珍しく本レビューです。
ハウルのことを書いていて、そういえばと思い出し引っ張り出してきました。
インタビュー雑誌の【Cut】というのを皆さんはご存知ですか?
「ロッキング・オン」という洋楽雑誌を創刊した音楽評論家渋谷陽一が創刊したインタビュー雑誌で、その創刊号に宮崎さんのインタビューを載せたことから12年間の間に行われた5本のインタビューを書籍として発行したのがこの本になります。
『はじめに』で渋谷氏もご自分で認めているのですが、ちょっとケンカ腰のような勢いあまって突っ込んだみたいな、インタビュアーになっていてその部分に関しては賛否両論あるようですが、しかし渋谷氏の造詣の深さには感服するほどですし、素人と話すよりはよっぽど深く掘り下げた内容になっています。

ちなみに宮崎さんはほとんど映画を見ないそうなんですよ。ですがそうは言いつつ愉快な映画論をお持ちでして、
【映画を見るには約束事があって、例えば「ドラえもん」の絵を見た瞬間に、これはリラックスして見ましょう、難しいことを言うのは止めましょう、そのレベルで見ましょうというふうにね。あらゆる作品が全部始まった途端に、あるいは始まる前から暗黙の約束事を要求する。で、それを否定する気は全然ないんです。
ただ自分が「このレベルで嘘をつきます」って決めたときに、そのレベルの嘘を守ることですよね。それをしょっちゅう変えちゃうやつがいるんです。それが最低なんですよ!話に行き詰まったから変えちゃうとかね。「――――」なんか最低ですよ。どうやって潜水艦に乗っていったんですか?!」】
ちなみに「―――」の映画名は本で確かめて見てください♪
手塚さん論についても面白い。読者側からではわからないなこういうことは、というようなことが語られています。コミック版「ナウシカ」についての苦労話なども。映画「ナウシカ」は成功したけど、その後、「魔女の宅急便」までは興行的には失敗していたこと。そしてその成功でジブリを会社にしなければならなくなったこと。ちなみにジブリの経営には1ヶ月8000万かかるそうです。今はもっとかかっているかもしれませんが。
「紅の豚」も最初は豚が戦車でやってくる「突撃!アイアンポーク」っていう話をやりたかったとか。

普通のインタビューでは知りうることが出来ないほどの、ちょっと哲学的でわかりにくいくらいの内容で私的には大変お勧めの一品になります。
店頭で見かけることがありましたら、是非覗いてみてください。

著者: 宮崎 駿
タイトル: 風の帰る場所―ナウシカから千尋までの軌跡

by sai