徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説 -150ページ目

徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

SJウォンキュ妄想垂れ流し小説ブログです。 
とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

今日も見事な青空だ。
シウォンが雨が恋しいと言ったのも解る気がした。
キュヒョンがこの国に来てから雨が降った記憶はないし、深呼吸すると心なしか乾いた土のにおいがするような気がした。
 
「キツイなぁ…」
 
チャンミンに恋だと言われた感情は未だにそれを受け入れ難い気もするし、納得してしまいそうな気もする。
自分の恋愛経験の乏しさがこんなところで迷いを生み出すとは思わなかった。
何かと疲れるし、あの夢を見て以来シウォンの影が昼を彩って夜に付纏う。
そのせいでまともに顔を合わせる事すらできないのだ。
お陰で全身を耳にして気配を察知し、なるべく顔を合わさないようにしているけれど、これがとんでもなく体力と気力を消耗する。
長い階段を登って開けた屋上に出ると、風が髪をふわりと撫で上げた。
風はひんやりとしているけれど、遮るものがなく肌に触れる陽光は暖かい。
ドレスの裾が汚れる事も気にせずにその場に座ると、やっと一息つけた。
一気に押し寄せる虚脱感に意識がふわふわと揺らいで、瞼が重くなってくる。
ぼんやりと自国の方角に視線を向け、目を閉じて風を感じていると今一番自分を翻弄している人の声が聞こえた。
 
「やっぱりここに居た」
「うわっ…」
「…そんなに警戒しなくても取って食ったりはしないよ」
「…ですね」
 
キュヒョンの隣に腰を降ろしたシウォンが遠くを見たままで尋ねる。
 
「ホームシックにでもなった?」
「そういう訳では…それよりなぜここに居ると思ったんですか?」
 
さっきのセリフからしてここに居るしいう確信があったからわざわざ来たのだろう。
 
「前に案内してほしい場所でここを選んだから。その他は何も聞かなかったしね」
 
ふっと微笑んだその表情の柔らかさに思わず見惚れた。
やっぱりこの人カッコいいな。
 
「…王子ですよねぇ…」
「は?」
「そんな感じの笑みです」
「…えっと…それはどう受け止めれば…?」
 
困惑したような、それでいて少し照れたような表情が可笑しくてキュヒョンは小さく笑う。
 
「ハンサムだってことです。どんな女性でもそんな感じで微笑まれたら好きになっちゃいそうですよ」
「それは…ありがとう?」
「どういたしまして」
「じゃあ、好きになってくれればいいのに」
 
唐突なセリフに言葉に詰まったキュヒョンを見て、シウォンが吹き出した。
 
「いや…ごめん、だってさ…」
 
シウォンが笑っている理由に簡単に辿り着いたキュヒョンは自分の頬を手で押さえる。
熱い。
これはいくら何でも分かりやすすぎる。
手で自分の顔を扇ぐようにすると、シウォンの手が伸びてきて髪を柔らかく撫でられた。
 
「本当に、そう思ってるよ」
「…」
 
自分に言っている言葉ではないのだから、返事ができるはずもない。
そんなキュヒョンを責めるわけでもなくシウォンはただ微笑むだけで自分から話題を変えてくれた。
本当にいい人だな、と思う。
結局、自分が今ここにいることでこの人も傷つけるはずだ。
永久に許してはもらえないほどに。
ざわりと体が震えた。
 
「風がまだ冷たいから冷えたかな。そろそろ中に入ろう」
「そう、ですね」
 
寒いからじゃない。
怖いのだ。
この人に決して許してはもらえない程酷い事をしているという事実が。
レイナや自国のために出来る事ならと嫌々ながらも引き受けてしまったけれど。
これ以上この人に魅かれる前に離れられればいいけれど、まだ彼女が見つかったという連絡も届かない。
手を取られて城内に戻ると、なにやら慌ただしい雰囲気にシウォンが眉をひそめた。
何度か顔を見たことのある側近らしき男がシウォンに近づくとその耳元で何かを伝える。
ちらりと視線を投げられて、自分の耳には入れたくない事かと軽く会釈してその場を離れようとしたキュヒョンを捕まえたのはジョンスだった。
 
「よかった。城の外には出てなかったんだね」
「あの、何かあったんですか?」
「…山火事が起きたんだよ。防火帯も作ってあるし街までは来ないと思うんだけど、勢いがよくて。いつもより早く乾期に入ったから余計かな」
 
目を伏せるようにして苛立ったようにつま先を鳴らしているジョンスの様子も今までに見たことがないものだ。
 
「とりあえず鎮火するまでは外に出ないようにして。本当なら君を国に返してあげられるのが一番だけどこの状況だから。ごめんね」
 
彼が謝る必要など全くないのに、と思う。
 
「わかりました」
「まだ遠いけど、煙の匂いとかするかもしれないから窓を開けるのも控えておいてね」
 
キュヒョンにふわりと微笑みかけたジョンスが次に視線を向けたのはシウォンだ。
 
「…止めても無駄だとは思うけど」
 
そう言ったジョンスにシウォンはただ微笑む。
 
「ただ無事に帰ってきなさい」
「大丈夫ですよ。自分の立場は分かってますから無理はしません」
 
キュヒョンの肩をポンと叩いてシウォンは周りに指示を出しながら門に向かう。
この人は火事場に向かうつもりなのだ。
その背中に振り返ったキュヒョンは声をかけた。
 
「ご無事で!」
 
シウォンは振り向かず返事の代わりに片手を挙げると走り出した。
それをじっと見つめたままジョンスは呟く。
 
「本当にあの子は…」
「王子が火事場に向かうなんて…」
「普通はないよねぇぇぇ」
 
吐き出した言葉と溜息が混じっていて、それもまたこの状況の緊張感を薄くさせていた。
 
「でもあの子が行くことで現場の士気は上がるし、あの子が行くからこそみんなどうにかしようとするんだよ。それにあれは王の気質を受け継いじゃってるからね。止めたって聞きゃあしない」
 
肩を竦めたジョンスは気合を入れるように自分の頬を叩いた。
 
「僕も出来ることをするしかないな」
「何かお手伝いできることはありますか?」
 
キュヒョンの申し出にジョンスは微笑む。
 
「状況が変わってきたら色々お願いするかもしれないけど、今はここでシウォナを待っててやるとこくらいしかお願いできないかな」
 
そう言われては何もすることがない。
キュヒョンが自分の部屋に戻るとジョイが落ち着かない様子でテーブルを拭いていて、城内の使用人の何人かと仲良くなっていた彼女が山火事の話を聞いたのはすぐに分かった。
 
「ここの人達皆さん落ち着いてるんですけど、私は落ち着けなくて…」
 
ずっと同じ場所を拭きながらジョイが眉根を寄せる。
 
「私たちの国では山火事なんて想像もできませんもの」
「そうだよね。でも王子が出かけていったからきっと落ち着くよ」
「王子様が!?本当にこの国は私たちには理解できないことが多すぎますよ」
「文化とか仕組みが違うからね。何か僕にできることがあればいいんだけど」
 
窓の外を眺めてそう言うと、ジョイは困ったように笑った。
 
「キュヒョン様は『出来る事』があるのにそれを行使できないのですから…。この国に姫の代わりとしていらっしゃるんですもの」
「…でも、どうしようもなくなったら使う。この国の人達も守りたいんだ。だからそうなったらジョイはすぐに自国に戻るんだよ」
「嫌です。確かに私はレイナ様についてますけど、ここに来るのは自分の意志で来ましたし、キュヒョン様も大切なお方です。毒を食らわば皿まで。最後までお供させていただきますから」
 
先程まで山火事で不安そうだった彼女が、今度は命がかかっていることに対してまるで何でもない事のように笑ってそう言った。
それでもやっぱり出来れば全員が無事でいて欲しいと思うのだ。
窓の外の遠くで夜空の一部が赤く染まっているのを、今はここで見ているだけしか出来ないけれど。