徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説 -170ページ目

徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

SJウォンキュ妄想垂れ流し小説ブログです。 
とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

ジョイのお土産にバーのメニュー担当のリョウクに作ってもらった見たことのないお菓子を待って帰ると彼女はいたくそれを気に入った。
 
「次もよろしくお願いします」
 
と、確実に自分達がまた遊びに行くつもりなのを見抜かれて苦笑いした次の日の昼下がり。
 
「姫、甘いお茶でもいかが?」
 
書庫に顔を出したジョンスが頬笑む。
とうせ何もすることはないのだ。
キュヒョンは快諾して中庭に面したサロンに足を向ける。
小さな円卓に用意されたお茶とお菓子。
焼き菓子をひとつ口にいれてキュヒョンはホッと一息吐き出した。
 
「美味しそうに食べるね」
 
その声の方に目線をむける。
入り口に立っていたの楽しげなシウォンだった。
 
「シウォナもこっちにおいで。お茶にしよう。今日はもう出掛けることもないんだろ?」
「ええ。ここのところバタバタして姫と話もしてないですからね」
 
おどけたように肩を竦めて向けられた視線が合うとなんともむず痒いような気持になって両手で持ったティーカップを口に運ぶ。
 
「シウォナはねぇ…。国の事を考えて動いてくれるのはありがたいんだけど、もう少し王子であることを自覚してほしいよね」
 
はぁ、と溜息を吐いてジョンスが嘆いた。
 
「自覚してますよ。だからこうして動いてるんじゃないですか」
 
前日にシウォンと色々と話をしたキュヒョンとしてはその言葉も理解できる。
それに昨日キュヒョンと会ったことをジョンスの前だからというだけでなくレイナとしてここに居る自分にも告げる様子もないシウォンの性格はやっぱり好ましいと思うのだ。
そんな気持ちが思わず出てしまった。
ふっと微笑んだキュヒョンの表情にジョンスが嬉しそうに微笑む。
 
「姫がそんなにリラックスした表情をするの初めて見た」
「そう、ですか?」
 
いつだってバレないようにと気を張り続けてはいるけれど、それでもジョンスの前では随分落ち着いていたつもりだったのに。
両手の指を頬に当てて揉みほぐすようにすると、今度はシウォンまでが楽しそうに笑い出す。
 
「何で笑うんですか」
「いや、ごめん。可愛いからつい」
 
か、可愛いってなんだ!
少し眉をひそめてはみるものの、それが何かの抵抗になるわけでもなく。
 
「城内は案内してもらった?」
「あ。はい。ジョンスさんに」
「取り急ぎ程度だから、シウォナに行ってみたい場所とかあれば連れていってもらえばいいよ」
 
その言葉にキュヒョンはシウォンに視線を向けると、彼はにこやかに頷く。
 
「じゃあ、このお城で一番高い場所に」
「高い場所?…構わないけど」
 
不思議そうに首を傾げられてキュヒョンは苦笑いした。
確かに普通の人からすればそれは珍しいリクエストなのだろうが、キュヒョンにとっては慣れ親しんだ場所に行くようなものだ。
カップの中のお茶が無くなると、シウォンが席を立つ。
 
「どうぞ姫」
 
差し出された手を無視するわけにもいかずその手をとると、すっと力を入れて楽に立ち上がれるようにしてくれる。
この人絶対もてるな、なんて呑気に考えている自分が可笑しくなった。
サロンから出て中央の塔の階段を上る。
そこそこの段数の階段にシウォンは少しばかり心配そうにキュヒョンの後ろを上ってくれた。
万一の時には支えてくれるつもりなのだろう。
そしてキュヒョンのペースに合わせてくれてもいるのだ。
最後の一段を上がって踊り場で足を止めて振り返るとシウォンが前に出てドアを開けてくれる。
空に近い場所。
広がった砂の大地に枯れた草。
それより向こうの森は新緑に光っている。
そしてに賑やかで活気のある街。
爽やかな風が頬を撫でる感覚になんとなく解放感を覚える。
 
「あの。一つ聞いてもいいですか?」
 
キュヒョンがシウォンに視線を向けると、なんなりと、そう言って笑って返される。
 
「…急に許嫁が居るって聞かされて驚かなかったんですか?」
「あぁ、そうか。そっちはそうだったんだよね」
 
シウォンは笑って空を見上げる。
 
「でも俺はずっと知ってたよ。だって君と直接約束したんだから」
「…え?」
「子供の頃にね。覚えていないかもしれないけど」
 
レイナとそういう約束をしたってことか?
それはキュヒョンにとっては寝耳に水だ。
 
「子供の頃にね。向こうの国とこの国の堺の森であったんだよ」
 
子供の頃。
自分もレイナもよく隣の国の境界辺りまで護衛や乳母の目を盗んで脱走しては迷子になった。
レイナはそんなに回数が多かった方ではないけれど、キュヒョンには数か月に一度はやっていた事だ。
 
「森の奥にはいかないように言われていたんだけどね。ドンヘ達と遊んでいてはぐれたんだよ」
 
あの時は後でドンヘ達が街中の大人たちに怒られて大変だったとシウォンが笑う。
 
「まぁ、そのことで自分が王子だってことを自覚したんだけど…。その時に君に会った。ひどく寂しそうで、今にも泣きだしそうで放っておけなくて。色々話をしてるうちに陽が傾き始めて。そろそろ帰ろうって言った途端、とうとう泣き出したんだ『帰っても居場所がない』って」
「…それ…」
 
レイナではなくて自分だ。
目を丸くしたキュヒョンにシウォンは首を傾げる。
 
「やっぱり覚えてないか。なぜ居場所がないのかって聞いたら『家族には出来ることが自分には半分しかできない落ちこぼれだから』って…。両親がそう言ったのか尋ねたら周りの人がそう言うんだって言って」
 
キュヒョンの中にあった記憶が結びついた。
あれはシウォンが言ってくれた言葉だったのか。
自分はずっと長兄がくれた言葉だと思っていたのに。
あの言葉にどれだけ慰められたか、支えられたかわからない。
そう、あの時こう聞かれた。
 
「じゃあその周りの人たちには出来る事なの?」
 
キュヒョンが首を振るとにっこりと微笑んで握った手をぶんぶんと振られた。
 
「だったらその人に出来ない事が出来るんだから凄いじゃないか」
 
キュヒョンの中で何かが変わった。
自分には可能性があることに気が付いた。
人には出来ないことが出来る事にも気が付いた。
家族は誰一人自分に対して絶望したり貶したりもせずただ愛してくれていることも気が付いた。
確かに周りの一部の人間の言葉でしかなかったのだ。
子供の狭い世界でしか知りえなかったことがその時ぶわりと広がったのを覚えている。
それでもやっぱり劣等感は小さくなりこそすれ、無くなったりはしなかったけど。
 
「君がやっぱり泣きたくなるのなら、僕が君を迎えに行くよ」
 
あのあとシウォンは確かにそう言ったのだ。
そして自国の侍従や乳母たちに見付けられて、そのまま別れた。
 
「あの時にね、君の母上に約束したんだ。君が大人になった時に迎えに行くって。でもまぁ、ほとんど忘れてはいたんだよ。だけど舞踏会で見かけた時につまらなさそうだったから、思い出した」
 
あぁ、まったく母上…。
色々天然で不思議ちゃんな母親だけれど、まさか男の自分に男の許嫁って。
勿論子供の戯言だとでも思っただけかもしれないけれど。
けれど、そうなると約束をしたのはキュヒョンでそれなのにシウォンはそれをレイナだと思い込んでいて、レイナが知らない人と言い張るのも無理はないわけで…。
こ、これは一体どうするべき?
この国に来てからなんだか考えることが多すぎて甘いお茶でも焼き菓子でも、糖分が足りていない気がする。
いや、寧ろ糖分ではなくてアルコールが欲しい。
でも昨日脱走したばかりで今日はないだろう。
…って、なんの話だったっけ?
 
「あー…もぅ…」
 
思わず出た声にシウォンは少しだけ眉尻を下げて顔を覗き込む。
 
「大丈夫?」
「大丈夫です」
 
食い気味で答えるとシウォンがまた肩を竦めた。
 
「大丈夫そうに見えないから聞いたんだけど」
「えっと、なんというか…今、色々思い出そうとして混乱しているというか…」
「別に忘れてたっていいんだけど」
「それは、なんだか申し訳ない気も…」
 
声を出してシウォンは笑うとキュヒョンの頭をポンポンと撫でる。
 
「君は優しい子だなぁ。だからね。本当に無理しなくったっていいんだよ。俺は君の事が好きだけどそっちがそう思えないんなら結婚なんてしなくても構わないから」
 
なんだか泣きたくなった。
自分は優しくなんてない。
優しいのはシウォンの方だ。
 
「…少し風が冷たくなってきたし、戻ろうか?」
 
小さく頷くだけで精いっぱいで、塔から降りる時に前を降りる背中に謝りたくなった。