ピアノまめちしき・その9延長編
「さらに一歩」…前回のピアノまめちしき・その9の続き 増四度 さらに考えを深めてみると、この組み合わせは減七の和音の中にも隠れています。減七の和音とは4つの音の組み合わせでできる和音でそれぞれの距離が短三度でできているものです。「ドーbミー#ファーラ」…なんとこちらは1オクターブを四等分している和音になります。さて、ここで音高生はもうピンときてほしいのですが減七の和音は基本的に短音階の7番目の音を根音としています。つまり「導音」の役割をもつ音、その曲の主音を導いてその時に音楽が「何調」に解決するかを決定づける音です。この導音の役割を持つ音に…和音の中の4つの音どれもがなりうるできるスペシャルな和音ができあがるのです!なぜならすべての音が等間隔ということは、転回しても(一番下の音を変えても)すべて同じ減七の和音になるからです。これはとんでもないことです。通常であればハ短調の導音は「シ」になります。ハ短調の曲の中で思わせぶりに「シ」の和音が聞こえると、その次には自然と耳が「ド」に行きたくなりそれに付随して主和音も一緒に脳内に再生されるようにできています。それが減七の和音が出てくると、この解決先が長調4つ+短調4つの合計8つも理論上可能になるということです。つまり、その和音を起点に転調の可能性が8つ生まれるという事です。それまでの音楽の流れでそのまます~っと解決することもできれば突拍子もない調へ突然飛んで行ったりちょっと予想外の所へも行けるのです。「なぜ分析が必要?」この和音・音と音の組み合わせのからくりがわかってくると、どうしてその音がそこにあるのか、なんであの音は妙に耳の残るのだろう?といった作曲者の意図が少しずつ見えるようになって初めて「その上でどうやって弾く?」ということがきちんとした根拠の上で判断していけるようになっていきます。ただ単に先生がここを強く弾けって言ったからそうする、あの録音がここでめっちゃ早くなったから自分もそうする、誰々の演奏ではここはこのテンポだったから…という感じで演奏していると、実は前後のつながりや全体の演奏キャラクターがメチャクチャになりつぎはぎのような演奏になってしまうのです。そしてコンクールなどではちゃんとした審査員はここがわかってしまいます。一見かっこよく弾いてキメていても、説得力のあるなしがでてきてしまいます。なぜ超スピードで派手派手な演奏が通らないのかおわかりいただけると思います。「本物を」 よくアナリーゼという言葉が聞かれることがありますが、話を聞いてみるとどこをどのテンポで弾いて、強さはこのくらいの強さで…というお話をされているだけで、それらの理由がすべて「誰々のテンポは…」みたいなお話になり、それは全然アナリーゼではなくて、モノマネでは?ということがあります。もちろんプロの方では無い方には難しい話ですが、そのために先生のところへ音楽を習いに行くのです。それも20年はかけて。「芸術」という分野の曲は決して「思いつき」だけでなんとなく作曲されているわけではなく、何百年とかけて構築されてきた「理論」と「トライ&エラー」の積み重ねの上にできあがっているわけなのです。…ちなみに私の生徒たちの中には小学生ですでに上記の楽典を「面白がって」学んでいる生徒もいます。全然この道に進む意図はなしに(笑)