『熟柿』佐藤正午(角川書店)
発売日 2025/3/27
ISBN 978-4-04-114659-0
読了 2025/10/17
★どんな人におすすめしたいか?
小説が好きなすべての人へ
読書で心を動かされる体験をしたい人へ
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よかった!おもしろかった!!!
(あらすじ)
激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子・拓を出産する。
出所後息子に会いたいがあまり園児連れ去り事件を起こした彼女は、息子との接見を禁じられ、
追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。
自らの罪を隠して生きる彼女にやがて、過去にまつわるある秘密が明かされる。
(角川書店HPより)
上記のあらすじはタイトルの副題程度にすぎない、
大きな大きな河の流れのなかに浮かばされ、そしてあらゆる場面で心をゆさぶられる作品。
序盤から中盤では、主人公に対してもどかしく、怒りさえ覚えていたのが、最後にはどうにか彼女が立っている場所が良き道であってほしいと願うばかりだった。
ラストは悪いほうに考えようと思えばそうとも考えらえる。
そう思ってしまうとソワソワが止まらなかった。
しかし、主人公の思考と行動の軌跡を振り返ると、「今のあなたなら大丈夫」と言える気がした。
そうであってほしい。
本人は「母として何もできない」というけれど、
息子にあてる心の手紙は、どの母よりも母としてまっとうで真っ直ぐな想いがつづられている。
他人に翻弄され、自分中心で短絡的で思考の浅い(と見受けられた)主人公像からはとても遠い。
会えない分、そして不遇な境遇が、そのような想いが湧き上がらせるのだろうか?
この想いを息子が知ったら、どんなお母さんであっても愛を感じ、産んでくれたことをありがとうと思うだろう。
佐藤正午さんの書きっぷりについて。
佐藤正午さんの作品は2019年に読んだ『月の満ち欠け』以来の6年ぶりの再会だった。
『月の満ち欠け』と読み進める感覚が似ていた。
そちらも思い返してみると…
・一つの事象に対してすぐに結論をつけずに、次に進む
・でも丁寧に時間を追う、けど余計なことは書かない
このあたりがページをめくる手を止めさせない特徴だろうか。
伏線とその回収といえばそうなのだろうけど、
「伏線」という言葉一つで表すのはもったいないような気がする。
この点については他の作品も読みながらたしかめていきたいと思います。
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とにかく、出会えたことにありがとう、の作品でした。
そして、車の運転には十分注意しようと思わされましたw
それではまた。