袖山さんがえらいこと考えました。

 

袖山さんてのは幻冬舎(出版社)の編集者さん(けっこう偉い)。

 

僕の出版した『超現代語訳』シリーズや






 西野さんの絵本をずっと担当されてる敏腕編集者です。





そんな敏腕さんが、えらい事言い出しちゃった。


ことの発端は、僕が『超現代語訳幕末物語』の
"しるし本"
を作ると言い出したことに始まります。



"しるし本"、"しるし書店"、てのはですね……



「本は、一度読んでしまうと値段が下がってしまいます。しかし自分の人生に影響を与える人が、付箋を貼ったり、線を引いたり、メモを書いたり、"しるし"を入れた本は、むしろ、定価より高い値段でも手に入れたい人がいるのではないでしょうか?

"店主がしるしを入れた、世界に一冊だけの本を売る古本屋さん"

しるし書店は、そんな"しるし本"を扱う本屋さんです」

(↑『しるし書店』の紹介ページから引用)



このように"店主の視点"を売るのが

しるし書店(←こっから入れるよ)

で、そこで売られているのが、

しるし本

というわけですね。


以前、ブログにも書いたんでよかったらどうぞ。




僕がやったのは、著書、
「『超現代語訳幕末物語』にしるしを入れる」
という作業。

書いた本人が、"しるし"を入れて、

「著者本人の視点を盛り込む」

ということをやろうと思ったんです。



本編に入りきらなかったエピソードや、制作途中の裏話。
思い入れがある部分や、文章を書くときの自分なりのテクニック。

そんなものをぶち込んだ一冊、

「『超現代語訳幕末物語』完全バージョン」

を作ることに決め、数日間(数週間?)かけて、自分の本にしるしを入れておりました。←これが約1ヶ月前のことです。


そんなとき、僕が"しるし本"作っていることを聞きつけた袖山さんは、こんなことを言い出しました。


袖山「房野さん、『幕末物語』のしるし本を作ってるんですよね?」
房野「はい、作ってます^ ^」
袖山「それ……


私が買い取ります!


房野「へぃ?」



私が……買い取ります?


何を言い出したんだ袖山さん。


著者が作ったしるし本を、

編集者が買い取る……。


いくら愛情を注いだ本だからって、私物化したんじゃなんの意味もない。


多くの人に読まれて、誰かの宝物になってこそ、本に命が宿るってもんだろ。


どうしたんだ袖山さん。


昔のあんたはそうじゃなかった。


入社した頃を思い出してくれ。


「私!自分が担当した本が、日本中全ての人に読んでもらえるのが夢なんだ!いつか絶対、この夢を叶えてみせるんだから!」


そう息巻いていたあの頃の袖山さんは、一体どこにいっちまったんだ。


なぁ、袖山さん。


背中がすすけてるよ……。




↑これは今考えた妄想なんで、その時はビタ一文こんなこと考えてないんですが、それでも「?」が残り続ける房野に袖山さんは続けます。



袖山「房野さんが書いたしるし本に、私がさらに"しるし"を書き込んで、編集者の視点もプラスするんです!」
房野「ん? それって……」
袖山「で、それをあらためてしるし書店で出品するんですよ!」
房野「出品……袖山さんの私物にするんじゃ…なくて…?」
袖山「そんなことするわけねーだろタコスケ!(こんなことは言ってません)」
房野「て、ことは……"著者の視点"と、"編集者の視点"が入った、しるし本初の夢のコラボだ!!



てな会話があったんです(これも誇張してますがね)。



そこから、数日経ち、しるし本の経過を袖山さんに見せると……



袖山「(制作途中のしるし本をパラパラとめくり……)え、スゴい……!!これ房野さんスゴい!!!
房野「ありがとうございます!」
袖山「ダメ!これはダメ!!」
房野「え、ダメなんすか?」
袖山「スゴいからダメです!!」
房野「……全くわかんねーす」
袖山「こんなにスゴいしるし本に、私が"しるし"入れちゃダメ!!これはこのまま出品するべきです!!!」
房野「ふへ?」




袖山さん、何を怖気づいてんだ。


昔のあんたはどこにいっちまったんだ。


「私、とにかく本がだーい好き!! 読んで欲しい本を売るためなら、たとえ世界が滅んでも構わないわ!」


あの頃のあんたはどこにいっちまったんだ。


なぁ、袖山さん。


背中がすすけてるよ……。




↑こんなことは一切思わなかったんですが、房野は言います。


房野「いや、大丈夫ですよ!袖山さんの赤字が入った方が価値上がりますって」
袖山「いやー、これはこのままの方が……」


なんて会話を繰り広げながら、房野のしるし本は遂に完成します。


で、もちろん出品。



価格は、




100000円




本当にありがたいことに、購入希望者の方が現れてくれたのですが、それでもやっぱり……という思いが捨てきれません。


房野「袖山さん、やっぱり袖山さんの"しるし"入れた方が良くないすか? この本の価値がグッと上がると思うし、みんなもそっちの方が喜んでくれると思うんですが?」
袖山「んー……」


袖山さん、あんた



(中略)



背中がすすけてるよ……。




↑断っておきますが、袖山さんの背中はすすけてません(てか、すすけてるって何?)




渋ってた袖山さんですが、最終的に2人の話し合いで、

「そんなバリバリは書き込まず、例えば付箋を貼って、そこに袖山さんの注釈を入れる」

という感じに落ち着いたのです。



だからいったん、、、





袖山さんが購入。



他に手を挙げてくださった方には本当に申し訳ないのですが、細部まではしゃべらず、キチンとお断りのメッセージをお送りして、担当編集者である袖山さんがこの本を購入。




というわけで、


『超現代語訳幕末物語』完全バージョンは進化して帰ってきます。



当初の袖山さんのアイデア通り、


著者と編集者がしるしをつけた、



『超現代語訳幕末物語』完全バージョンスーパー


という、クソダサい名前で帰ってきます。



みなさん、袖山さんがしるしをつけ終わるのを、首を長くしてお待ちください。
(スゴく忙しい人だから、急かしちゃダメだよ)