徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説 -147ページ目

徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

SJウォンキュ妄想垂れ流し小説ブログです。 
とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

     ■□■□ 僕が雨ならば ■□■□ 

 

「エマージェンシー」

そんなタイトルが付けられたメールが届いたのは一時間ほど前。
普段ならそんなメールをしてこない人からだったから余計に驚いた。
差出人は「パク・ジョンス」
何事かと開くと短い文章。

 
「ごめん。キュヒョナが手に負えない。時間あるならとにかく来て」
 
ご丁寧にマップまで張り付けられている。
本当に緊急事態なら電話がかかってくるだろうけれど。
メールで、しかも時間があるならなんて言葉を使うくらいだから半分は冗談だとしても

 
「困ってるのは事実か…」
 
返信して出かける用意を始める。
こうして会おうと思えば会いに行ける。
こんな時に行っておかないとスケジュールが詰め込まれて会えなくなるなんてありがちだし。
シウォンは車のキーを手にするとドアを開けた。
 
控室の入り口の前に立っていた人物、イトゥクがシウォンの顔を見たとたんに安心したように微笑む。
 
「よかった、来てくれて」
「え…と。どうしたの?キュヒョナが手に負えないって何?」

 
親指でくいっと控室の中を示す様子に、中を覗き込むとソファにはブランケットに包まった人型。
そちらを気にしながらもいつもと変わらない様子のメンバー達。
キュヒョンの姿が見えないのはあの人型が彼だということだろう。

 
「体調良くないっていうのは聞いたけど」
「よくないどころの話じゃないんだよ。今日も酷い熱なんだ。休ませてあげたいし、あの状態ならファンだって納得はしてくれると思うから休んでもいいって言ったんだけど、出る、やる、って…。正直今はキュヒョナの存在があるのは凄くありがたいんだけど」

 
ジョンスは溜息をついて自分のつま先に視線を落とす。
 
「まだ、あれでもメンバーには甘えてくれてるとは思うけどね。それでもシウォナが一番甘えやすいみたいだし。ちょっと弱音吐かせてやって」
 
そういうことか。
 
「トゥギヒョン」
「ん?」
「呼んでくれてありがとう」
「なんで俺がシウォナにお礼言われてるの?」

 
可笑しそうに笑ったリーダーは控室のドアを大きく開ける。
メンバーに挨拶をしてソファーのブランケットの塊に近づいたシウォンは少し覗いている髪をふわりと撫でる。
もぞりと動いて顔を出したキョヒョンはシウォンの顔を眩しそうに見上げて、不機嫌そうな声を出した。

 
「なんで居るの?」
「なんでってみんなの顔を見に来ただけだけど?」

 
納得したのかしていないのか分からない表情のままのキュヒョンの頬を撫でると、ふっと息を吐きだした。
「…冷たい」
「ん?あぁ、外寒かったから…」

 
離れようとしたの手の上からキュヒョンの手が重なった。
 
「…きもちいい」
「そっか」

 
キュヒョンの肌から伝わってくる体温は確かに熱くて、冷えた自分の手に少しでもその熱を移したいと思う。
ゴホンとわざとらしい咳が聞こえたかと思うとシウォンの前にチャラっと音を立てて鍵がぶら下がっていた。
その手を辿って後ろを振り向くとイェソンが口を結んだままでシウォンを見下ろしている。

 
「ジョンウニヒョン」
「これ。バンの鍵借りてきたから。いちゃつくならそっちでやって。目障り」
「目障りって…酷いなぁ」
「うるさい。俺たちが行ってもいいけど、そっちの方が色々厄介だろ。開始十分前には携帯鳴らすから連れてって」

 
ぼそりとシウォンにだけ聞こえるほどの声で付け加えられる。
 
「スタッフに心配されるのも気を使いそうだし」
 
こくりと頷くと鍵を押し付けて笑う。
 
「ちゃんと暖かくして、水分補給もさせといて」
「了解。キュヒョナ、動ける?移動する?」
「うん」

 
怠そうに起き上がったキュヒョンは部屋の中の面々に安心させるように少し微笑むと、ちょっと寝てくるね、と一言残す。
被っていたブランケットを羽織るようにして立ち上がったキュヒョンの肩を抱くようにして控室を出ると地下の駐車場に停められているバンの鍵を開けて乗り込んだ。
エンジンをかけて空調を効かせる。
地球には非常に優しくはない行為だけど今日だけは仕方ない。
一番後ろの席にキュヒョンを座らせて、離れようとしたシウォンのシャツの裾がぐっと引っ張られた。

 
「…どこ行くの?」
「水もらいに行ってくるだけだよ。エアコン付けると乾燥するし、キュヒョナ汗かいてるだろ?」

 
納得したように握られていたシャツが離されただけで、寂しいような気分になるから自分でも可笑しくなる。
スタッフに声をかけて常温のミネラルウォーターとスポーツドリンクをもらってバンに戻ると上体を倒して横になっているキュヒョンに近寄る。
熱のせいか普段よりも赤みの差した頬にスポーツドリンクのペットボトルから水滴が落ちた。
水は常温だったけれど、こちらは「今入れたところなのでまだ冷たくはないと思います」と氷の入ったクーラーボックスから出してくれたものだったから、多少の水滴がついて居たままだったのだろう。
キュヒョンがふわりと瞼を開ける。

 
「…雨?」
「ごめん。冷たかったよな」
「大丈夫」

 
上体を起こして隣にシウォンが座れるように場所を空ける。
 
「寝てていいよ」
「寝るから。座って」

 
ポンとシートを叩かれてシウォンはその場所に腰を降ろすと、キュヒョンがその肩に頭を乗せる。
もぞもぞと動いて、落ち着きのいい場所を見つけたのかそのまま目を閉じた。

 
「…雨、なんだよね」
「ん?」
「コンサートするとき。雨が多くて」

 
嫌になる。
そう呟くと堰を切ったようにキュヒョンが小さな声で話し出した。
雨が嫌いなわけじゃないけど、やっぱり晴れていた方がいいじゃないか。
なんだか体も頭も重い気がするし、来てくれる人たちだって雨の中より晴れてる方がいいだろうし。
なんだか天候に歓迎されてないような気になってくるし。
なんで雨なのさ。
そこまで喋ってふぅっと息を吐く。
多分本当は雨なんてどうでもよくて。
歌うこともそれ以外の仕事も真摯に取り組んで。
少しばかり疲れた時に文句を言うこともなく、人に当たるわけでもないのなら天候くらいにしかかぶつけられないだけなんだろう。
それならば誰も傷つけなくて済む。

 
「でも、恵の雨だってあるよ」
「わかってるけど」
「だったら、今度雨が降ったら俺がキュヒョナに会いに行ってるんだと思うとか」
「…普段、会にも来ない人が良く言う」
「キュヒョナだって電話でてくれないじゃないか」
「…まぁ」

 
ほんの少しだけ口角を上げたキュヒョンが熱のせいか珍しいことを言った。
 
「それなら少しは雨も好きになれるかな…」
 
安心したような深い呼吸になるべく肩を動かさないようにして顔を覗き込んだシウォンが微笑んだ。
今、彼が必死で戦って守ってくれている自分たちの場所は、次に彼のために自分たちが守る場所になる。
だからこそほんの少しくらいはゆっくりしたっていいじゃないか。
キュヒョンが安心して眠ってくれているのなら、それだけで自分が今ここに居る意味がある。
暖房で温まった車内の気温と隣からの呼吸音、それらが思考にふわふわと靄をかける。
うとうとと微睡んでいると、モバイルが振動した。

 
「…はい」
『もうそろそろ時間。少しは寝られた?』

 
時計をみると30分ほどは眠っていたのだろう。
 
「うん、少しはね。キュヒョナ起こしてそっちに行くよ」
『よろしく。そんなに急がなくても大丈夫だから』

 
凭れ掛かっているキュヒョンを起こすと、唸りながら体を伸ばす。
 
「大丈夫か?」
「うん。だいぶ楽になった」

 
確かに顔色も随分とマシにはなっている。
それでも体温はあまり変わっていないようだけど。

 
「キュヒョナ、キスしていい?」
「…うつるよ?」
「どうせ風邪じゃないんだろ?過労とか知恵熱とかその辺り?」

 
呆れたような顔をしつつも否定しないあたりが正直だ。
柔らかく触れると、じれたように背中に手を廻された。
唇を緩く噛んで、舌を絡ませる。
あぁ、やっぱり熱いな。
甘く蕩けるキュヒョンを堪能して、離れると解けた唇から熱い吐息が零れる。

 
「シウォナ、口の中まで冷たいね」
「キュヒョナが熱いだけだよ」

 
ふふ、と笑ったキュヒョンがぎゅっと抱き着いてきて、失敗したなと思った。
これは離しがたい。

 
「…どうしよう、このまま連れて行こうかな」
「楽だけど、ヤダよ」

 
ふわりと離れたキュヒョンが笑う。
どんな表情も綺麗で可愛いけれど、やっぱり笑顔は格別だ。
舞台袖に一緒に行くと、他のメンバーが手を伸ばしてキュヒョンを呼んだ。

 
「行ってくる」
「ん。ここで見てるよ」
「うん」

 
自分の手からすり抜けていく指が、こちらの手の甲を撫でるように離れていく。
光の中に出ていくキュヒョンはやっぱり眩しくて。
もしも、自分が雨だとしても、きっと彼の光で虹になれる。
だから自分は強くなる、それで彼が笑えるなら。
どんな世界でも。
どんな未来でも。
きっと大丈夫。