スバラ式世界・原田宗典 の解説 | まさひこのの書評と解説のページ

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僕が読んだ本についての、書評と解説を書いてみました。

 

原田宗典という人のエッセイ本は、いつもとにかく面白い!初っぱな1ページ目からぶっぱなす!「目が悪くて悪いかッ!」という初っぱなのエッセイ☟

 

ある冬の深夜、厳寒の夜には、猫のぬくもりだって、夜道の肉マンや失恋時のウイスキーのように、ありがたい存在。愛猫を抱き抱えて、思いきりコビた口調で呼びかけて、寝床に持ち込もうとしたとき、やっと気づく。それは、スリッパだった。という最強エピソードで、開幕である。

 

小学校四年生のムネノリ少年は、視力検査であわれな(?)競争心を発揮する。検査前に測定表を必死で覚えたり目のいい友人に尋ねたりして必死に点数を稼ぐ。なぜなら、眼鏡は絶対にかけたくないのであった。当時の彼の中では「眼鏡=カッチョ悪い」だったから。

 

この無邪気な感情、わかるゾ。僕も小学生の頃、まったく同じことを思っていたから。ま、ズルはしなかったけど。

 

その無邪気な抵抗がたたって、やがて中三の頃には、彼は超ド級の近眼になる。医者からコンタクトレンズをすすめられるのだが、それは恐るべき・・・。

 

彼は、医者運が悪いというかなんというか・・・。医者ネタには困らない☟

 

「恐怖の人間ドック」というエッセイでは、三十になり、生まれてはじめて人間ドックを受け、さまざまな検査を受ける。やがておとずれる恐怖の肛門検査。たかが検査(失礼!)なのに、ムネノリ氏はいちいち感受性が煥発である。

 

胆石の検査で、脇腹に透視カメラを押しつけられてこっちはくすぐったいのに医者は福沢諭吉みたいな顔だとか、肛門検査で、肛門に○○を挿入されたとき、過去に恋心を抱いた何人もの女性の顔が走馬燈のように脳裏を巡るだとか。最後にお父さんまで登場とか、超絶面白い・・・。

 

恐怖の医者ネタは、まだまだ続く☟

 

脇の下のオデキの治療で悶絶し、歯医者のあとの喫茶店でズボンを濡らし、整骨院ではサンドイッチの刑・・・。そして、世にも恐ろしい知り合い達の最恐医者体験。各結末に提示される教訓は、痛快にして的確、けだし名言である。

 

病院の体験ネタだけではなく、他にも、ヒット曲のタイトルもじりのエッセイとかも、面白い☟

 

「なんてったってタイのライダー」☞タイのリゾート・ツアーに参加したムネノリ氏が、現地の道路走行中に目撃した、ムチャクチャな走行バイクのタイの人たち。この話を読んで、僕は、いまの日本の道路法も、道路自体も車自体も、きれーさっぱり整備されすぎていて、逆にそれだと、退屈でつまんねーよなあー、なんて思った。

 

「セーラー服を脱がさせないで」☞このエッセイで、ムネノリ氏は、現在のオ○ニー事情に呆れ、憂える。現在の日本の、サービス過剰すぎる、エロ写真、エロ映像の氾濫は、想像力欠如の、努力知らずの青年たちを、大量に生むだろう・・・。この話を読んで、僕は強くうなずいたのだった。これはなにもエロ限定の話でもなさそーだ。現代社会のサービス過剰、便利さ過剰が生む弊害の問題・・・。

 

☆ スバラ式世界・原田宗典・主婦の友社・1990年4月発行。集英社文庫・1992年9月発行。