10.26に、MPDと書店間の「ハイパーチャージ契約」という題で次のように書いた。・・・・「全書籍を対象にして、返品ペナルティと売上インセンティブを課すハイリスク・ハイリターンの販売契約である。まだ実験店との契約である。内容は、書籍返品率25%以下なら、売上金額の10%をMPDが書店に支払う。つまり、返品率を25%以下に下げるなら、利益を売上の10%アップできるということである。返品率を25%以下にするなら、売上10億の書店には1億の
バックがあるということになる。同時に、書店は返品金額の20%をペナルティとしてMPDに支払うというものである。売上10億で、入荷金額が10億、返品が25%(売上の10%のインセンティブが書店に支払われる)とすると、在庫金額が変化していないとして、売上原価は7億5千万。少し多いかもしれないが、計算しやすいように、
このように仮定する。すると、返品金額は2億5千万、その20%は5千万、それを書店はMPDに支払うことになる。結果として、書店は5千万の利益増になる。売上利益率が現在2%として利益は2000万、そこに5000万が上乗せされることになる。では、次の場合はどうだろう。売上は同じ10億。入荷金額は12億。上と同じ正味だとして、在庫金額が変化しないとしたら、返品は4億5千万、
返品率は37.5%。現在の平均的な返品率である。MPDから書店へのインセンティブはゼロ。書店からMPDへのペナルティは4億5千万の20%、つまり9000万になる。売上利益率2%なら、2000万マイナス9000万で、7000万の損失となる。これがハイリスク・ハイリターンといわれる仕組みである。書店は現在の正味を下げる、あるいは商品(特に雑誌)の販売価格)をあげてほしい。前者は取次
店がイエスと言わない、後者は雑誌出版社がイエスと言わない。その中で、返品率を下げ、コストを落とし、そこから生まれる利益を取次店と書店でなんらかの方法でわけようというキックバック契約や書店へのペナルティとして配本ランクを下げるとか納品総額に限度をもうけるとか、いろいろなことが試みられた。今回のMPDの契約は、ずば抜けてハイリスク・ハイリターンである。この内容にテスト的に対応している書店について記事は書いている。
そして思うのは、データ分析を行う余裕・・・組織的な時間と人材の余裕・・・がないと対応できないだろうということである。そして、そのことは再販制度が崩れていくことだろうと思う。再販制度というのは、全国、どの大きさの書店でも同じ価格で販売しても経営が成り立つことが前提なのだから。書店は売上ランクで在庫をそろえ、棚にない本は正味がアップしても取次店の特別ルートで注文する、あるいはお客さんが通販を利用するという状態はさらに進むのだろう。もしこうした契約がひろがると、在庫回転率は下がっても坪数を増やし、お客さんを集めてきた大型書店はどうなるだろうか。多分、別の内容で契約がなされるかもしれない。それは、取次店との提携という形かもしれない。いづれにしろ、取次店から書店へのいろいろな提案が続くように思う。書店側から取次店への提案があってもよいように思う。(2014.10.26)」
今回は、出版社の側から、サンクチュアリ出版を取り上げている。返品率を25%医科に下げると最大25%の報奨金を書店に還元するというのが、「日販High Profit企画」である。その内容は、報奨金で、時限再販商品の延長販売時に値引きをすることを書店ができるというものである。
報奨金は一部50円から、本体価格の15%。それは年間の売上利益率が2%から5%のサンクチュアリ出版にとっても厳しい支出である。記事には、著者にも、販売部数拡大の場合、印税率を7~5%に引き下げる契約をすること、出版倉庫会社への在庫保管料・返品改装費を下げることで、費用を捻出したとある。
また、MPDと売上インセンティブ・返品ペナルティを組み合わせた契約を行い、「返品率25%台、インセンティブ15%、返品ペナルティ45%」の条件で契約したとある。卸正味0.6、ペナルティ時の返品正味0.55ということである。
そして、2014年3月期、売上8億4600万(前年比31.7%増)、経常利益4135万(前年比289.5%増)という数値を残した。前年は、売上6億4236万、経常利益1061万だったことになる。その売上利益率は、前年が1.65%、今期が4.88%。利益率は三倍になったことになる。その売上を引っ張ったのが、18万部を超えた『食べるなら、どっち?!』、23万部を超えた『覚悟の磨き方』である。
この二年の利益の違いは3074万。売上は2億764万円。この間に行ったコスト削減は、印税の1~3%の削減、印刷等制作原価の3%削減、倉庫費用の0.5%削減。・・・・もしかすると、これらのコスト削減と売上を引っ張った商品があったことが、3000万の利益増をもたらしたのではないか? と気になるところである。
というのは、現在のインセンティブ・ペナルティ契約には、書店の売上高増の確実な支えとなるものが不足しているように思える。すると、経費削減は必要だが、そのことでの利益増をつくりだすビジネスの縮小のスパイラルに入る危険がないだろうかと不安になるのである。
多分、このインセンティブ・ペナルティ契約は広がっていくだろう。現在のところ、他に方法がみあたらないのだから。しかし、出版業界の売上自体をのばす対策を、出版社・取次店・書店で検討しておかないと、本当にマイナスの経営を行うしか方法がなくなってしまうのではないだろうか。
(2014.12.12)