北海道ブックシェアリングの荒井です
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本の街

私(荒井)の本業は出版・編集業である。出版に携わるものが「図書の再活用」を担うのはおかしいのではないか、矛盾している、とも言われる。本が再活用され過ぎると「本を新刊で買う」という意識が薄れ、そんな風潮がはびこると、書店も取次も出版社も編集者も校正者も装丁家も作家もみな困る。刊行間もない本がブックオフの「買い取り・販売」サイクルの中で大量に動き、結果、作家の収入(印税)に大きな影響を与えている、ということは各方面から指摘されている。本が新刊で売れるかどうかは、関わっている人たちにとって死活問題なのだ。
それでも私が「図書再活用」の活動を進めているのには理由がある。それは道内、あるいは国内において「読書習慣」が崩壊しつつあるからだ。日本人の「読書量」は、世界の主要国の中でも韓国と並んで最低クラスである。その中で北海道は「学校図書館の図書整備率」が全国最低で、「学校図書費の予算化の達成率」が下から2番目である。本を読む習慣と本を整備する環境の両軸とも機能不全に陥りつつある。「そんなはずはない。専門書の雄・ジュンク堂が札幌に進出し、JR札幌駅の旭屋書店の後に入った三省堂書店だってすごい品揃えだ。図書館はいつもにぎわっているし、本が読まれていない、などということはありえない」という向きもあろう。「日本人ぐらい本を読む民族はほかにないんじゃないの」と考えているひとも少なくないはずだ。
しかし、ちょっと周りの知人友人に聞いてほしい。「先月、何冊読んだ?」。多くの人に聞けば聞くほど、実感するはずだ。「実は我々はあまり本を読まんでいない」と。
統計によると、たくさん本を読む人は、その習慣をほとんど変えないが、「ちょっと読む派」は、どんどん「ほとんど読まない派」に移行しつつあるという。
これに歯止めをかけようというのが「ブックシェアリング活動」の原点だ。施設の図書コーナーを整備すれば、読書の機会が増え、やがて何人かが読書を習慣にするだろう。本の読み手は本の買い手である。活動を通じて「新刊」を買い求める素地づくり、ひいては道内の出版と図書流通全般の活況をもくろんでいるのだ。
ということを大手書店の支配人と書店組合の理事長に話したら、すぐに理解を示してくれた。例えば、当会の活動で年に8000冊、施設数にして80カ所の図書コーナーの「テコ入れ(図書の充実)」をする。これを10年続ければ800施設の図書コーナーが元気になる。それによって各施設で少なくてもひとり、つまり800人に読書習慣がついたとする。本好きなら月に1万円ぐらいは本を買う。800人×1万円×12カ月で年に1億万円弱の新刊が売れるようになる・・・・・かどうかは分からないが(笑)。当会の活動は児童図書が中心だから、私が出版の現場を退いたころに効果が出てくるかもしれない。まあ、それでもいいのである。草葉の陰からのんびりと、札幌が「本の都」になる様子を見守るとしよう。