月刊EX大衆での連載をまとめた本。
インテリジェンスの一部であるスパイ活動は、007などの映画や小説だけの話ではなく、実際にあったし、現在もひそかに行われている。
以前、「美人すぎるスパイ」としてロシアのアンナ・チャップマンが話題になったが、表に現れるのはスパイ活動が失敗した場合に限られる。彼女がアメリカからロシアに強制送還された時、他にも数名が同時に強制送還となったが、彼女の名前が大きく出たのは他の大物スパイの存在を覆い隠すためだろう。
スパイとして有能な者は、他の一芸に秀でたものが多いといわれる。大学教授や新聞記者としての身分を隠れ蓑にして諜報活動を行うのが通常だからだ。かつて日露戦争時、満州で活躍した石光真清は写真館を営んでいた。ちなみに、石光の妹の孫が元首相の橋本龍太郎である。
本書は、戦前のゾルゲ事件から北朝鮮による韓国の延坪島への砲撃事件、尖閣諸島の中国漁船衝突事件などについて解説しているほか、日本の直面する課題についてもふれている。
本書にも登場するラヂオプレスは北朝鮮の金正日総書記死亡のニュースをいち早くつかんだことが報道されている。このラヂオプレスは公開情報をもとに調査する(オシント)機関で外務省の関連団体である。こうした地道な活動が国家の保全に役立っている。
日本の情報機関は内閣情報調査室や公安調査庁、警察庁などに分散されている。また、民間の商社やマスコミの情報も無視できない。これらを統括する機関の創設が安倍内閣当時叫ばれていたが、最近この話は聞かれない。いくら箱を作っても、結局はまとめる人間がしっかりしていないことにはどうにもならない。
インテリジェンス能力は、国家の危機管理だけでなく、ビジネス上も極めて必要な能力である。本書を読めば、ビジネスパーソンにとっても有用だと思い、紹介した次第である。
世界インテリジェンス事件史