向かい合って座っている二人が同時に溜息を吐いた。
その様子にジョイは眉を寄せる。
二人とも昨夜のガス抜きが効いて午前中は上機嫌だったはずだ。
テーブルに両肘をついて頬杖をついているキュヒョンの上には黒い澱が沈んでいくようなオーラが、対して片肘を付いて頬杖をつき足を組んだまま斜め上をぼんやりと見つめているチャンミンからはピンク色のびらを撒き散らすようなオーラが見える気がしてジョイはそれらを払うように手を振った。
その様子にジョイは眉を寄せる。
二人とも昨夜のガス抜きが効いて午前中は上機嫌だったはずだ。
テーブルに両肘をついて頬杖をついているキュヒョンの上には黒い澱が沈んでいくようなオーラが、対して片肘を付いて頬杖をつき足を組んだまま斜め上をぼんやりと見つめているチャンミンからはピンク色のびらを撒き散らすようなオーラが見える気がしてジョイはそれらを払うように手を振った。
「…一体どうしたんですか?」
「…なにが…?」
「…なにが…?」
ほわーっとしたままの表情のチャンミンはこの際置いておくとして、更に溜息を吐いたキュヒョンの前に暖かいお茶を出してジョイは首を傾げる。
「どうしたもこうしたも…なんだかもう色々と誤解と錯覚との闘いで…とりあえずレイナだよっ!レイナと話しないことにはどうにもならないのにっ!! まだ見つからないのかよ!?うちの国のセキュリティーってどうなってんだおいっ!!」
さすがのキュヒョンの剣幕にチャンミンも正気に戻らざるを得なかったのか、呆れたような表情で前に置いてあるカップをキュヒョンに寄せる。
「とりあえず落ち着けよ」
「落ち着いてるよっ!!」
「じゃあ、何が誤解で錯覚だって言うんだよ。はい。説明」
「落ち着いてるよっ!!」
「じゃあ、何が誤解で錯覚だって言うんだよ。はい。説明」
本日最屋上のテラスで聞いたシウォンの話をまとめて説明すると、チャンミンは机に突っ伏したままで肩を揺らし、ジョイは何とも言えない表情でキュヒョンの顔を見詰めた。
「それで言うならフィアンセはキュヒョン様ですよね?」
「でも縁談の話自体はレイナに来てるんだよ?」
「…肝心なことはそこじゃないだろ?」
「でも縁談の話自体はレイナに来てるんだよ?」
「…肝心なことはそこじゃないだろ?」
眉を寄せてキュヒョンとジョイを交互に見てそう言ったチャンミンに二人が首を傾げる。
「どこだっていうんだよ」
はぁ、と息を吐き出して首を振ったチャンミンは腕を組むと、さも当然だとばかりに言い切った。
「あの王子がどっちを好きなのか」
「はぁ?」
「はぁ、じゃなくて」
「そんな決まりきったことを…」
「人生に絶対はない」
「なんだよ、その訳の分からない理由は」
「仕方ないだろう。実体験に基づいた理由なんだから」
「はぁ?」
「はぁ、じゃなくて」
「そんな決まりきったことを…」
「人生に絶対はない」
「なんだよ、その訳の分からない理由は」
「仕方ないだろう。実体験に基づいた理由なんだから」
やけに自信ありげにそう言い切るチャンミンに溜息しか出ないキュヒョンは考えること自体を放棄したい気分になった。
確かに幼い頃の約束はあったにしろ、シウォンも忘れていたと言ってたのだからレイナを見初めたことには間違いないだろう。
確かに幼い頃の約束はあったにしろ、シウォンも忘れていたと言ってたのだからレイナを見初めたことには間違いないだろう。
「それで誤解か。じゃあ錯覚は?」
「世界が変わって見える」
「…ごめん、キュヒョナ。意味がわからない」
「だろうね。俺ですらわからない。実際何かが変わったわけじゃないし。だから錯覚」
「世界が変わって見える」
「…ごめん、キュヒョナ。意味がわからない」
「だろうね。俺ですらわからない。実際何かが変わったわけじゃないし。だから錯覚」
自分を救ってくれた言葉が。
兄からもらったものだとばかり思っていたあの言葉が。
シウォンの言葉だったと知った時に何かが変わった。
まだ表面でしか知らなかった彼の内面を一瞬でみつけたような、なんとも言えない気分とか。
何故か妙にすっきりしたような気持ちだとか。
そのせいかやたらと綺麗に見える景色や空気だとか。
何もかもが今まで以上に新鮮な気がする。
ただただやり過ごそうとしている今がとんでもなくバカらしくて、全てを話して謝罪してしまいたくなった。
実際にそれを行動にするのは無理だけど。
本当にこんなつまらないことで国を挙げての大喧嘩にでもなったらたまったものではない。
兄からもらったものだとばかり思っていたあの言葉が。
シウォンの言葉だったと知った時に何かが変わった。
まだ表面でしか知らなかった彼の内面を一瞬でみつけたような、なんとも言えない気分とか。
何故か妙にすっきりしたような気持ちだとか。
そのせいかやたらと綺麗に見える景色や空気だとか。
何もかもが今まで以上に新鮮な気がする。
ただただやり過ごそうとしている今がとんでもなくバカらしくて、全てを話して謝罪してしまいたくなった。
実際にそれを行動にするのは無理だけど。
本当にこんなつまらないことで国を挙げての大喧嘩にでもなったらたまったものではない。
レイナが早く見つかってくれれば、自分は彼女にこの国がどれほど平和で安定しているか、王家の人たち、シウォンが誠実でいい人だって事をちゃんと説明してここを離れて自国に戻るのに。
その後の決定権はレイナ自身の問題だけれど、どうせならうまくいってくれればいい。
レイナが見つからなかったら、ただここから逃げるだけになってしまう。
それはどうしたって心苦しいのだ。
こんな事に加担してしまった自分のせいだけど。
ぼんやりと考えていると目の前に勢いよく包みが置かれる。
その後の決定権はレイナ自身の問題だけれど、どうせならうまくいってくれればいい。
レイナが見つからなかったら、ただここから逃げるだけになってしまう。
それはどうしたって心苦しいのだ。
こんな事に加担してしまった自分のせいだけど。
ぼんやりと考えていると目の前に勢いよく包みが置かれる。
「とりあえず飲んできてください。このままここで腐られても後の掃除が大変なので」
「…酷い」
「…昨日でよくわかりました。確かに姫が不在でも誰にも気づかれません。どうぞご存分に。ただし…」
「…酷い」
「…昨日でよくわかりました。確かに姫が不在でも誰にも気づかれません。どうぞご存分に。ただし…」
ジョイの言葉をチャンミンが引き継いだ。
「お土産はお願いします、だろ?」
にこやかに頷いてジョイは荷物をチャンミンに預けると「昨日とは別のものがいいです」と追加注文したのだった。
バーの扉を開けた途端にドンヘが手招きする。
カウンターに案内されると彼は面白そうにチャンミンの顔を見た。
カウンターに案内されると彼は面白そうにチャンミンの顔を見た。
「えっと…チャンミン、だったよな」
「はい」
「お前、懸賞金かけられそうな勢いだよ」
「え…こいつ何かしでかしたんですか?」
「はい」
「お前、懸賞金かけられそうな勢いだよ」
「え…こいつ何かしでかしたんですか?」
慌てたキュヒョンの様子にドンヘが声を出して笑う。
「違う、違う。昨日から腕の立つ美形剣士が女の子の間で話題になってるんだよ。どこの誰だって」
その言葉の信憑性を裏付けるようにチャンミンを見つけた女性客の何人かが悲鳴のような歓声を上げる。
そちらに視線を向けたチャンミンがニッコリと微笑むと更に声が上がった。
そちらに視線を向けたチャンミンがニッコリと微笑むと更に声が上がった。
「それから、キュヒョン?お前もね」
「僕も?」
「そう。美形が連れだって来てたら目立つだろ。シウォナとユノはもうみんな見馴れたもんだし、あれでも王子だから声をかけるのはなかなか難しいみたいだけど。目新しいから目立つんだよ。しかもシウォナと親しそうだから尚更ね」
「僕も?」
「そう。美形が連れだって来てたら目立つだろ。シウォナとユノはもうみんな見馴れたもんだし、あれでも王子だから声をかけるのはなかなか難しいみたいだけど。目新しいから目立つんだよ。しかもシウォナと親しそうだから尚更ね」
シウォンの名前に何となく後ろめたい気分になる。
「王子は今日は来ますか?」
「どうかなー。来るときは毎日のように来るし、来ないとなったら一ヶ月くらいパッタリこないから。で?今日は何にする?」
「じゃあ、ワインにしようかな」
「なんか、似合うなぁ。キュヒョンも王子っぽいよねー。好きな銘柄あればいいけど」
「どうかなー。来るときは毎日のように来るし、来ないとなったら一ヶ月くらいパッタリこないから。で?今日は何にする?」
「じゃあ、ワインにしようかな」
「なんか、似合うなぁ。キュヒョンも王子っぽいよねー。好きな銘柄あればいいけど」
ドンへはそう言って笑うとメニューをおいて他のオーダーを受けに行く。
「王子っぽいって…」
「まぁ、それなりの生活と教育を受けてるから所作とか言葉遣いに出てはいるよな」
「まぁ、それなりの生活と教育を受けてるから所作とか言葉遣いに出てはいるよな」
チャンミンが他には聞こえないようにこちらに告げた言葉にキュヒョンは驚く。
自分自身ではわからない事だし、今更チャンミンがそんなことを言うとは思わなかった。
自分自身ではわからない事だし、今更チャンミンがそんなことを言うとは思わなかった。
「大丈夫だよ。お前も割りと大雑把な王子だから本物だとは思われてないはずだし」
くくっと笑うチャンミンの腰を肘で小突くと「褒めてるから」と言われたけれど実際そうなのか疑わしいばかりだ。
メニューを開くと今まで知らなかった銘柄の物を頼む。
メニューを開くと今まで知らなかった銘柄の物を頼む。
「これ、初めて見た」
そう言うと後ろから柔らかな声。
「うちの国のワインだよ。数が作れないからあまり出回らないんだ」
「シウォン王子」
「やぁ、キュヒョナ。会えて嬉しいよ」
「シウォン王子」
「やぁ、キュヒョナ。会えて嬉しいよ」
サラリとそう言われてなんだか耳許がむず痒く感じる。
「チャンミナ!」
後から入ってきたユノがチャンミンを見つけた途端に満面の笑顔で横に立つと、カウンターテーブルの上のワイングラスを見て首を傾げる。
「何?ワイン?」
「ええ。ユノは何を飲むんですか?」
「俺、あんまり飲めないんだよ。だから殆どノンアルコール」
「ええ。ユノは何を飲むんですか?」
「俺、あんまり飲めないんだよ。だから殆どノンアルコール」
昨日のユノは高嶺の花と言ってもおかしくはない程の高貴で物静かな印象だったのに、今日はまるで別人のようでキュヒョンは驚く。
けれどそれはキュヒョンだけではなかったようで店内がざわつくと同時に又もや女性の黄色い声が上がった。
けれどそれはキュヒョンだけではなかったようで店内がざわつくと同時に又もや女性の黄色い声が上がった。
「チャンミン何者」
そう言うドンへに到っては何故か爆笑している。
「珍しいよな。ユノがあんなにすぐに懐くの」
「確かに。でも剣を交えれば解るってアイツの持論からして、昨日の夜ので何か感じたのかも?」
「今日は昼も一緒だったしな」
「そうなの?え?アイツうちの衛兵志願?」
「いや、ちょっと事情があって今うちの預りになってるけど…」
「アイツ、マジで何者だよ」
「確かに。でも剣を交えれば解るってアイツの持論からして、昨日の夜ので何か感じたのかも?」
「今日は昼も一緒だったしな」
「そうなの?え?アイツうちの衛兵志願?」
「いや、ちょっと事情があって今うちの預りになってるけど…」
「アイツ、マジで何者だよ」
ドンへはそう言ってシウォンのオーダーを厨房に通しに離れる。
深くは触れないのは彼なりのルールなのかもしれない。
深くは触れないのは彼なりのルールなのかもしれない。
「で?キュヒョナは今日は何してたの?」
「…特には。ぷらーっとしてましたよ」
「それはそれで楽しそうだ」
「あ。そう言えば今年って乾期に入るのが早かったとか聞きましたけど」
「…特には。ぷらーっとしてましたよ」
「それはそれで楽しそうだ」
「あ。そう言えば今年って乾期に入るのが早かったとか聞きましたけど」
ジョンスにもシャワーは手短にねー!と念押しされたのだ。
この国の民も王家の人間にまでそこを求める気はないようで誰もそれを口にするものはいなかったがジョンスに至っては王にまで進言し、王も王で苦い顔をしながらも「分かってるよ」と了承したのだ。
ジョンスの位も立場も城に仕えている者に聞いても曖昧にはぐらかされてしまう。
本当は彼が王で、ヒチョルは影武者じゃないだろうかと疑いたくなるほどだ。
この国の民も王家の人間にまでそこを求める気はないようで誰もそれを口にするものはいなかったがジョンスに至っては王にまで進言し、王も王で苦い顔をしながらも「分かってるよ」と了承したのだ。
ジョンスの位も立場も城に仕えている者に聞いても曖昧にはぐらかされてしまう。
本当は彼が王で、ヒチョルは影武者じゃないだろうかと疑いたくなるほどだ。
「そうなんだよ。もう一か月以上降ってないんだ。二週間ほど前に最後の防火帯を作った頃にはまだ降るかと思ったんだけど…」
顎に手を当てて考えるのはどうやらシウォンの癖らしい。
「困るよね。農作物が上手く育ってくれればいいんだけど。芋ばっかり食わすわけにもいかないしさぁ」
そう言いつつどうやらジャガイモが主役であろう料理をシウォンの前に置いたのはヒョクチェだ。
「客にってこと?」
「それもだけど、家族にもだよ」
「それもだけど、家族にもだよ」
肩を竦めるようにそう言って、皿からヒョイと一つ取って口に入れた。
「リョウガの作るのは美味しいけどさぁ、毎日毎日芋だけじゃ力でないだろー?働く気力失せるだろー?」
「まぁ、分かるけど」
「まぁ、分かるけど」
乾季の間には限られた農作物だけしか作れないのは厳しい。
けれどその気候のせいでこの土地にしか出来ない薬草があるのも事実で、それなり自然と折り合いをつけて生活をしていても、こうして予想外の自然の反乱があったりするのだ。
けれどその気候のせいでこの土地にしか出来ない薬草があるのも事実で、それなり自然と折り合いをつけて生活をしていても、こうして予想外の自然の反乱があったりするのだ。
「おーじー」
足元で声がしてキュヒョンは視線を下ろす。
そこにはシウォンの足にしがみついた3歳くらいの男の子がいた。
そこにはシウォンの足にしがみついた3歳くらいの男の子がいた。
「ヘンリー、久しぶり」
「おーじ、ひさしぶりー」
「おーじ、ひさしぶりー」
にひゃっと笑った男の子抱き上げて膝に乗せるとヒョクチェが目を丸くした。
「ヘンリー起きちゃったのか」
「おきたー」
「起きる時間じゃねぇから。ほら戻って寝るよ」
「やだ」
「出たよ。ヘンリーのやだ」
「やだー」
「おきたー」
「起きる時間じゃねぇから。ほら戻って寝るよ」
「やだ」
「出たよ。ヘンリーのやだ」
「やだー」
シウォンにしがみつくようにして口をとがらせるヘンリーは、隣に座っているキュヒョンに視線を向けて笑いかけた。
ふっくらとした頬を指でつつくと恥ずかしそうにシウォンの胸に顔を埋めて笑う。
ふっくらとした頬を指でつつくと恥ずかしそうにシウォンの胸に顔を埋めて笑う。
「ヘンリー?こんばんは」
「こばんはー」
「人懐っこいなぁ、可愛い」
「こばんはー」
「人懐っこいなぁ、可愛い」
カウンターの中から出てきたヒョクチェがヘンリーに腕を伸ばす。
「ヘンリーおいで」
「いやー」
「何でだよー。ドンへの方がいいか?」
「やー」
「誰でも嫌か」
「いやー」
「何でだよー。ドンへの方がいいか?」
「やー」
「誰でも嫌か」
困ったように笑ったヒョクチェはヘンリーの頭を撫でる。
「寝るまでは一緒に居てやるから。ちゃんと寝たら明日はリョウクが作ったプリンが待ってるぞ」
「ぷりん!」
「そう。プリン。だから寝るよー」
「うぎー!」
「ぷりん!」
「そう。プリン。だから寝るよー」
「うぎー!」
厨房から顔を出したリョウクがヘンリーを見つけると手を振る。
「ヘンリー、とびきり美味しいの作ってあげるからねー!」
「あい!」
「おやすみー」
「あい!やーすみ!」
「あい!」
「おやすみー」
「あい!やーすみ!」
今度こそ納得したらしいヘンリーはヒョクチェに手を伸ばすと、そのまま大人しく腕に収まっている。
「ドンへ!ちょっと戻るから!」
「了解。任せる」
「はい、みんなにも挨拶」
「やーすみ!」
「了解。任せる」
「はい、みんなにも挨拶」
「やーすみ!」
コトリと頭を下げて店内の客に向かって挨拶をする様子に穏やかな空気が流れ、ヒョクチェも満足気に微笑むと店の奥のドアから出ていった。
「ここに居るってことはヘンリーって…」
「俺の自慢の息子。可愛いだろー?」
「俺の自慢の息子。可愛いだろー?」
ドンへが蕩けそうな笑顔でそう言った。
「じゃあドンへさんか衛兵やめた理由って…」
「あれ?俺が衛兵やってたの言ったっけ?」
「ヒョクチェさんが腕のたつ衛兵だったって。昨日の二人を止めたときに聞きました」
「あれ?俺が衛兵やってたの言ったっけ?」
「ヒョクチェさんが腕のたつ衛兵だったって。昨日の二人を止めたときに聞きました」
ああ、とドンへが笑う。
「まぁ、衛兵っていっても今のご時世形だけみたいなものだしね。体力だって落ちてくるからいつまでもは続けてられないからさ。もちろん何かあってこの国を守らなきゃならない状況になれば闘うよ?それが家族を守ることになるなら。だけどさ、今の王様もだし、シウォナが王になっても無駄な闘いなんて起きないよ」
ドンへがまるで当然のように断言する。
国民にまるで身分などないかのように接し、民もまた同じように接していながらも絶対的な信頼が存在している。
国民にまるで身分などないかのように接し、民もまた同じように接していながらも絶対的な信頼が存在している。
「シウォン王子は信用されてるんですね」
自国の王もここまでではないと思う。
父は優しくて強く、長兄も比ではない。
けれど民との信頼関係という点でだけなら敵わない気がする。
父は優しくて強く、長兄も比ではない。
けれど民との信頼関係という点でだけなら敵わない気がする。
「信用なのか?」
面白そうに問うシウォンにドンへはうーんと唸る。
「信用っていうか。俺達は『知ってる』んだよ。王も王子もそういう人間なんだってことを」
それを聞いて照れ臭そうに笑ったシウォンが今まで見てきたのとは違う年相応の表情に見えて、キュヒョンは何故か嬉しくなる。
そして自分の事のように嬉しくも感じたのだ。
そして自分の事のように嬉しくも感じたのだ。