彼女の存在の大きさに気がついたのは彼女との曖昧だった関係に終止符を打った後だった。何気ない別れだと思っていたのに…別れと言っても別に付き合っていなかったし会えなくなる訳ではない、そう思っていたのに虚無感と喪失感に襲われた。俺にとって彼女の存在意義は何だったのだろうと考えた。支えだったのだろうか?依存していたのだろうか?そもそも好きだったのだろうか?そこに愛は存在していたのか?YESのようでYESとは言い切れない。だから曖昧な関係だったのだろう。ただ話はしたような気がする。腹のうちも全てと言えば嘘になるが向き合うことってあーゆーことなんだろう。話をして…されて互いをわかる。話すことで彼女を介して自分が投影される。そんなことにこの歳になって初めて気がついた。
独り身が長かったせいか俺は随分自分勝手に人生を歩んでいたようだ。そんなことも気付かせてくれたのは彼女。彼女の胸は俺が唯一安心できる居場所だった。でも好きかどうかがわからない…。
「それだけ理由があればいいんじゃないの?それであなたはどうしたい?」
飲み仲間の女友達に言われた。俺は…俺は彼女と一緒に暮らしてみたい。一緒に過ごす中でもっともっとお互いを知り自分を知り一緒に成長していきたい。
「じゃあそれを伝えに行きなさい。」
いつもはただの愚痴の言い合いの仲なのにこんなにも頼もしいとは…だから一緒に呑む酒が美味いのだろう。
そんな後押しもあり、前回のように電話で済ませてはいけないと思い彼女に会う約束を取り付けることにした。今実家にいて更にそこから旅行に行くらしい。話は何かと聞かれたが会って話したかったから戻ってきてから話すと伝えた。
何の疑いもなく彼女が帰るのを待っていた。いや、なかったわけではない。約束していた俺の誕生日プレゼントが買えないくらい金欠だと言っていた彼女に旅行など行く余裕などないハズ。。お母さんか誰かと行くのだろうとその時はあまり気にもしなかった。今思うと俺の誕生日だったからこそ…。
10日ほど過ぎた頃連絡してみた。互いの家に少量ではあったが荷物が残っていたので受け渡しする意味もあり会うのは必然だと思っていた。けど彼女は一向に会う約束は取り付けてくれなかった。ほんの30分…いや10分でいいからと言っても無駄だった。
何日かして想いが募った俺は…いや思い詰めた俺は強行手段しかないと判断し彼女のアパートに出向いた。彼女は帰宅しておらずメールをしても帰ってこない、しょうがなく近くのコインPARKINGで帰りを待つことにした。犯罪めいてる気がして近所の目や通りすがる人影が気になって終始落ち着かなかった。
何時間過ぎたのだろう?彼女からメールがきた。話があるなら電話にしてくれと…。俺がそこいるのが非常に迷惑らしい。俺が今そっちに行くということも拒否された。理由を聞くと彼氏と一緒にいてアパートも一緒に住んでるから困るとのことだった…。
ちょっ、ちょっと待て。あまりにも予想外で俺は動転した。意味がわからなかった。それが事実だとしても受け入れ難かった。でもそうだと考えると散りばめられていたパズルが合致してくる。プレゼントをくれなかったこと。旅行にいったこと。会ってくれなかったこと…。見たくはない一枚の絵が完成した…。一体いつから…。俺たちが離れて一ヶ月くらいしか経ってないのに。。
何時間か前から一匹の野良猫が俺の前に座っていた。俺と猫との距離は微妙に遠くて俺の何mか先の正面にあいつはずっと座っていた。あいつも誰かを待ってたんだろうか?とにかく独りで待つよりは全然心強くていつの間にかその猫に名前を付けていた。
「トラ、ありがとな…」
自分の想いを伝えれぬまま俺はその駐車場を去った。朝が訪れようとしていて空が暗い紫色だった。