昨日、伊崎に言われたあの言葉がずっと俺の頭のなかで回転し続けている。
気にしないようにとは思っているが、やっぱり忘れられないでいた。
教室に入るとすでに伊崎はいた。
普段はしないマスクをして机に頬杖をついて窓の外をじっと見ていた。
今日も普段と変わらないいつもどうりの教室、そう思っていた。
しかし、完全着席の時間になっても岡野の机だけは空いていた。
今まで一日も休まず学校に来ていた岡野がいないということで教室が少しざわついていた。
岡野のグループの奴等もひそひそと何かを話している。
そのとき教室の扉が開き、何か恐ろしいものを見たような顔をした担任が、黙って入ってきた。
ざわついていた教室が一瞬にして静まり返った。
大体予想はついていた。何か大きな事件があったのだということが。
担任は教卓の前に立つと、息をのみ込んで重そうな口を開いた。
「昨日、岡野君が亡くなりました・・・」
担任が発した言葉に教室は軽い悲鳴と共に凍りついた。
あの岡野が死んだ・・・・・。多分事故ではないと思う。
クラスが混乱するなか、担任はみんなをもっと混乱させるようなことを言い出した。
「ただ・・・死体が見つからないそうです・・・。発見した方が通報するためその場を離れて、戻ってきたらもうその場所にはなくなっていたそうです・・・」
死体を運んだのはどう考えても殺したやつだろう。見つけたやつがわざわざ隠すわけがない。
「今日の授業はありません。寄り道しないで真っ直ぐ自分の家に帰ってください・・・」
か細い声でそう吐き捨てて担任は教室から出ていった。
担任が教室を去ってから二分くらい経ってから、クラスのみんなは動揺しながら帰りの支度を始めた。
俺は帰りの支度よりも先に、伊崎のもとへ向かった。
「なあ伊崎」
伊崎は俺の声を聞いて、窓の外を見ていた目だけを俺に向けた。
「なんだ」
「今日、一緒に帰れるか?」
「・・・・・ああ」
伊崎は視線を少しずらしてそう答えた。今にも溜め息をつきそうな顔をして。