というタイトルの文庫本が発売されます。
自己紹介が遅れました。
よしもとクリエイティブ・エージェンシーにて、ブロードキャスト!!というコンビで活動をしている房野史典と申します。
戦国時代や幕末が好きで、趣味が高じて、本を2冊出版しております。
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「本屋で見かけたことある!」
「Amazon検索してたら出てきた!」
「知り合いがSNSで投稿してた!」
「1ミリも知らねーぞ……」
様々なご感想をお持ちでしょうが、上記2冊の著者をやらせていただいております。
そんな私が、この度趣味が高じすぎて、新しい本を出すことになりました。
それが既出のコチラ↓
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でございます。
と。
に代表されるように、"怖い人"みたいなイメージが先行する人の方が多いかもしれません。
比叡山焼き討ちしてる。
神仏を恐れない所業。
自分に歯向かう者は、女、子供でも容赦しない。
数万という人間を殺している。
気にくわない部下がいるとリストラする。
パワハラ。
殺す。
独裁者。
殺す。
冷酷。
殺す。
とにかく殺す。
どこまでいっても残忍で、非道いことをする人。
やはりこれが信長につきまとうイメージだと思います。
しかし、意外と言ってはなんですが、信長にも心温まるエピソードや、優しい側面をのぞかせるお話がけっこう残ってるんです。
その一つを紹介しますので、読み終わったら「意外だな」って言ってください。
もちろん言わなくても大丈夫です。
このエピソードに関係してくるのは、
豊臣秀吉
と、
その妻のねね(”おね”とか”ねい”とか、呼び方が定まってませんが、ここでは”ねね”でいきます)。
秀吉が、”羽柴藤吉郎秀吉”と名乗り、信長に仕えていた頃のお話です。
信長のもとでどんどん出世をしていき、ついには長浜城(滋賀県)というお城を築き、一国一城の主となった秀吉。
それから数年後、
信長は信長で安土城(滋賀県)という、とんでもなく豪華なお城を造り始めます。
そんな信長のもとを、秀吉の妻・ねねが訪れてきた時のことです。
来訪の理由は、
「長浜の土地を与えてもらったことへの、あらためてのお礼」
であったり、
「そんなこんなでひさびさにご挨拶来ましたー」
的なものだったと思います(おそらく)。
そこで信長とトークするねねさん。
話題はだんだん、夫・秀吉の浮気癖について展開していきます(おそらく)。
ねね「あのチビザル、私に対して不満とか言いやがるんです! どのツラ下げてコメントしてんだって感じです! それでさらに浮気まで!! マジで『は?』です。バリうざです。テメーの顔面確認してから、ナメたまねしろ! って言いたい! それに…」
信長に思いっきりグチるねねさん(セリフは全編想像です)。
不満が溜まりに溜まっていたのか、信長の「最近どう?」的な誘い水があったのかはわかりませんが、夫の上司に夫の浮気性をブチまけます(おそらく)。
しかもただの上司じゃありません。
今で言う、夫が勤める会社の社長に対し。
さらに言うと、自ら第六天魔王を名乗り、自他ともに認める殺戮の王者(そんな風に思ってたかは知らないけど)、
織田信長にです。
従来の信長のイメージからいくと、
「しょーもない話を聞かせて、オレの耳を汚すな」
なんて言って、その場でねねをバッサリ斬っても不思議じゃありません。
斬るのは行き過ぎにしても、部下の夫婦の痴話げんかなんかには、1ミリも興味を示さないに決まってる。
では、実際の信長はどう対応したか。
ねねさんにお手紙書いてます。
彼女が訴えたことに対し、手紙で丁寧に返答してるんです(ねねさんが信長を訪ねた時期や理由、秀吉の浮気をグチった、というのがなんとなくわかってるのは、この手紙が残っているから。逆に言うと、この手紙からしか推察できないから、全部”おそらく”です)。
この時点で残虐非道な信長のイメージ変わりませんか?
今よりも上下の関係がうん! っと厳しい時代に、部下の奥さんに、しかもプライベートな悩みに対し、手紙を送ってるんです。
そして、その内容がこれまた想像とはズレると思うので、ひとまずご覧ください。
「この度はこの地を初めて訪ねてくれ、お会いできて嬉しかった。
特に、様々なお土産を持ってきていただき、その美しさは素晴らしすぎて、ここでは書き尽くせないほどです。
祝儀代わりに、こちらからも何かを差し上げようと思いましたが、あなたからの品物があまりに見事なので、この気持ちを表せる手段がなく、今回は品物を贈るのをやめておきます。
次に来られた時に、お返しをしようと思います。
とりわけ、あなたの見た目、容姿が、以前お会いしたときより10のものが20になるほど美しくなっている。
藤吉郎(秀吉)があなたに対し、しきりに不満を漏らしているとのこと、言語道断けしからんことだ。
どこを探し回っても、あなたほどの女性は、もう二度とあのハゲネズミ(秀吉)に見つけることはできないでしょう。
ですので、これからは、立ち振る舞いに十分注意し、いかにも奥さんらしくドッシリ構えて、嫉妬に狂ったりしてはいけません。
ただし、旦那を注意するのは女性の役目なので、言うべきことを全部言ってしまわないように取り扱うのがいいでしょう。
なお、この手紙を羽柴(秀吉)に見せるようお願いします。」
紳士。
バリバリに心優しいジェントルマン。
行く手をさえぎる者を八つ裂きにしていく人が書いたとは思えない。
それほど相手のことを思いやった文章です。
会えた喜びから始まり、お土産の素晴らしさを褒めるという細やかな配慮。
「お返しが思いつかないから今度また」
は、イコール
「またいつでもおいで」
をほのめかしている文だと思います。
そして、話題はねねさんの美貌に移り、
「元からキレイだったのに、今は倍になるくらい美しくなっている」
と褒めちぎります。
さらに、
「ハゲネズミにはもったいない」
と、秀吉をディスった上で、
「あなたはそれほど美しい」
の強調。
現代の日本人男性で、ここまで堂々、かつ、さりげなく、女性を褒めることのできるフェミニストが一体何人いるんでしょう?
もちろん、キッチリ秀吉のことも怒っています。
で、ここからが信長の腕の見せ所です。
散々ねねさんの言い分を全肯定した上で、彼女の改善点をつついています。
「オレはあなたの味方だ」を植え付けといて、ねねさんに聞く耳を持たせる態勢を作ってるんですね(多分)。
「旦那のグチをわめき散らすなんてみっともないよ。あなたは美人なんだから堂々としてればいいんだ。夫に対して文句を言うのはいいけど、思ってることを全部言ってしまわない方がうまくいく」
と、ねねさんを軽くたしなめてます。
しかしこれにしても
「夫婦仲をコントロールできるのはあなたなんだよ」
と、ねねさんを立ててるようにも捉えられる文です(ちと言い過ぎかな)。
手紙の締めくくりには
「この手紙を秀吉にも見せといて」
という一文と、
そのあとには『天下布武』の印が押されています。
『天下布武』は信長の掲げるスローガン。
その印が押されてるってことは、なんとこの手紙、”公式文書”なんです。
部下のプライベートな問題に公式文書。
権力使ってねねさんの味方です。
ビビったと思います、秀吉。
ねね「これ読んでみろ!」
秀吉「なんだやぶからぼーに。この手紙がどう……え、信長様!? ………メッチャ怒られてる……しかも正式な”命令”として……」
ねね「(『どうだ』の表情)」
秀吉「なんだその勝ち誇った顔は!」
ねね「わかったか! こっちにゃ信長さんがついてんだよ!」
秀吉「うっせー! オメーもちょっと叱られてるじゃねーかよ!」
ねね「うっせー! ちょっとだろが!」
この会話はデタラメにしても、ねねさん「アガる」、秀吉「ヘコむ」の構図はあったかも。
ただ、秀吉にしてみれば、正式な命令にされたことで、ねねにボロクソに言われて生活を改めるより、
「まぁ、信長様の命令なら仕方ねーな」
と、ギリギリのプライドを保つことができたかもしれません。
いかがでしょう。
「意外だな」いただけたでしょうか。
信長は、政治でも戦いでも当たり前を疑い、昔ながらのやり方が理にかなってなければ、即座に違う方法を求めた武将です。
その姿勢は人とのコミュニケーションにも表れています。
身分の低い者とも普通に会話したし、能力があれば重要な仕事も任せる。
秀吉はまさにその典型例です。
肩書きや身分で人を判断せず、その人間の本質を付き合っていた信長。
確かに、権力を隠れみのにしているヤツからすれば、怖い存在だったでしょうね。
信長にはその手の威圧が一切通じないんですから。
逆に言えば、道理が通ったことを主張する人の話にはいくらでも耳を傾けるし、その人のことを守ってあげたりもする。
それがたとえ、自分に全く関係のない”夫の浮気話”だとしてもです。
合理主義者の信長は、家庭がゴタついた秀吉が仕事に支障をきたし、織田家全体のマイナスになると考えて、ケンカの仲裁に入ったのかもしれません。
そうだとしても、結果的にはねねさんを救って、秀吉の家庭も救っているわけですから、これは信長の優しい一面と言ってもいいんじゃないでしょうか。
確かに信長は人を殺してます。
でもだからと言って、『この男には血も涙もない」決めつけるのはいかがなもんでしょう。
人にはいろんな側面があって、それら全部でその人です。
一方向からしか歴史や人を見ない。それって冒涜だし、あきれるほどバカな行為です。
最後に。
信長がねねへ宛てた手紙。最初はゆったりと行間をとってるんですが、思い溢れたのか、後半メッチャ行間詰まってます。
手紙あるあるですね。かなりかわいい。
ちなみに、この文章はパソコンで書いてるから行間は均等ですが、気持ちの上では最後の方、行間詰まりまくりです。
おわり。
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お願いします。
先に言っておきます。
ありがとうございます。
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