外に出る。大きく息を吸い込む。


「いいにおいだねー。」と私が言う。
「え?どこかからなんかにおいする?」と彼女が言う。
「いや、秋の匂い。」
「んーー?秋ねぇ・・・。」彼女は勿論わからない。



よく私を飲みに誘ってくれる女性がいる。
女性、というよりカップルといった方がいいだろうか。


なぜか、彼女と飲むときはその彼氏がついてくる。
これは普通のことだろうか?


「飲もうよ!」というのはその個人との約束であって、
それ以外の人が入ってくる場合には、
必ず事前に相手に承諾を得る、
ということが常識だと思っていた私にとっては、
彼女との飲みの約束に彼氏がいつもいることは
毎回驚きがあった。



とはいえ、そんなことが3度も続けば
私もいい加減理解する。
彼女と飲みの約束をすれば、
必ずその彼氏がついてくるのだ、ということを。



彼女に言わせると、
「彼ったら、アオイがお気に入りなのよー」らしい。

彼女の他の友達との飲みには参加しなくとも、
私との飲みとなると、意地でも参加しようとする、という。



確かに、彼と私は話が合う。

ひょんなことからビジネスの話になり、
私は普段話さない「なぜこのビジネスをしているか」まで
話してしまったが、
彼はその話にもがっちりついてきた。


彼女は、一生懸命その話についてこようとしたが、
論点がずれすぎていて、
かわいそうに感じるくらいだった。



人は、自分と違うものを好きになるものなのだろうか?



私が彼だったら、この論点のずれっぷりに
気持ちは急速に冷めるであろう。
彼は、きっとそうではない。


どんなに論点がずれようと、
どんなに私の方が話が合おうと、
付き合うのは彼女。



私は違う。
私は、私と気持ちを分かつ人と付き合いたい。
同じことを見て、違う感想を聞いて
驚きを得たいという気持ちもあるが、
それも同じ価値観をベースにしたものであってほしい。

理解できないような感想を言われても困るのだ。


全力で会話をしても、ついてこれる男性がいい。
相手のレベルに合わせて、
会話の質を下げるのはもううんざりだ。


それは、私が「自分以外の価値観を受け入れられない
狭い人間」だからだろうか?



わかってる。
そんなことを考えているうちには出会いはない。

出会いは、もっと、感覚的なもの。



でも、私が出会いたいのは
「いいにおいだねー」といったら、
「そうだねー」と言ってくれる人なのだ。
結局自分がいればいいだけなのか?私は。

調子がいいときは、秋が多いのだ。主に恋愛。


だから、秋の匂いをかぐと
嫌でもいろいろな思い出が蘇る。


いい思い出がよみがえるということは、
調子の悪い時には残酷だ。
思い出の方が鮮やかで、今の生活が色褪せて見えるから。




昔を懐かしむことが多い性分だと思う。
いつも、今より「ちょっと前」を懐かしんでいる。


特定の時期ばかり思い出しているわけではなく、
過ぎてしまった「今」を
「あの頃はよかったなー」とそれぞれ思い出すわけだから、
振り返ってみればどの時期も面白かったということで。


今もきっと、振り返りたい「今」に変わるのだろうけど。


でも、それを今この瞬間に楽しめないのはなぜだろう。
「今」の良さは後になってみないとわからない。




とはいえ、学生自体の楽しさはやはり格別だ。


あふれ出るエネルギー、初めてのことに満ちた世界。


何をどう過ごしたって楽しいに決まっているのに、
私はそんな時期、とても恵まれた環境で過ごしてしまった。


「もっと楽しんでおけばよかった」と
後悔している人もよくいるらしいが、
私の場合は、学生生活をこれ以上は楽しめないというくらい
満喫したことを自分でわかっていた。


卒業式の日、校舎を振り返りながら
きっとここでの生活を何度でも振り返るだろうと思った。
きっと、ここへは二度と戻れないことへの切なさに
幾度も耐えなければいけないのだと、覚悟した。




その予想に、間違いはなかった。



「初めて」のことがあの頃よりずっと少なくなり、
箸が落ちても笑えるエネルギーがなくなった今、
あの頃とは違う人生の楽しみ方が必要になってきている。



たとえば、穏やかな毎日をいつくしめるような。
調子が悪くてもがく自分すら、愛おしく思えるような。

私が好きなのは、宇宙、物理学、ビジネス、心理学、スピリチュアル、恋愛。


・・・こう書くとだいぶサイコなヤツなんじゃないかと
誤解を受けそうだけど、
何かを信仰するのが好きなんじゃなくて、
たぶんいろんな法則をあれこれ考えて、
想像するのが好きなんだと思う。


私にとって
「次にどんな商品がヒットするか」と
「私が好きになるタイプにはどんな共通点があるのか」と
「ビックバン以前にはそこに何があったのか」と
「鬱になる人の傾向と対策」とは
すべて同じ類の話だ。


願わくば、こういう話をユーモア交えて
話せる人と結婚したい。



そんな私が、今日考えていたこと。



量子力学の世界では、電子の場所の正確な位置を確定できない。
知りたくてもわからない。
これは科学者にとっては絶望的な話だ。


もし私が科学者だったら。そして、途方もない技術を持っていたら
こう考えるだろう。


「俺が大きいからいけないんだ。
電子と同じ大きさになれたらもっといろいろ調べられるのに」


そして彼は(なぜか男)電子と同じ大きさの、

知能がある生命体を作った。
その生命体には知識欲を与え、
目の前にある事象を分析したいと思うようにプログラミングする。


後は、その生命体が学んだことを自分のコンピューターに
取りこめるようにする。


初めは生きることに精いっぱいだったその生命体も、
いつしか彼の思惑通り研究を始めるようになる。


しかし、いくつかの生命体が暴走を始め、
電子の世界を壊し始めた・・・。



これが人類の始まりだったりして、って話です。


宇宙自体が実は大きな生命体の中の一部で、
私たちはそれを解析するために送り込まれた小さな小さな生命体。


その命を終えたら、大いなる創造主のもとへ帰って
その知識や意識は一ところへ収まる。


ちなみに、私は量子力学の専門的な知識があるわけではないので
突っ込みどころ満載の空想かもしれないけれど。


でも私がしたいのは、真理の追求ではなく
果てしない想像なのよ。




・・・だから、私の好みは、
この果てしない想像を一緒に広げて、楽しんでくれる男性。


いないかしらね?そんな人。