているとそれだけで楽しい気分になってくる。
雑踏の音が音楽のようで心地よいのはほんのりと効き始めたアルコールのせいなのか。
「はーいお待たせ。熱いから気を付けてね」
皿が置かれるとそれにナイフとフォークが添えられた。
綺麗に焼き色がついたパイ生地からは濃厚なソースの香り。
綺麗に焼き色がついたパイ生地からは濃厚なソースの香り。
「ラガーにはぴったりだよー。ワインにもいいけど」
悪戯っぽく笑ってまた厨房に消えた青年はその帰りにもいくつかのオーダーを受けていた。
ここは店員が商売上手なんだなと感心する。
ここは店員が商売上手なんだなと感心する。
「うわぁ、いい香り」
ナイフを入れるとザクリと軽快な音。
口に入れると肉のうまみがじわりと溢れる。
何より熱い。
その熱を冷ますのと、口の中の濃厚な味を流し込むようにラガーを口にする。
口に入れると肉のうまみがじわりと溢れる。
何より熱い。
その熱を冷ますのと、口の中の濃厚な味を流し込むようにラガーを口にする。
「…くはぁぁぁぁ…」
「…幸せだ」
「だな…」
「…幸せだ」
「だな…」
そんな二人の様子にクスリと笑う声が聞こえて振り返ると、そこには見覚えのある美丈夫が立っていた。
なんで、この人がここに居るんだ!?
キュヒョンが静かにパニックになっているとカウンターの中のバーテンダーが呆れたように溜息をつく。
なんで、この人がここに居るんだ!?
キュヒョンが静かにパニックになっているとカウンターの中のバーテンダーが呆れたように溜息をつく。
「シウォナ。お前のあまりにも自由じゃないか?」
「うちの国の王子は庶民的すぎるって有名だぞ?」
「そう言うなよドンヘ。売上貢献してるだろ?ヒョク」
「うちの国の王子は庶民的すぎるって有名だぞ?」
「そう言うなよドンヘ。売上貢献してるだろ?ヒョク」
えっと、どうしよう。
これはヤバい状況じゃないのか?
バレた。
絶対バレた。
これはヤバい状況じゃないのか?
バレた。
絶対バレた。