「生物学上は俺がシウォナの母親でヒチョルが父親ってことになるんだよね」
意図的に隠されたもの。
キュヒョンの疑問にジョンスが答えるが、聞いたところで【どういうこと?】に変わりはないところが恐ろしい。
「シウォナが言ってたけどキュヒョンは書庫の異変にすぐに気が付いてたって。最初は違和感くらいの事だけど、すぐに何が足りないか気づくんじゃないかって教えてくれた」
確かにその通りだ。
違和感はすぐに確信になった。意図的に隠されたもの。
「この国の歴史関係の本が…30年ほど前から無くなってました」
ジョンスは頷くと「君は聡いね」と笑う。
この国には昔から女児の出生率が極めて低かった。
今でこそ笑い話にしかならないが、本気で魔法使いの国だと信じられていたせいで他国からの嫁入りもほとんどなく人口は減っていく一方だ。
今でも昔からの言い伝えのせいで親族に反対されこの国に嫁入りする女性は多くはないらしい。
そうなると必然的に男性同士のパートナーが増えた。
そこで同性同士でも子供を作ることが出来ないかという研究が進んだのだ。
今でこそ笑い話にしかならないが、本気で魔法使いの国だと信じられていたせいで他国からの嫁入りもほとんどなく人口は減っていく一方だ。
今でも昔からの言い伝えのせいで親族に反対されこの国に嫁入りする女性は多くはないらしい。
そうなると必然的に男性同士のパートナーが増えた。
そこで同性同士でも子供を作ることが出来ないかという研究が進んだのだ。
「嘘みたいな本当の話。それが出来るようになった。ただ当然体の負担は大きいよね。不安だって大きい。どんなに上手くいくと国が推奨したところでそれを受け入れるのは難しい。そんな時にね。ヒチョルがとんでもない事を言い出した」
『だったら俺が受け入れて、安全性を広めればいいんだろ?簡単じゃねぇか』
「簡単じゃないよねぇぇぇ!? こいつの頭沸き過ぎだわと本気で思ったよ!? 後には一国の主になるんだから他国からでも嫁貰えよって話だよねぇ!?」
「今更ながらにひでぇ言われようだな」
「正論だよ」
「確かに正論だな」
「今更ながらにひでぇ言われようだな」
「正論だよ」
「確かに正論だな」
ケラケラと笑うヒチョルに呆れたような視線を向けてジョンスは大きく溜息を吐いた。
「しかも前国王に『心配しなくてもこの国の医療は信頼していいと思ってるし。産むのは俺じゃないし』とかシレっと言ってくれちゃって。しかも王は王で『それもそうだな』とか二人で妙な納得しててさ。しかもその後二人で俺を見るんだよ?はい?俺ですか?俺なの?冗談じゃなくて?ってなるこっちの心情解ってくれる?」
「適任だろ。そうすれば誰にも何の文句も言われず、寧ろ功績者としてお前ずっとここに居れるし」
えぇっと。
なんだ。
これって。
なんだ。
これって。
「お二人で…いやほぼ母上の盛大な惚気はそれくらいにして」
微苦笑を浮かべてシウォンがそう言うと、ジョンスは心外だとばかりに肩を竦める。
でーすーよーねー!!
やっぱりそうですよねー。
キュヒョンは心の中だけ激しくシウォンに同意した。
でーすーよーねー!!
やっぱりそうですよねー。
キュヒョンは心の中だけ激しくシウォンに同意した。
「そういう理由があってこの国では男の王妃がいるっていう今までにはあり得ない状況になったんだよ。当然同性婚も問題ないし。そんな環境だからねシウォナは君みたいに性別に拘りなんて感じてない」
「でも、レイナと勘違いしてたとか…」
「ないよ」
けれど王家同士の婚姻はやはり結びつきを固くするものだ。
どちらの国にとっても悪い話ではない。
一行目から共犯者になってもらいます。と書かれた手紙はそれでも自分の息子に対する愛情が詰まっているものだった。
シウォンがキュヒョンの事を想ってくれているのは会ってその誠実な態度や言葉で理解は出来たものの、やはりそういった文化のない国の人間には受け入れがたいこと。
しかもキュヒョンの国では王家の男子は他国に出ることを許されていない事。
全てを以てキュヒョンがその国に嫁ぐという事は不可能であること。
最もな内容に納得するしかないはずだった。
しかし、と書かれていたその先に目を通すまでは。
世の中には常に例外というものが存在し、キュヒョンという人間そのものがこの王家では例外に当たる。
そのせいでキュヒョンは子供の頃から自分という人間を疎ましい存在だと思っているところがある子だ。
キュヒョンは誰からも愛される心優しい子だからこそ、一部の心無い言葉に傷付き続けてきた。
そうして彼を非難する人間がいるのなら、キュヒョンが幸せであるべき選択をさせてあげたい。
『そうして非難する人達はキュヒョンがこの国を出る事も非難するんでしょうけれど。だったらどうして受け入れようとしないのか全く理解できないわ』
多分彼女なりの最大の怒りなのだ。
「でも、レイナと勘違いしてたとか…」
「ないよ」
シウォンがきっぱりと言い切る。
「子供の時から君を迎えに行くって決めてたんだから」
蕩けるように微笑まれて、ざっと体中の血が沸くような感覚がする。
その様子にヒチョルとジョンスが顔を見合わせた。
「子供の頃の話は覚えてるの?」
ジョンスに問われて頷く。
正確には思い出した、だけれど。
「後でジナから『私の可愛い王子があなたの王子にプロポーズされたのだけど、本当に将来迎えに来たらどうしようかしら』って冗談めかした手紙が来たんだよ。こっちも可愛いなぁくらいの気持ちだったんだけどね。君たち兄妹の成人のお披露目の時にねシウォナが君を見付けて『やっぱり迎えにいかなきゃ』って言いだしてね。こっちも何のことだか最初は解からないままだったんだけど」
「あぁ。『あら、本当に迎えに来ちゃったのねぇ』って笑ってらっしゃったのはそういうことか」
シウォンの言葉にジナの口調や様子がありありと想像できたキュヒョンは頭を抱える。
いや、それより。
「シウォン王子は母上に会ったことが…?」
その答えはジョンスがくれる。
この国とキュヒョンの国は昔から決して関係は悪くはない。けれど王家同士の婚姻はやはり結びつきを固くするものだ。
どちらの国にとっても悪い話ではない。
「レイナ姫も可愛くていい子そうだし彼女はどうかと説得はしたけどシウォナは頑なにキュヒョン王子じゃないなら結婚はしないって言いだすし、しまいには君の国の国王とジナに直談判する始末だよ。何度目かにシウォナがジナから手紙を預かって来たんだ」
その手紙には国王の捺印があった。
つまりは王家の総意であると言うことだが、それはあまりにもジナの悪戯心が見える手紙でジョンスも最初は本気かどうか悩んだらしい。一行目から共犯者になってもらいます。と書かれた手紙はそれでも自分の息子に対する愛情が詰まっているものだった。
シウォンがキュヒョンの事を想ってくれているのは会ってその誠実な態度や言葉で理解は出来たものの、やはりそういった文化のない国の人間には受け入れがたいこと。
しかもキュヒョンの国では王家の男子は他国に出ることを許されていない事。
全てを以てキュヒョンがその国に嫁ぐという事は不可能であること。
最もな内容に納得するしかないはずだった。
しかし、と書かれていたその先に目を通すまでは。
世の中には常に例外というものが存在し、キュヒョンという人間そのものがこの王家では例外に当たる。
そのせいでキュヒョンは子供の頃から自分という人間を疎ましい存在だと思っているところがある子だ。
キュヒョンは誰からも愛される心優しい子だからこそ、一部の心無い言葉に傷付き続けてきた。
そうして彼を非難する人間がいるのなら、キュヒョンが幸せであるべき選択をさせてあげたい。
『そうして非難する人達はキュヒョンがこの国を出る事も非難するんでしょうけれど。だったらどうして受け入れようとしないのか全く理解できないわ』
多分彼女なりの最大の怒りなのだ。
「それでね。ジナはそのままこの国に来てもらうってなるとキュヒョンがまた自分が他の兄弟と違うからこの事態になったんだと気に病むかもしれない。本当に必要とされてそこにいるんだと思えないはずだからレイナ姫の身代わりって名目でここに君を送り出してくれた。後のことはシウォン次第だって。だから時間にも区切りをつけたんだ」
無理なら逃げればいいと言ったジナとジョンスの言葉はそのせいだったのか。
首を傾げるような事柄も話を聞けば納得するしかない。
「あれ?…じゃあレイナは…」
「レイナ姫も共犯ってことになるね。寧ろ彼女は協力的だったよ。キュヒョンが幸せを選択できる機会があるのならって」
本当にどうして…レイナもジナもキュヒョンのことになると我がことのように考えてくれる。
彼女たちもキュヒョンのせいで辛い思いをしたのにと、ジワリと目元が熱くなった。