ビートルズを聴くようになったのは

高校に入った頃だった



母は音大出身でピアノ教師だった

彼女の好みとビートルズは

マッチしていなかったと思う

彼女はもっと古いタイプのミュージシャンがお好みだったと思う



ビートルズには名曲が多いけど

「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」は

そのひとつに数えていいだろう


ジョージ・ハリスンがソングライトしたこの曲には

床掃除しなくちゃいけない…という

歌詞が出てきます



私の実家もひどい荒れようで

母が掃除をできなくなり

もはや帰らぬ人となってしまってから

父が汚し放題にしていて

ひどい有り様になっています



ジョン・レノンのソロ一作目と目される

「ジョンの魂」のラストナンバーは

「母の死」







母が死んでしまった


父の野放図さに私は頭を抱える


葬儀の手配の一切…

父はなにもやれない

この人はここまで事務能力に欠けているのかと

私は呆然とさせられる


いや…事務能力だけでなく

世間の常識とかメタ認知とか

さまざまなことが欠陥だらけ…

そのうえ体力の衰えた父…

私がそれを代行したりフォローして

母の葬儀や死後の事務手続きをし

よれよれの父の喪服を用意したり…


母の偉大さ

母のありがたさを

いまさらながらに思い知らされる


何もしない弟…

殺意を押し殺して

葬儀告別式をやり過ごさなくては…



カミさんに助けられ

ミミおばさん(ジョンの育ての親)ならぬ

父の妹にあたるおばにこぼしながら

私はこの難局に立ち向かうことになる



どう説明したらいいのか…と

ジョンは歌う


ほんとうに何と言えばよいのか



母が死んでしまった

実家の床は汚れている

実家は父のガラクタでゴミ屋敷だ

実家はゴミ屋敷

父もゴミかガラクタにしか思えない

そう考えるべきじゃないのだろうけど

そう思えてしまうのも事実

どう説明すればいいのだろう

母が死んでしまった

母が死んでしまった



私はどうすればいいのだろう

事務的にやりすごす術はあるけれど

感情を殺し続けることはできるのか



ジョンが受けたという

精神療法…プライマル・スクリームとやらを体験してみたくなってきた



助けて…