実家に置いてある
古びた1本のガットギター
生前、じーちゃんが愛用していた
云わば形見である
ペグは折れ、固く錆び付き
チューニングもままならない
オンボロギター
今はもう音楽(おと)を奏でられない
あの日を境に…
2つ上の兄貴の結婚式
兄貴と僕はギター1本で
二人で歌う計画を立てていた
使うギターはもちろん
じーちゃんの形見のギター
その時すでに
ペグは折れ、錆び付いていたが
なんとかチューニングが出来る
そんな状態だった
それでも
別のものを使う気は全くなかった
むしろ、それでなくては意味がない
じーちゃんの魂が宿る
このギターでなければ…
当日、式も中盤に差し掛かり
いよいよ余興本番が近づく
ギターの最終確認…
調子が良い
いざ本番へ
曲目は…
『 More than words 』
Extremeの名曲だ
冒頭で兄貴が言う…
「今日は、じーちゃんも連れて来ました!
このギターは生前、じーちゃんが愛用して
いたものです。
兄弟二人とじーちゃんの魂宿るこのギター、今日は三人で歌います」
曲が始まり弾き語る…
終始チューニングは狂うこともなく
僕のつたない演奏にも応えてくれる
そして無事に歌い切ることが出来た
式も終わり自宅に戻った僕が
ギターを手にすると、
弦はゆるみ、ペグは空回りする
まるで役目を終えたかのように
そのギターは弾けなくなっていた…
『あの日は紛れもなく
その場にじーちゃんがいて
僕らは三人で歌ってたんだ』
あれから13年…
未だギターは当時のまま
いつか直してやりたいと
思う気持ちはあるけれど
そのままの方がいいのかな…
じーちゃんの魂が刻み込まれた
このガットギター
一生の宝物である…
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