開店までの1週間は3人でお菓子の試作品を作った。

癒しのお茶入りのクッキー

愛しのお茶入りシフォンケーキ

微笑みのお茶入りマドレーヌ

開きのお茶入りのサバラン

 

この4つに決定!!

 







秋が深まった木曜日にお店は開店した。








開店当日は夕方までお客さんがそれなりに来た。半月後には「いつも来る人」が4人になった。






1人目は一番最初のお客さん。頭にほとんど毛がない血色の良い小さなおじいさんは「癒しのお茶とクッキー」が定番。





2人目は小学校高学年の子供。この子は初めてきた時はマドレーヌが食べたいと言い、あっという間に食べ終え「ばいばい」と言い帰って行った。しばらくしてお家の人から封筒を持たされてきた。封筒にはひと月分のお菓子代が入っていて「毎日お菓子をひとつ食べさせてもらえませんか?」と書いてあり、その日から毎日おやつを食べにきている。





3人目は高校生のお兄さん。週2、3回学校帰りに寄ってくれる。このお兄さんが初めてきた時私たちはちょっとパニックになったのだ。お兄さんが「おすすめなんですか?」と言ったから。「おっおすすめ、ですか?」そんなこと考えもしなかった、と動揺しているとピッピがお兄さんのそばへ行き、じーっと観察した後「愛しのお茶とクッキー」と答えた。お兄さんはニコッと笑って「それでお願いします」と言いピッピに向かって「ありがとう」と言ったのだ。





4人目は日曜日の夕方に来る「ザお母さん」って感じの人。その日の気分で色々なお茶を飲む人で、店内の様子を楽しむように時間をかけてゆっくりお茶を飲む。


3ヶ月経つ頃には「いらっしゃいませ」から「こんにちは」「おかえり」に挨拶が変わり、私たちは色々な話をするようになった。










おじいさんは奥さんに逃げられ今は一人で暮らしていることがわかった。


おやつの子は最初は全く口を聞かなかったが、キキが好きみたい。キキがおやつを運びと表情が緩むのだ。


ザお母さんは謎。日曜の夕方に来るところをみるとお母さんじゃないのかな。いつも店内の人の会話を楽しんでいる。だってどこかで面白いことが起きると必ず笑うんだもん。おじいさんが泣いた時は泣いていたし。


お兄さんはいつも本を読んでいる以外はわからない。一見穏やかに見えるけど心を固く閉ざしている感じ。






癒しを求めてここにたどり着いた4人。

その一人ずつの物語。

 

 





















次回予告

EP1 

-ぷるたおるね-

おじいさんのお話


📸素敵なお写真はお借りしました。ありがとうございます。