3/4(土)

フエ「雨」→ハノイ「曇り」

朝起きるとまだ雨が降っている。7:00起床。7:30ホテルをチェックアウト。朝食はやはりあそこで食べておかないと、と思いブンボーフエを食べに行く。バックパックを担いで入ると最後に寄ったんだと、おばちゃんも分かったようだ。今日は店の奥に入りそこで例によって1杯頼んた。来た来た、最後のブンボーフエ。写真を撮り収めた後、店の兄ちゃんも1枚撮ってくれる。そしてうまい、うまいと言って食べていると1人のお客さんが、ここいいですか?と入ってきた。隣のテーブルに座っていたようだが、オレが日本人だと気付いて「おはようございます」と言いながらやってきた。すごく人が良さそうな顔をしているので安心して話を聞くと、彼はここフエにある日本語学校に通っているそうで日本語を話したいらしい。それで今日は雨ですねえとか、フエはよいところだとか、ブンボーフエはうまいとか話をした。最後に、彼にこの店のうどんはうまかったと伝えてくれと頼んで、店の姉さんに言ってもらった。とても喜んでいた。これでこの店にももう来ることもないのかもしれないと思うと少し悲しくなった。

そこからベトナム航空オフィスまでその兄ちゃんが送るというので、バイクの後ろに乗せてもらった。別れ際にありがとうの握手。これも段々、板に付いてきた。

待っているとこのオフィスに予約しに来た時に会った日本人とスイス人のカップルに会った。彼らも今日ハノイに行くそうで、ここからハノイではずっとこの変なカップルと一緒だった。この人は音楽をしているということでこの旅の間もあまり外に出歩かず日がな一日ぼ一っとしては楽器を弾いているということだ。ベトナムの横笛とか蛇三線とかを今やっているらしい。タイやインドやそういうところで1ヶ所に長期滞在しながら、のんびり旅を続けるという。そういう旅のスタイルの人で、体も痩せていて一見日本人じゃないような格好で髭も伸び放題、ちょっとしゃがれた低い声で話し、独特な世界観というか考え方というか、浮世離れした厭世的な人生を送っている。あまり日本にも帰っていないようで日本では一体何をしているのかと思ってしまう。自称音楽家だという。

それから彼の話は何かと勉強になることが多く、あまり人を信用しない事や、ベトナムでは事故が多い話や、タイの料理のうまいものの話、特にトムヤムクンはうまいと言っていた。あとすり鉢で潰した青パパイヤの酢の物風のものトムソムと言ったかソムトムと言ったか、それもうまいと言っていた。それから彼の生い立ちというのか日本を転々とした後、こちらへやってきた事とか、そういう話を聞いた。彼女とのいきさつは聞かなかったけど、彼女は絵を書くらしい。この2人のコンビがこれからもずっとうまくいくのかどうかはわからない。あまり英語のうまくない彼と、彼女もスイス人だから英語が母国語ではない訳で、この2人のコミュニケーションはさて?どういう風に成り立っているのかと思う。それでも旅を続けているのだから何というのか合う合わないは見ためみたいなものは関係ないんだろうなと思う。

フエの空港は思っていた以上にというか、やはり小さかった。1日数本しかないんだからこれで十分と言えばそうだろう。受付で荷物を渡し、空港税を払い、とにかく待つ、Bording checkは1人1人パスポートをチェックし、ゲートを通過する。ここらへんは結構厳しい。 Waiting Room でしばらく待たされる。そう空港に着いた時、一機の飛行機が窓から見えた。小さなプロペラ機だった。その瞬間、こいつかー!と思って覚悟した。不安よりも初めてプロペラ機に乗れるうれしさの方が大きかった。やった。また1つネタが増える。ベトナムエアラインでさらにプロペラ機。この組み合わせで、どんなのが来るかと期待でワクワクしながら雨の中を走って機体に乗り込む。

そのスイス人の女の人が以前フエに来るのに乗ってきたAirは、ジェット機だったけど、シートベルトが壊れていたそうだ。中は思ったよりも綺麗だった。シートベルトもきちんと締ったし、ただ席がちょうどプロペラの真横だったのでフライトのあいだ中ずっとブーンという振動音に悩まされた。それ以外は実に快適で良かった。1時間半程のフライトのあとハノイに着いた。

ハノイは晴れていた。快晴とは言えないけど、雨が降っていなくて良かった。タラップを降りて地上へ、そこからバスに乗って空港へ。そのバスも日本製だった。ワンマンと書いている。

空港からは4$のエアポートバスに乗ってハノイの中心街へ、空港の周りはやけに田舎で、ここがハノイなのかと疑っていたけど実はかなり中心からは遠く1時間程走ってやっとハノイに着いた。

ホアンキエム湖のそばのゲストハウス前でとりあえず降りる。そのゲストハウスに入って聞くと一泊20$ぐらいして話にならない。それで歩いて探そうということになる。いつの間にか客引きの兄ちゃんが現れて自分のホテルに誘ってくる。そこは遠そうなので、近くにあるホテルから順に入って見付けると言って一通り回ってみるが、なかなか見付からない。20ヶ所近く回ったが、安いホテルはあってもFullだったりした。それでも2人のカップルはどうしてもお金の問題は大きいようで、辛抱強くあきらめない。彼らに見習って10$を切らないと泊まれないと言って交渉した。結局兄ちゃんが勧めるホテルまで連れて行ってもらったが、そこも高いのでやめた。次にまた歩いていると別の兄ちゃんが現れる。取巻きが2人になり更に回っているとサンライズツアーというツーリストが入った建物の2階以上がG.Hになっているところにツインが1部屋見つかり、それは彼らに譲って私はまた兄ちゃんについて部屋探しを続けることにする。

そこから4、5件まわって最後に辿り着いたのがエスペランという系列のホテルで、ここに8$の部屋があると言うので、それを見てみる。実はそこに来るまでにもう1軒ぼろぼろのペチャンコの建物があって、そこが2〜3$で泊まれるらしいんだけど、格子のシャッターも閉まっているし、中も真っ暗なのでこんなところ人が居るのか?と思ったら扉をドンドン叩くと中からおっさんが出てきて、ダメだという。いやいや、オレもここは怖すぎると思ってこちらからごめんなさいという感じ。

そこからすぐのところにこのエスペランというのがあって、ここの部屋を見せてもらう。それがまた結構凄かった。ひと目見てすっかり気に入ってしまいました。そこは1階がツーリストオフィスになっていて、1階から吹き抜けになっていて2階部分はベランダみたいになっているのが1階から見えるんだけど、その5m×5mぐらいのベランダのようなスペースに、マットレスが床に敷いてあり、机があって、そこにオフィスのお姉ちゃんの荷物が置いていてと、更に棚にはシーツやら枕やら石鹸やらトイレットペーパーやらが山積みになっていて、そこに神棚もある。ここは明らかにスタッフの休憩室兼備品倉庫でしょう。こんな理想的なヤバそうな部屋(?)に泊まれるなんて、なんてラッキーなんだと思ってしまう。更にカギがかからないというかカギそのものがない。彼もそのツーリストの姉ちゃんも大丈夫だと言う。まあええかとそこに決めた。安全性よりもここに泊まるとどんな気分がするのかという期待感のほうが大きく、つい勢い決めてしまったという感じ。

（写真: ハノイのホテルの部屋。この旅一番のびっくり部屋でした）

そうして荷物を降ろすと、その兄ちゃんがこれまで君をいろいろと案内してやっと君の希望にかなった部屋をみつけてあげました。ここはいいと思うし、もしだめなら明日、私の知ってるところに連れていってあげようと言う。とにかくここまでやってあげたんだから少しお金が欲しいなあ、というニュアンスで手を差し出してきた。5,000ドン渡すと、もう一枚という感じで粘っているので結局もう一枚、計1$渡す羽目に。要するに部屋代が9$になってしまった。

部屋に荷物を置いて一度街に出る。出る時お姉ちゃんに荷物が心配なのでお願いします、と言って出てくる。すると今日はこの部屋でガマンして欲しいんだけど、明日には同じ系列の別のホテルの部屋に変わってもらいます。そこは同じ8$でずっといい部屋です、と言ってくれた。この人は信用できそうだし、笑顔がいい。

外に出る。まずベトナムエアラインの国際線オフィスを探してReconfirmをして、これでとりあえずBangkokまではOKということになる。そこからホーチミン廟に行きたいなあと思っているとあのさっきの兄ちゃんが現れて、やあマイフレンドと陽気に話しかけてきた。この兄ちゃんの顔は信用できない。まあ適当にあしらって、トゥクトゥクに乗って行く。 3,000ドン、こんなもんかな。でもそれ以降ずっとこの距離は自分で歩くことにする。ホーチミン博物館近くで停められて、まずそっちに行ってみる。1,000ドンかそこら取られて中を見たけど全然分からない。ふーん、という感じで見ていく。ホーチミンという人がどんなことをしたのか（注:建国の父と言われていることくらいしか）知らない私にはそのありがたみみたいなのが伝わらないので、ここに居ても仕方がないと思い、さっさと出る。

（写真: ホーチミン廟を望む）

そしてとりあえずホーチミンさんの遺体を拝見させてもらおうと思い、廟の後ろ側から進入して正面に出ようとしたら、物々しい警備が敷かれていて軍服をきた兄ちゃんが現れてピーピー笛を吹き、ここはダメだ!という感じで手をしっしっと振ってやってくる。ここは立入禁止だったのである。いきなり社会主義が現れてきてびっくり。当然カメラもだめだろうと思い、そそくさと逃げてしまった。ホーチミン廟は入れないのかー、と思って、ああ、何のためにここまで来たんだろうと考えながらトボトボと歩いて帰る。

途中、軍事博物館に寄って、ミグ21やらT54というTANKを見ておーっと思った。あとベトナム戦争の頃に使われた銃などの武器の展示を見た。カベ一面おばあさんの写真が一杯に貼られている部屋があって、そのおばあさんの胸のところに勲章がたくさん付けられている。この人たちは、いったい?と思って下に書いてある文字を読んでみると最後のところに、彼の夫と9人の子供たちはみんな戦争で亡くなった、といった結びになっている。つまり彼女たちは、戦争で全てを失ってしまった人達なのである。そしてそういう人を名誉ある人だと言って褒め称えている。それがおばあさん本人にとって良いことだと思えないけど、まあ何もしてくれないよりはましだろう。とにかくその戦争の悲惨さの一面を見たような気がした。あとは、ベトナム戦争のスライドをフランス語でやっているのをフランス人おばさん観光客がたくさん座っているところに紛れてちょこっと見たあと外に出る。

（写真: 軍事博物館）

（写真: 軍事博物館内にあるフラッグタワー）

そこにあった旗の塔というのに登ってみると街の様子が一望できたので、そこでボーっと過ごしていた。中学生くらいの3人組の子供が「時間だよ」と言って降りていった。もちろん言っている言葉は分からないけど、多分そうなんだろう。 5時前だしと思って降りていって軍事博物館をあとにする。

ホテルのほうへ戻ってあまりに腹が減ったので、そこらで店を探しているとPhoの店があったので入った。おばちゃんも愛想が良く、にこにこ笑ってくれて3,000ドンでフォをいただきました。これはうまかった!それから市場でミルクアップルを仕入れて部屋に戻る。

しばらくぼーっとした後、晩飯を食べに行こうと思い2人のカップルの泊まっているG.H.に誘いに行ったらいなくて1人でトボトボと、おいしそうな店を探しに行く。ホアンキエム湖の周りをぐるっと回ってみたがいい店が見付からない。途中、日本人の一人旅の人に会って一緒にメシを食おうということになる。湖の側にビアホールを見付けたのでそこに入った。生ビール 2,500ドン、ポテトチップ 5,000ドンときてチャーハン 1万2000ドンときた時には、ここは高い!と思ってしまった。120円のチャーハンに「高い」と感じてしまう、私たちはもう現地人。

そこでの食事のあと、彼と一緒に水上人形劇なるものを見に行くことになった。これが1時間半近くあって晩8時開演、まずはベトナム楽器による演奏を聞いて人形劇が始まった。1つ1つがショートストーリー仕立てになっていて、ドタバタ劇の小話がいくつもあって結構くすっと笑ってしまったり、ほ〜と関心したりしてしまう。水面を地面に見立てたり田んぼに見立てたり湖や池に見立てたりしながら、そこにうまく人形が出てきて、おもしろおかしく動き回っている。よく出来ているのと、人形の顔がおもしろいのとで結構楽しめた。さすがに1時間半は長くて段々だれてきたけど…。それで終わった後2$出して劇で使われているミュージックの入ったテープを買った。

（写真: 水上人形劇の様子）

そこで彼とは別れてG.H.に戻り、部屋の見取り図を今回は妹尾河童風に書いて、それが終ったら12時前だったので念のためお金は全部腹巻きに入れて寝ることに。カギもかからない部屋だったけど普通に寝れた。ただ吹き抜けのせいか風が入り、寒くて何度か夜中に目が覚めた。

「ハノイへ」