この建物の最上部に居た
そこに居たのは私一人であろう
屋上のドアを閉めて 階段に腰をかけて 少しだけくつろいでいた
ゆらっと揺れた 徐々に揺れが大きくなる
バタンバタンと大きな音が下から聞こえてくる 防火戸が一斉に開いたからだ
ますます揺れが酷くなる バタンバタンの音が かなり激しくなってきた
小さな窓から見える 尾根の稜線が 上に下へと変わる
怖い!怖い! 何しろ怖い!
このままビルが折れて 倒壊するのではないかという不安がよぎる
それこそ もう死ぬと思った
階段の手すりにしがみつく しがみつかないと 吹っ飛ばされるような揺れである
長い 揺れが何しろ長い
そろり そろりと階段を降りる 防火戸をあけて廊下に出る
知り合いの女性が 壁の角でしがみつく様に座り込んでいる
少しおさまった
防火戸を復帰させながら移動するが 次の揺れが又来る 大きい
閉めた防火戸が再び バタンバタンと開く
建物中央のエレベーター前 12基のエレベーターは もちろん動かない
中々 プシュン! プシュン!と変な音がする
エレベーターのワイヤーが 大きな揺れで ぶつかっている音だろう
何とも言えない 気持ちの悪い音である
非常灯が落下している 壁際には 白いホコリのようなものが あちこちに落ちている
点検しながら降りるが 余震が続く
大きな揺れは本当に怖くて 早く降りたいが 最上階に折角居るのだから
何か指示を受けて作業をしようと思うが 連絡の取りようがない
時間の経過は判らないが やっと1階まで 点検しながら降りる
あの恐怖
もう12階に上がるだけの勇気が無い それほど怖かった
手帳にメモするが 手が震えて上手く書けない
心が折れた
何時間経っても 気分の収まる事は無い
変電所を点検 ある建物では 耐圧の大きなガラスが粉々になっている
幅が5m以上 高さも5mあるような大きなもの 隣のガラスは真一文字にひびが入っている
展示物が倒れている
数時間後 帰れる人間には 帰宅命令
途中でスーパーに寄るが すでに閉店
どの店も開いていない
家族との連絡もまったく取れない
家の明かりを見て 一安心
我が部屋は 散々たる光景 8畳の部屋いっぱいに物が散乱
大きなブラウン管テレビが 真っ逆さまに落ちている 割れていないのがラッキー
まだまだ心が折れていて 余震が来るたびに 身を硬くする
怖い! 何しろ怖い!
大きな恐怖を味わったことで 完全に地震恐怖症 今も揺れている
隣の建物に居て同僚の話
私の居たビルが大きく揺れるので もう潰れると思ったそうだ
潰れないでよかった・・・