新しく専務が来てから数ヶ月。


私に対する目に見えての変化は無かった。


リストラとか給料減額とか行われてたけど、元々の給料額が低すぎたさかい無傷やった。


まあ、通勤交通費の3000円が無くなったけど。


職を失うことを考えたらマシかな?


せやから前年通り貧しかったけど、平和に年を越せれた思う。


年が明けた2001年。


この頃になったら、セメント運搬を任されてた私にも悪い噂が入って来てた。


「マジ会社ヤバいんとちゃうか?」


徐々にどころか「大幅に」製品の出荷が減り続けてたコンクリート製品会社。


生コンの出荷量も徐々に減って来てた。


建設会社なんて、悲惨な状況。


リストラを敢行して人間減らした結果。


工事を受注する数も減った。


建設会社って、工事の全てをする訳や無い。


戸建住宅で例えましょか。


地盤を整えるのは我が等でやる。


でも、家の基礎からは別や。


コンクリートの基礎を作るための型枠工事は外注。


型枠の中の鉄筋を組み立てるのも外注。


基礎の上に組み立てる家の枠組み作りも外注。


壁やら屋根やら内装やらも全て外注。


何から何まで外注やねん。


「じゃあ元請けさんは何してん?」


工事現場の管理と監督だけや。


せやから、建設会社って協力してくれる各種下請け会社から離れられたら一巻の終わり。


清水建設とか大成建設なんかCMバンバン流してるけど、工事の全行程を自社社員で請け負ってるんとちゃうねん。


みんな協力会社さまのお陰で成り立ってるんよ。


各種下請けさんも利益を計算して元請けへと見積・請求するさかい、公共工事費用ってメッチャ割高になるねん。


保険会社の自動車修理費用と同じ。


リストラを敢行した元請けに訪れる悲劇って、管理監督する工事現場が少なくなる。


10人で5現場を担当してたとするやん。


リストラで5人になったら2現場しか管理監督出来へんねん。


そないして、売り上げも減りぃの利益も減りぃのって陥るねん。


せやから、年明けくらいから悪い噂が流れ始めてん。


我が等の従業員の間で流れる噂。


当然やけど外でも流れ始めてたみたいやわ。


建設会社関連ってな。


請求に対する支払いは・・・


約束手形ばっかりやった


約束手形って、その時はカネにならへんねん。


「サイト」って言うんやけど、例えばサイトが90日としたらな。


90日後に支払われた約束手形の金額が支払われる仕組み。


説明間違うてたらゴメンな。


当時の勤務先やけど


約束手形のサイトは150日


やってん(笑)。


例えば50万円の支払い請求したとしても、集金日に約束手形貰うてカネになるんは集金日から5ヶ月も先になるねん。


それまで銀行に持ち込んで現金化したら、減額される。


かと言ってヤバい会社の約束手形を保管し続けるのも危険度高いし。


約束手形のサイトが150日もあって、悪い噂も流れてる会社。


誰が取り引きしたがるねん!


製品買う方は問題ないけど、セメントとか砂利とかの材料とか納める会社はイヤやったやろな(笑)。


これは分からへんかったけど、年明け頃から仕入先が一気に減ったみたい。


で、新しい仕入先。


取引には応じてくれたけど、仕入単価が上がったらしい。


原材料費が上昇したら、原価も上がって利益額が下がる。


少しでも利益稼ぎたいのに・・・。


少しでも経営を立て直したいのに・・・。


そうやって、ヤバい波が徐々に近付いて来た。


翌月の2001年2月。


一番若い24歳の私。


次に若かった27歳と30歳の各営業マンの3人。


週末の土曜日に新しい専務などから食事に誘われた。


誘った側は、新しい専務と会長の息子社長および息子議員の3人。


料亭とまでは行かへんけど、安くは無さそうなメシ屋に連れてって貰うた。


何を食うたんかまでは憶えてへん。


憶えてるんは・・・


各自5000万円ずつ

カネを借りてくれ

って頼まれたこと


詳しく話そか(笑)。


実は、この年度も赤字決算が確定的やってん。


前年度までと違うんは・・・


赤字金額がハンパなかった


この時に聞いた金額は


大体5000万円の赤字額


「これ以上赤字が続いたら倒産するしか無い」


そない言うてたもん。


そこで、会社側が勝手に考えた救済策


お呼び頂いた我々3人がやで。


銀行で各自5000万円ずつ借金する

借りたカネを会社に渡す

毎月の返済は会社がする

我々はカネ借りるだけ


「3人が5000万円ずつ借りてくれたら、グループ会社全部持ち直す」


そない言われた。


当たり前やけど、他の2人は答えるのん躊躇してた。


私なんて社長が話し終えた瞬間に


「イヤですわ。いつ何時返済が滞るなんて予測できひんし、未来永劫会社が返済し続けられるって保証、どんな会社でも有りませんやん。例え大手に勤めてたとしても、同じこと頼まれたら断りますわ」


一番下っ端が一番反抗的な回答(笑)。


「オマエ、会社を助けようって気ぃ無いんか?」


「そこまで愛社精神なんて培ってません」


タダメシ食うだけ食うて、この答え(笑)。


でも、当然の答えやで。


借りる筋合いも無いし、こっちはカネ貯まったら転職しよ思うてたんやもん。


結局、残り2人も借入はお断り。


起死回生を狙うた会社側の思惑は、見事に砕け散った(笑)。