80年代から90年代に掛け流星の如く現れたスターがいた。フリオ・セサール・チャベス(メキシコ)。

Jライト級、ライト級、Jウェルター級の3階級を制覇。最多世界戦出場数37回。PFP最強クラスだった。

強打とテクニックを誇り、打たれ強く、無尽蔵のスタミナも兼ね備えた。好戦的でインファイトに強く、攻防両面で強みを見せた。


84年、マリオ・マルチネスを8回TKOに降しJライト級王座獲得。その後ルーベン・カスティージョ、ロジャー・メイウェザー、ロッキー・ロックリッジ、ファン・ラポルテら強敵に勝利し9度防衛。


階級を1つ上げ87年、プエルトリコのパンチャー、WBA王者エドウィン・ロサリオと対決。ロサリオに強打を的確にヒットしダメージを蓄積させ11回TKO勝ち。ライト級王座獲得。この試合はキャリア最高峰の出来だった。その後ホセ・ルイス・ラミレスを11回負傷判定で破る。ロサリオ、ラミレスと立て続けに強豪に勝ち、チャベスはキャリア絶頂期を迎えた。


また階級を上げ89年、メイウェザー叔父と再戦。初戦は一撃で沈めたチャベス。再戦相手は慎重に振る舞うが徐々にチャベスが圧力をかけ10回終了後にメイウェザーが棄権。TKO勝ちでJウェルター級王座も獲得。


90年、IBF王者メルドリック・テーラーと対戦。これまで68連勝のチャベス。対するは25戦無敗の五輪金メダリスト、テーラー。試合はチャベスの強打をテーラーが抜群の技巧で完全に封じ込む流れで、終始劣勢を強いたチャベス。大幅にポイントでリードを許し迎えた最終12回。敗色濃厚の中捨て身の猛攻に出て終了20秒を切った所で遂にダウンを奪う。辛くも立ち上がったテーラーだがレフェリーストップがかかり、大逆転のTKO勝ち。残り2秒で逆転KOしキャリア最大のピンチを潜り抜けた。


92年にはヘクター・カマチョに判定勝ちし9度目の防衛。

93年にはグレグ・ホーゲンに5回TKO勝ちし10度目の防衛。この試合は13万人を超える大観衆の中行われた。


93年、ウェルター級タイトルマッチ。87勝75KOの戦績を引っ提げWBC王者パーネル・ウィテカーに挑戦。32勝15KO1敗の王者は、ラミレスに勝っていたと言う声も多く実質無敗とも言える選手。手数を出しながらディフェンス重視のウィテカーに明らかにやり辛そうなチャベス。フルラウンドの激闘の末、引き分け。ただ分が悪く、この試合はチャベスの実質敗けとも言える。何とかジャッジに救われ命拾い。そろそろ衰えの兆候か。階級を戻しJウェルター級王座12度目の防衛戦をクリア。


94年、フランキー・ランドールと対戦。11回、ランドールのストレートをまともに貰いキャリア初のダウン。フルラウンド激闘の末判定敗け。王座陥落、キャリア初黒星を喫した。無敗記録は90でストップ。チャベスの敗北は世界中に衝撃を与えた世紀の番狂せだった。その後再戦で8回負傷判定勝ちで王座を取り返した。


96年、若きスター、オスカー・デラホーヤと対戦。出血が止まらず4回TKO敗け。キャリア初のKO敗けだった。大いに衰えを感じさせた。


98年、ミゲール・アンヘル・ゴンサレスにやや分が悪く写る引き分け。そしてデラホーヤと再戦するが、8回終了TKO敗け。

2000年、強打者コスタヤ・ジューに6RTKO敗け。完全な終焉に見えたが、ここでは引退せず。


2005年の試合を最後に引退。


115戦107勝(85KO)6敗2分