旅に出たい。
旅に出たい。
旅に出たい。
カメラを担いで旅に出たい。旅に出たい。
知らない街の、知らない道を歩きたい。
旅は楽しい。
目を見張る風景もあるし、忘れられない光景にも出会える。
それを切り取ると別の世界が開ける。
旅のお供は、いつものカメラ。
もう古ぼけて、傷もつき、完璧ではないカメラだけど、唯一の相棒。
旅に出たい。
旅に出たい。
旅に出たい。
知らない街の酒場で酒を飲みたい。
寒い中歩いてきて、熱燗の入ったコップ酒で手を温める。
ほのかに香る酒の匂いを、身体全体が受け止める。
知らない言葉が飛び交う酒場で、一人赤ら顔になる。
心の芯に焼付く風景。
旅に出たい。
旅に出たい。
旅に出たい。
右にしようか、左にしようか。
石畳の道を歩く。
誰が撒いたか打ち水で石畳がきれいだ。
カメラを出すのがまどろこしい。
着物姿のおばあさん素敵だな。やっぱり知らないおばさんだ。
旅に出たい。
旅に出たい。
旅に出たい。
夢の続きを見てみたい。
ここを曲がればあの人が居るだろう。
きっといるに違いない。
夢の続きならば。
旅に出たい。
旅に出たい。
旅に出たい。
父と歩いたあの道を歩きたい。
若者のわたしと、今のわたしより若い父と。
立ち寄った店はどこだろう。
260円の天丼を二人で食べた。
あまりの海老の小ささに、二人で顔を見合わせた。
旅に出たい。
旅に出たい。
旅に出たい。
懐かしい想い出が、どこかの街にあるだろう。
知らない街を歩きたい。
今すぐ旅に出たい。
だけどやっぱり行かれない。
旅に出たいが、行かれない。
今夜は行かれない旅の夢を見る。
旅に出たい。